MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

見えないものの通訳

2007-06-27 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今朝は朝から立て続けに病院からの電話がはいりました。
どちらも症状を説明して、医師と看護婦からの説明を患者(もしくは親)に通訳し、支払いについての通訳をして、次回予約を取り、調剤薬局で薬についての説明をしました。
別に特別難しい通訳ではありませんでした。ただ、少し面白いなと思ったことがあります。
以下は調剤薬局での通訳です。

薬「えっと、薬は粉2種類ですね」
通訳(通)「薬は粉のものが2種類です」
薬「こちらが、抗生物質で・・・・」
通訳「すみません、どっちですか?」
薬「あ、えっと」
通訳「色はついてますか?」
薬「ああ、オレンジ色です」
通訳(通)「オレンジ色の粉薬が抗生物質です」
薬「1日3回1包食後に飲んでください」
通訳(通)「1日3回、朝食、昼食、夕食の後にのんでください」
薬「それから、もうひとつは痛み止めなので、1メモリだけ飲んでください。」
通訳「1メモリ?粉薬ではなかったのですか?
薬「ああ、粉ではなかったですね。すみません。シロップでした。」
通訳「メモリはどこについてますか?」
薬「ビンの横についてます」
通訳(通)「もうひとつの薬は粉ではなく液体シロップです。痛み止めです。1回の分量はビンの横についているメモリの1メモリ分です」

なんともまどろっこしい通訳でしょう?もし、これが同行していたり、テレビ電話で薬が見えていれば、聞き返すことなく通訳しているのですが、電話の場合は見えないので、通訳対象を言葉にしてもらわなければ通訳できないことがあります。
たとえばこういう場合は通訳の使い方を少しトレーニングするだけで、聞き返しはぐんと少なくなります。以前から、医療従事者にユーザートレーニングをして欲しいというのはこういうことなのです。ただ、見えているものを言葉にするのはなかなか難しいですね。
逆に先日ある区役所の国民健康保険係の方との通訳をしたとき、その方の日本語がとてもわかりやすく通訳しやすいように分解されていて感心しました。最後に「あなたの日本語はとても通訳しやすい良い日本語です」というとキョトンとされました(笑)。
訓練はもちろん大切ですが、それだけではなく、相手にわかってもらいたいという気持ちの部分がとても大きいのではないかとおもいます。
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子供の誕生

2007-06-20 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
子供の誕生は、医療通訳をやっていて一番うれしいことのひとつです。スペイン語圏移住者は、90年代以降の出稼ぎで比較的若い世代が多く、あきらかに出産ラッシュの時期がありました(笑)。少子化で悩む日本ではないようなほほえましい光景です。ただ残念なことに、日本で子育てを始めると予想以上にお金がかかること、すぐに仕事に復帰できないこと、手伝ってくれる家族が身近にいないこと、保育所がなかなかあたらないことなど、とても大変で、なかなか3人目、4人目というのは難しいようですね。
通常、出産現場ではあまり通訳者が呼ばれることはありません。健康保険の適応になっていないように、通常出産は病気とは扱われていません。異常のない妊娠・出産であれば、入院や出産準備などの冊子の翻訳、出生登録の手続きなどのお手伝いが主で、家族や友達でない通訳者が診察室に入ることは余りありません。
AMDA国際医療情報センターが発行している「8ヶ国語母子保健テキスト 妊娠から育児まで安心して日本で出産するために」のテキストとビデオはとても参考になります。日本での出産に不安のある方には、お勧めしています。
しかし、例外もあります。そのひとつが、子供が障がいをもって生まれてきたケースです。出産後、担当医、両親、家族、時にはメンタルケアをする精神科医やソーシャルワーカーも同席する中で、通訳をいれて説明がなされます。出産という大きな仕事を終えたばかりのお母さんには大変な説明です。できるだけ冷静に正確に、通訳自身が動揺することなく、きちんと通訳しなければなりません。通訳者が入ることで、両親が医師に質問して納得できるまで説明を受けることが大切です。心にわだかまりが残らないように、できるだけ寄り添えるようにつとめます。ご両親は、自分の痛みや病気以上に、子供の病気には心を痛めます。時には心配しすぎ・・と感じることもありますが、勝手な判断をせず、きちんとした通訳を通してこうした不安を取り除くのも大切な仕事だと思っています。

