MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

医療通訳士協議会のセッション1

2014-06-30 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今週は朝から晩までスペイン語での相談が立て続けにあり、
自宅に帰るともうクタクタで寝てしまっています。
医療通訳も困難なものが多くて、
遠い国に来てどうしてこんなに辛い思いをしなければいけないのかなあと
神様を恨んでしまうことが少なくありません。

こんな通訳相談員でも
いることで何とかなるならば、
体力と気力の続く限り頑張らねばと思います。

ところで・・・

今週末、大阪大学吹田キャンパスで
第7回医療通訳士協議会(JAMI)総会とシンポジウムが開催されます。
詳細については こちら

2009年2月に設立されたJAMIですが、
その間に、全国的なネットワークとして動き出し、
医療通訳士倫理規定も策定しています。

今回は初めて医療通訳者のみを対象としてセッションを企画しています。
そこで、セッション1では、
医療通訳者の属性の棚卸をしたいと考えています。

日本では「医療」、「言語」、「支援・コミュニティ」の3つのうちの
どれか、もしくは複合的な軸足をもって存在している医療通訳者ですが、
どれが優れていて、こうあらねばならないというものでなく、
それぞれのアピールポイントとウイークポイントがあって、
様々な通訳者を患者・家族が選ばるような形にしなくてはならないのですが、
このままではなんとなく医療通訳のイメージが固定化する気がしてなりません。

医療通訳者は「みんな違ってみんないい」のです。
研修はウイークポイントや足りない部分を補うものであること、
そして、今それぞれの特性というものを認めていきながら考えていく必要があります。

今回は、それぞれの通訳者の特性を大切にするために
あえて自分たちの立ち位置を確認しましょうというワークにします。

これは、今後医療通訳者が発言していく場としてのJAMIを
考えていくスタートラインにするつもりでもあります。

お時間のある医療通訳者の皆さん、
是非ご参加ください。
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ロールプレイ

2014-06-23 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
先週は、兵庫医療大学の薬学部で話をしたり、
RINK(すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク)の
サポーター研修に参加したり、
ワールドカップを見たり、疲れがたまってぎっくり腰になったり、
結構忙しい一週間でした。

その中で、難民事業本部関西支部が主催した「ワークショップ難民」
参加してきました。

不定期ですが、難民のことを知るセミナーとして
今までもワークショップが開催されています。

難民の歴史や今日本ではどうなっているのかなど、
あまり報道されない分野なので、積極的に情報を取りに行かなければ
現状がわからないままになってしまいます。

主催団体の難民事業本部は難民の定住促進をになっている団体で、
ベテランのソーシャルワーカーさんもいて、
難民の方々にはとても頼りになる存在です。
それだけに詳しい現状に触れることができます。
今回は時間の関係で第3回しか参加できなかったのですが、
その中で行われたロールプレイがとても興味深く、
いろんなことを考えさせられました。

あまり詳しいネタばらしはできないのですが、
グループで役割を決めて(自分で選べない)その役を演じるというものです。
簡単に言えば、地域に住む外国人とその外国人の支援をする人ともともと地域に住んでいる人です。
私は「もともと地域に住む人」の役が当たりました。
この人は外国人が大嫌いな人です。
外国人が日本語ができないとか、食べ物が臭うとか攻撃する役なのですが、
驚いたことに、「郷にいれば郷に従え」と言えばなんか正義っぽくて気持ちがよいのです。

逆に外国人役の人は悲しい顔をして自分たちの文化の素晴らしさを一生懸命説明するし、
支援者役の人は両方の意見をまとめようと必死です。

ああ、こういう感情なんだなと理解できました。

日頃、通訳としてこうした場面の通訳をしています。
現実の私は支援者の役に近いのですが、
苦情を言っている人たちはこういう気持ちなのだなとも理解できました。

日本社会の中にはいろんな人が暮らしています。
我慢し合うのではその関係は長続きしません。
お互いの思うところを伝えていかなければ
相手がどう思っているのか理解できないのです。

