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値引きのない世界

兵庫県にある東海バネ工業は知る人ぞ知る優良企業である。売上高営業利益率は10%前後と業界平均の2倍近い。なぜそんなに儲かるのか?

理由は単純である。競合他社が作れない、作りたがらない製品を作っているからである。原子力発電所や人工衛星で使われる特殊なバネをつくり、1個から受注する「多品種微量生産」が同社の特徴だ。戦略論でいう「差別化集中戦略」にあたる。渡辺社長は次のように語っている。

「価格交渉ではこちらの言い値が通りやすく、値引きすることは一切ない

同社も以前は汎用品を作っていたが価格競争に直面したため、70年代半ばから量から質の経営へと転換したという。この戦略を支えるのは情報システム人材育成である。

まず、70年代後半から、一度でも受注のあった顧客の注文内容はデータベース化している。だから「10年前のバネを1個作ってくれ」と言われても対応できる。

特殊なバネを作る熟練の技を維持するために、3段階の社内技能検定制度を設け、技術伝承に取り組んだ結果として、生産部門で働く従業員の平均年齢は30代の前半だという。

「値引きのない世界」を作り上げるために同社は、他社が入ってこないポジションを確立し、情報システムと人材育成システムによって能力アップしてきた。中小企業のお手本となる経営である。

出所:日経産業新聞2009.11.25
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