MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

依頼の多い診療科

2004-09-12 15:24:14 | 通訳者のつぶやき
先日、「多文化共生センターきょうと」と「京都市」が共同で行っている医療通訳プロジェクトを見学しました。優秀な通訳コーディネーターの方がいらっしゃるので、通訳一人が病院側と悪戦苦闘するのではなく、通訳と病院側との調整がきちんとなされていました。また、病院側担当者を巻き込んで、通訳の意見を聞きながら常にシステムを改良している状況を見て、とても感心しました。興味のある方は一度、「多文化共生センターきょうと」の研修会に参加してみて下さいね。

見学した病院では中国帰国者の高齢者を中心に中国語の医療通訳者が活躍していました。そこで、必要とする診療科は言語(国籍・コミュニティ)によって、かなり違うのだということを痛感しました。

私が通訳しているスペイン語・ポルトガル語を話す中南米の人たちには、日系人で就労目的の比較的若い人が多いのです。ですので、産婦人科や小児科、皮膚科、外科(交通事故・労災)などの医療通訳依頼が大半をしめるのですが、中国帰国者の場合は、高齢化が進み、慢性疾患(内科・循環器)や眼科などが多いと聞きました。

外科や産婦人科は、ある時期が来ると完治したり、退院するため比較的通訳回数も短くて診療が終了する場合が多いのですが、高齢者の慢性疾患の場合、高血圧や心臓病、糖尿病など一生薬を飲みながらつきあわなければいけない病気が多く大変です。

前者の場合は、通訳が病院に常駐するよりも、必要に応じて通訳が病院に派遣される形が効率的かと思います。反対に後者の場合は、できれば顔見知りの通訳が病院に常駐していて、同じ曜日に行けば、同じ医師、同じ通訳に会えるというシステムが安心だと思います。このように医療通訳のシステム化には明確な答えがありません。なぜならば、相手は人間だからです。お年寄りや留学生、子供や労働者、様々なニーズに応えられる形での医療通訳のシステム化が望まれます。

とはいいますが、中南米コミュニティの人たちも確実に高齢化します。近い将来、慢性疾患や眼科の依頼が増える日が来るかも知れません。その時のために医療通訳は、得意の診療科だけでなく、各診療科に熟知する必要がありますね。
コメント
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