MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

お大事に

2011-03-28 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳をする中で
大切にしている言葉があります。

それは「お大事に」という言葉です。

何気ない言葉なのですが、
別れ際に発するこの言葉は
時には、患者や家族を癒し、
皆が大切に思っている心を伝えます。

この魔法の言葉を伝えると、
私の気のせいかもしれませんが、
一瞬、患者と家族の表情が優しくなる感じがするのです。

医療通訳は正確な通訳だけでなく、
コミュニケーションの端々で様々な役割をしています。
それは、在日外国人医療もメディカルツーリズムも違いはありません。
医療通訳者は患者当事者でもなければ、
厳密には医療者でもありません。
その中途半端な立場は
時には便利に使われ、
時には阻害されることもありました。

医療通訳者の役割と立ち位置をしっかりと伝えるために、
そして私たち自身が医療通訳者としての自覚を持つために、
医療通訳士協議会(JAMI)では倫理規定を策定しました。

医療通訳士協議会(JAMI)倫理委員会ブログ

いろんな意見はあるとは思いますが、
医療通訳者誰にでも使えるものとして、折りたたんで財布に入れたり、ノートの裏表紙に貼れる程度の
文章量のものにしています。
でもこの言葉ができるまでには委員会メンバーの議論が重ねられています。
発表は7月の医療通訳士協議会総会(長崎)になる予定です。

様々な意見はあるとは思いますが、
この倫理規定をまずは医療通訳者のものとして共有していただければうれしいです。

言葉にできない

2011-03-24 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
3月11日に起きた東日本大震災は、
夢なら覚めてほしいと思うくらい悲しいものでした。

とてつもない規模の災害に
言葉を探したけれど見つからないです。
頑張れとか応援してるとは言えない。
つらいけど生き抜いてくださいとしか言えない。
それから生き残った自分をどうぞ大切にしてくださいと。

外国人の人たちの回復は
他の人たちよりもずっと遅いです。
阪神大震災後、アルコール中毒やうつ病、
不定愁訴、いろんな体からの信号がでてきました。
医療通訳者として、そうした信号をきちんとつなげられるように、
遠くからですが、長い時間見守っていければ思います。


医療通訳者を育てる会

2011-03-07 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
5日(土)第30回日本社会精神医学会に参加してきました。

スペイン語で診療をされている四谷ゆいクリニックの阿部先生と
帝京大学の帳先生が座長をされたシンポジウム8
「多文化社会とマイノリティ-難民移住者の適応とメンタルヘルス」
のシンポジストをやらせてもらいました。

日本における難民の現状、脱北者の現状、難民の精神医療場面など
様々な角度からの議論になりました。

フロアからは、
外国人患者を診たいけど言葉の問題が不安という話や
学会が何ができるかという提案がありました。

まだまだ精神科領域では外国人の問題は少数派であり、
参加人数も少なかったのですが、
シンポジストの一人である大正大学の野田先生が
「10年後にはもっとたくさんの人が外国人の問題に関心を寄せる時代が来るはずだ」
とおっしゃったのが、とても印象に残りました。

そして、外国人医療への関心の低い場所でこそ、
こういうシンポジウムは開催するべきだと強く思います。

先生方から何ができるかと聞かれたので、
「精神科医療の医療通訳者は精神科医が育ててください」と言いました。
医療通訳は研修や経験を経て医療通訳者になります。
その過程で医師のアドバイスや教えがとても重要になります。

MEDINTでも一番苦労しているのは
研修会の講師探しです。

医療通訳に関心を持ってくださり、
医療通訳を育てようという思いで講師を引き受けてくださる先生は
多くはありません。
無料でということではないのですが、
一般的な医師の講演料や報酬から比較すると低いですし、
医療通訳を育てようという思いがなければ引き受けていただけない仕事です。
そこで、「医療通訳者を育てる会」みたいなのが、
医師や医療従事者の方々の中からできたらいいなあと思うことがあります。

今後、医療通訳の制度化に向けて研修プログラムなどを作っていくとき
講師の数が足りなくなります。
そんなときに協力してくださる方々がいらっしゃれば助かります。
ただ、医療知識を持っているだけではなく、
医療通訳の背景や外国人医療への理解のある方でなければならないので、
そう多くはいらっしゃらないと思いますが、
少数精鋭でもそうした先生方との出会いを探していきたいと思います。

まずは、関西で眼科と耳鼻咽喉科の方!ご連絡待ってます。