MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

痛っ!

2010-02-26 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
2月20日のMEDINT医療通訳向け講座のテーマは
「泌尿器科」でした。

前立腺肥大、尿漏れ、性感染症・・・・。
通訳依頼は増えているのに、
一般に情報を得る機会の少ない診療科です。

今日も前立腺がん生検の術前説明を訳していました。

先週、先生の話を聞いたばかりで、
単語帳も作ったばかり。
どんどん単語が出てきます。

10箇所に針をさす部分になって、
「なんで知ってるの(女性なのに)?」と聞かれ、
「先週学んだばかりだから、よくわかるよ」と答えましたが
「痛そう・・・・」というと
「あんたにはわからん(笑)」といわれましたが、
確かにそうですね。はい。

胃の痛みや頭痛、胸痛などは
同じなのでなんとなく理解できますが、
さすがに前立腺の痛みはイメージすらできません。

しかし、医療通訳者たるもの
自分が前立腺を持っていないからといって
前立腺がんや前立腺肥大の通訳ができないと
いえません。

知識を得ることなく
自分の経験だけで仕事をすると、
自分の知らない疾患の通訳はできないのです。

だからMEDINTを作って
私たちの視点からの研修の機会を作りました。

人間には想像力があります。
前立腺の痛みは実際にわからなくても、
通訳はできます。

ただ、想像力の背後には、
たくさんの情報収集と日頃の勉強が不可欠なのです。

群盲、象を撫でる

2010-02-19 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
恩田陸さんの小説「訪問者」の中に
「群盲、象を撫でる」という言葉が出てきます。

はじめて聞いた言葉だったのですが、

何人かの盲人がいて象の身体を撫でている。
一人は象のしっぽに触って
「象というのは蛇のようなものだ」と思う。
別の一人は象の身体に触って、
「象というのは壁のようなものだ」と思う。
それぞれが象の一部に触れて、
象という動物のことをわかったような気持ちになること

だそうです。

医療通訳の活動をはじめて、
「医療通訳」という巨象に対しての
見え方が人によって違うということを実感しました。

医師からの見え方、
看護師からの見え方、
外国人患者からの見え方、
医療通訳者からの見え方、
外国人支援団体からの見え方
一般の人たちからの見え方・・・・・・。

どの人も善良な人だけれど
立場によって「医療通訳」の見え方、考え方が違います。

それぞれの立場でばかり主張していると、
結局は責任の擦り付け合いと攻撃ばかりになって
建設的なアイデアはでてきません。

先日の看護職講座では、
看護職の方々の真摯な態度に圧倒されました。
医療通訳だけが外国人医療を担っているのではなく、
こういう現場の方々の理解が外国人医療を支えていると思います。

いろんな見え方の違う人たちときちんとコミュニケーションをとって、
責任の押し付け合いではなく、
より具体的な成果が出せるように、
医療通訳者の主張を出していくのが
私たちの仕事だと痛感しています。

2010-02-12 10:12:06 | 通訳者のつぶやき
特定疾患の治療方針説明通訳のために
大学病院に同行しました。

患者さんはすでに入院しているので外来ではなく
入院病棟での説明です。
きちんと時間を予約して時間通りに説明が始まりました。
(これは通訳者にとっては一番ありがたいことです)

同行で通訳に入る場合、
医療通訳者もいくつかの配慮をしています。
私の工夫を少しだけお話しますね。

まず服装はあまりカジュアルだと通訳そのものへの信用が下がります(笑)。
かといってスーツで行くと動きにくく、
たとえば患者さんに簡単な補助が必要な時に動けません。
汚れることもあるかもしれません。
ですのでそこそこの服装を心がけています。

靴は音が立たない歩きやすいもの。
精神科や小児科の場合はアクセサリーも最小限にします。

診察室が狭すぎる、
または椅子がなくて立ったままのこともあるので、
かばんはリュックサックを愛用しています。

かばんのなかには医療用辞書や
インターネットでダウンロードした病気に関する資料も入っていますが、
通訳のときに目の前に置くのはA4ノートと電子辞書、
メモと使い慣れたペンです。

普通の外来診察室に机はありません。
家族用の丸椅子に座ることが多いので、
道具が置けるスペースは自分の膝の上のみです。
私の膝は他の人よりは大きめですが(笑)、
それでもA4ノートを広げると丁度くらいの大きさです。

そうやって医師の説明の妨げにならなように、
一応気を使っております。

15年以上医療通訳をやっていますが、
今回初めて机ありのところで通訳しました。
これが快適で快適で・・・とてもうれしかったのです

たぶん処置用の机か医師や看護師がメモをとるための机なのでしょうが、
机があると、ノートを広げた横に辞書を置けて、
メモもノートの上でなく机の上に乗せることができます。
メモを書くときも安定しているので読みやすい字でかけて、
わかりにくい場合は本人に見せながら説明できます。

担当の若い先生も非常にわかりやすい日本語で説明してくださり、
患者と家族が興奮して脱線するのもきちんと待ってくれました。
1時間近くかかりましたが納得のいく説明になったとおもいます。

現在ある状況でベストを尽くすのが
医療通訳者の仕事だと思っていますが、
こうした配慮があると心が温かくなりますね。

看護講座~今年もやります!

2010-02-05 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
昨年度4回シリーズで開催して好評だった看護講座、
今年も少し時期は遅くなりましたが開催します!

外国人医療には医療通訳の努力だけでなく、
医療現場の理解も必要です。
看護職の方々を対象に、
言語とは関係なく外国人患者の接遇について学んでいただき、
理解者のネットワークを広げていきます。

外国人患者を受け入れている病院の方、
在外経験を活かしたい方、
語学力を活かして外国人医療に貢献したい方、
どなたでもご参加いただけます。
また定員に空きがありますので、
お早めにお申し込みくださいね。

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2010年看護職者対象講座【医療通訳研究会(MEDINT)主催】
『在日外国人患者の看護を理解するために』開催のお知らせ!

現在、在日外国人患者の病院来院で、「どう接したらいいのかな?」と、
相手の言葉や文化の違いに戸惑ったり、不安に思ったりすることはないですか?
外国語ができるできないは関係有りません。
今回の講座は、違う国の文化と言葉を持つ人達の理解を深め、
実際の病院の中で、「看護師としてできること」を、
一緒に考えて作り出していく講座です。
連続で講座に参加されることをお勧めします。

開催日 : 2月13日(土)、2月27日(土)
会 場 : 山西福祉記念会館(大阪YWCA)大阪市北区神山町11-12
          http://osaka.ywca.or.jp/access/img/map_umeda.gif
●プログラム
2月13日(土)
[講座1] 10:00~12:00 「外国人患者さんを笑顔で受け入れよう」
     講師:高嶋 愛里さん(多文化共生センターきょうと)
[講座2-1] 13:30~14:30 「医療通訳の現状について」
     講師:実践医療通訳者
[講座2-2] 14:30~16:30 「在留外国人の福祉と医療制度」
     講師:村松 紀子さん(医療通訳研究会MEDINT代表)
2月27日(土)
[講座3] 13:00~16:30 「外国人患者さんに接してみよう~ロールプレイング~」
     司会進行:新垣 智子さん(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院)
      

●会費 : 1講座1,000円(MEDINT会員無料)

●定員 : 30名
●申込方法 : メールkangokouza@gmail.com又はFAX078-230-3080
●連絡先 : 医療通訳研究会(MEDINT)http://medint.jp/