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これからも

2007-06-13 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳の活動も5年目にはいり、全体的に啓発からネットワークに向けた動きになりつつあると感じています。この5年の間に、MICかながわや多文化きょうとを中心に医療通訳に関する全国会議が開催されました。移住連の全国大会でも北海道のエスニコを中心に医療通訳に関する分科会がはじめてできました。日本渡航医学会でも、移住者の医療について言葉の面から考えようといった動きが出てきています。集住地区や首都圏の病院では、医療通訳を配置したビジネスモデルや電話・テレビ電話を使った取り組みもおこなわれています。
MEDINTは、事務所ももたず、それぞれが仕事を持っているために大きな活動は出来ませんが、これからも講座を重ね、医療通訳者の視点からの研究活動を行い、制度化に向けての理解者を増やしていく活動を続けていこうと思います。
ただ、本音を言えば時々「しんどいなあ」と思うこともあるのです。私の目標は、医療通訳が「当たり前」の状態を作ることです。そしてそれは、一通訳者である私達がストレスなく医療通訳をやれる環境を作るということでもあるのです。「普通の通訳をやりたい~」という単純な目標に向かって動くことは、実は忍耐と自己嫌悪の連続です。早くバトンを渡したいということばかり考えています。
その中で、エネルギーを与えてくれるのが、活動の中で出会う医療通訳者の方々です。報われることの少ない仕事を一生懸命こなして、ストレスと戦いながらも、医療通訳にやりがいを見出している姿を見るにつけ、自分もがんばらなければと思います。昨年、一昨年と全国の医療通訳者にインタビューをさせていただきました。この成果は、できるだけ早いうちに皆さんに見ていただけるようにまとめたいと思っています。またこれからも医療通訳者からの声を伝えていく研究活動を継続していきたいと思っています。
なんだかくじけそうになった時は、遠慮なく叱咤激励していただければ幸甚です。

PS:先週末は広島球場にいきました。外野スタンドから原爆ドームが見える球場です。50年を迎えるこの歴史ある天然芝の球場も2009年からは新球場に移転になります。今の球場でゲームを楽しめるのはあと少しなので、皆さんも是非広島に行ったら野球観戦してください(^◇^)ノ
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医療通訳と報酬

2007-06-06 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳の制度化について医療従事者の方々と議論するときに、一番温度差を感じるのが通訳者の報酬についての考え方です。
医療通訳をボランティアに任せる、無償ではいけないというのは皆さんすでに感じていらっしゃるようで、さすがにそういう言い方をされる方はいらっしゃいませんが、では医療通訳者にふさわしい報酬はという議論になると、様々な反応があります。
まず「交通費程度」といわれると、それは報酬ではなく経費であって、実際に電車に乗ったり、電話を使ったりすれば消えてしまうもので、通訳者本人には残りません。
「時給○○○円」も、特別な資格や訓練の必要のない職種と同列であれば、あまり責任のない気楽な仕事のほうがいいなあと思ってしまいます。
医療通訳を続けるには、日々勉強とスキルアップが必要です。自分で本を買って勉強をし、様々な団体が主催する研修会に参加します。ストレスがたまった時にはカウンセリングにも行きます。こうしたお金がでないことには、単発のお手伝いはできても、長期にわたって医療通訳を続けていくことが出来ません。
私も含めて、外国人支援をしている業界で働いている人間は驚くほど低賃金です。たぶん普通の人が聞いたらびっくりすると思います。でも、この仕事にやりがいと誇りを持っているから続けています。ただそれを「いいことをやっているのだから、ボランティアなのだからいいじゃないですか」と他人から言われると、正直腹が立ちます。
契約意識の薄い日本では、報酬やお金の話をするのは汚いと思われます。実際、良いことをしてお金をもらうのは不遜ではないかという考え方もあるでしょう。私自身も、まあいいかと思うことがよくあります。ただ、誰かがこの議論をしていかないことには、医療通訳は制度化されても、通訳報酬についての議論は取り残されてしまいます。
2世、3世の子供たちが医療通訳者になりたいと思える職業に育てていくのが、今の私達の務めだと思います

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