MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

贅沢品としての医療通訳

2015-05-29 12:36:23 | 通訳者のつぶやき
医療通訳の制度化の活動をしながら、
批判があることはわかっていても、
こころのどこかで、医療通訳はまだ贅沢品だなと思う時があります。

医療へのアクセスという意味では、
外国人の場合、まだいくつものバリアが存在します。

先週の病院との通訳。
「緊急に入院してください」と病院が言っても本人と家族が納得しません。
理由は「お金が払えない」
命がかかっていて、すぐに今日入院しなさいと言われているのに、
なぜお金のことを言うの?踏み倒してもいいじゃないか?
それが言えるのは、踏み倒す可能性のない人たちです。
本当に払えない人は、入院せずにすむ方法はないかと考えます。

収入は目に見えます。
それ以外に外国人には「仕送り」という見えにくい支出があります。
たとえ一定額の収入があったとしても
可処分所得は人によって違います。
本国にいる子供や家族に仕送りをしている人にとって、
自分で使えるお金は常にぎりぎりであり、貯金などできる状況ではありません。
日本人にも同じ人たちはいます。
でも、「見えない、理解してもらいにくい」という意味では
外国人の患者さんはより困難を抱えています。

非正規滞在であれば、
重篤な病気であったとしても、保険の適応ができません。
「自業自得」という言葉が聞こえてきますが、
病気になった本人を前に誰がその言葉を口にできますか?

まずは病院へ、まずは治療を。
そんな当たり前のことの前に
越えなければいけないハードルが多いと感じます。
医療通訳者は診察室の前で待っていてもダメです。
病院へのアクセスを助けることを念頭にいれなければ、
私たちの仕事は始まりません。
そのことを忘れないでいたいと思っています。

6月12日―13日北九州で開催される移住連のフォーラムの医療分科会では、
医療通訳問題を中心に扱いますが、
それでも、非正規滞在者の医療問題や保険の問題など、
医療通訳以前の問題も忘れてはならないと肝に銘じています。



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