MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

三方よし

2005-01-26 12:12:27 | 通訳者のつぶやき
1月15日滋賀国際医療研究会第10回記念大会が滋賀県大津市で開催されました。滋賀国際医療研究会は一昨年当研究会で滋賀県の外国人医療についてご講演いただいた公立甲賀病院の井田先生が主宰されている研究会です。

通常こうした学会、特に医学系の学会は私たちのような一般には開放されていないものなのですが、この学会は先生のお人柄を反映して、「医療」「国際」というキーワードの興味のある人なら誰でも参加でき、いろんな専門やバックグラウンドを持つ方々が参加されています。様々な人との出会いが楽しくて、毎年暑い時期と寒い時期の開催にもかかわらず、毎回参加させてもらっています。研究会は2つの特別公演を含め、約6時間の長丁場でしたが、その時間の長さをかんじさせないくらい、様々なテーマの発表が飛び出しました。特に、モンゴル医療の調査の話やアフガニスタンでの医療援助の報告、愛知県の産婦人科での医療通訳の話などは、なかなか聞く機会がないもので興味深かったです。

研究会の内容は滋賀国際医療研究会のHPでみていただくことにして、そのあとの懇親会で面白いお話を聞いたので、ここで少しご紹介したいと思います。ご一緒させていただいたH先生(本職はお医者さん)は、滋賀県の歴史にとても詳しい方です。昔から近江商人には「三方よし」という家訓があるそうです。三方とは、「自分」と「相手」そして「社会」のことで、そのどれかが欠けても(不利益を被っても)いけないといいます。「売り手よし 買い手よし、そして世間よし」というのだそうです。つまり、どんな活動にも自己犠牲の上によいシステムができるはずはないし、相手につらい思いをさせてよい活動ができるはずはありません。そしてそれが最終的に社会にもよい影響を与えられるように常に考えていくこと。昔の近江商人の考え方が、現代の私たちNGOの活動にもつながると感じました。「医療通訳」は「医師や医療従事者」と「通訳」と「患者」がいて「すべてよし」になるように考えていかなければなりません。その上で、暮らしやすい住みよい社会、上質な社会になるようにシステム作りを考えていく必要がありますね。
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新年のご挨拶

2005-01-01 12:10:22 | 通訳者のつぶやき
新しい年を迎えました。昨年は、台風、地震、津波と災害が続き、ご自身やご家族、お知り合いで被害に遭われた方もいらっしゃったのではないかと思います。通常なら新年には「おめでとう」という言葉を使うのですが、今年はあえてご挨拶とさせていただきたいと思います。

昨年は、4月のシンポジウムと全10回の「医療通訳者のための医療用語基礎知識講座」を通じて多くのことを学びました。お世話になった先生方、ありがとうございました。

医療に限らず在住外国人を支援するコミュニティ通訳者はボランティアと位置づけられることが多く、とにかく質よりも「いてくれればいい」という考えがあることは未だ否定できません。しかし、私たちは外国人の命や人権にかかわる通訳者として常に良質な通訳者であり続けたいと願ってきました。現状では、まだ安心して医療通訳者として生活できるだけの制度は整っていませんが、既に何らかの形で医療通訳に携わっている以上、制度の整備を待っているだけでは問題は解決しないと考えています。

そのために今年は1年かけて医師、看護師、栄養士といった医療のプロの方々に研修を担当していただき、基本的な医療に関する基礎知識を学ぶ研修会を中心に行ってきました。今の段階では、研究会の進むべき方向は大きく間違っていないと思っています。今後も慎重に模索を重ねながら、当初の目標である「医療通訳者の質的向上」「医療従事者のユーザートレーニング」「医療通訳の社会的認知」を三本柱に活動を進めていこうと考えています。研究会では派遣事業は行いません。現在既に様々なノウハウを持って医療通訳の派遣事業、病院常設活動されている多文化きょうとやMICかながわのような団体に学び、こうした団体の活動とリンクする形での通訳者養成に力を入れて行きたいと考えています。今後ともご協力よろしくお願いいたします。
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