ファシリテーターの方は
「話し合いの席を持った時点で、問題は解決にむけて動き出している」
とおっしゃいました。
本当にそうだなと思います。
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佐賀県に行ってきました

2014-06-16 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
10日(火)午後から仕事を休んで
佐賀県国際交流協会に行ってきました。

6回シリーズの「医療通訳サポーターの初級者コース」で、
私は初回を受け持つことになったからです。

具体的な内容は、

・医療通訳とは
・医療通訳士倫理規程
・医療通訳の社会的立ち位置

ほかの先生方が具体的な病院の使い方や
ロールプレイをされる予定なので、
最初の導入部分の担当です。

20名近い参加者の皆さんは
仕事を終えたり、家事をすませてからの参加なので
とても疲れている時間だったと思うのですが、
熱心に取り組んでくれました。

九州では宮崎、福岡と3箇所目で、佐賀は2回目ですが、
協会の方からの最初のご挨拶にあったように、
まだ、あまり地方都市で医療通訳の養成をしていない頃から、
佐賀県はMICかながわさんなどと連携して、医療通訳者の育成に着手されてました。
そういう意味では、実数は少なくてもこの分野に関しては先進的な県といえます。

驚いたのは、どの講座も課題・目標がきちんと決められていて、
自主レポートの課題もあり、個人の振り返り目標も決められている点です。
やりっぱなしの講座が少なくない中で
なんとか継続できる人材を確保したいという事務局の方の強い思いが伝わってきました。

実際には、倫理に関してのお話が中心になりました。
医療通訳は擁護・介入などの場面もあり、現実的にはケースバイケースですが、
初級者の場合は、原則を守り、それをはみ出す場合は派遣先に相談というのが
基本的なスタンスだと思います。

枚方市の時もそうでしたが、
倫理の研修は、参加者だけでなく、
派遣先の担当者がどう考えるのかがとても重要になるため、
担当者の方にも入っていただき、一緒に考えてもらいます。

研修中は担当者が席を外すことがあるのですが、
できるだけ、担当者にはずっと同席してもらって、
参加者と同じ空気で研修を受けてもらうのが理想です。
そう言う意味では今回は、協会の方のバックアップがあり、やりやすい研修でした。

以前にも書きましたが、
医療通訳が必要なのはたくさん住んでいる集住地区だけではありません。
逆に周りに支援者がいなくて困っている地方に住む人たちはたくさんいます。
たとえ一人しか住んでいない地域でも、医療通訳は必要です。
地域は地域にあったスタイルで、みんなでその地域の通訳者を育てて欲しいと思います。







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罪深い言葉

2014-06-09 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療者や先生といった対人支援に関わる人たちの何気ない一言は、
患者や家族、親に大きく影響します。

相談窓口では、
医師や看護師、教師といった専門職の言葉が
ずっと心から離れずに苦しんでいるケースを聞くことがあります。

文化の違いと片付けられるくらい簡単なことではないのですが、
日本では「ごめんなさい」「すみません」をあまりに簡単に使うなあと感じます。
謝罪の言葉を通訳する時はかなり神経を使います。

生後まもなく脳内出血を起こしたこどものお母さん。
何年経ってもあの時看護師が「ごめんね」と言った日本語を忘れていません。
「ごめんね」は悪いことをした時に言う言葉。
だから、きっとこの看護師か病院が何か悪いことをしたに違いない。
こどもの事故に過失があったに違いない。
事故はこの人のせいでおこったのではないか。
そうずっと苦しんでいます。
彼女にとって医療過誤の訴えの証拠が「ごめんなさい」という言葉です。

学校で子供同士が喧嘩して、
親が呼び出されました。
その場所で先生が、「○○ちゃん、○○○○ごめんね」と言いました。
途中の言葉はわからない日本語です。
「ごめんね」という謝罪の言葉だけが理解できました。
最初は子供同士の喧嘩だと思っていた親も、
先生が誤ったことで、先生の管理が足りなかったと認識して、
訴えたいと考えています。

日本語の文脈の中で、わりと簡単に使われる謝罪の言葉。
言葉の中には、「ちょっとごめんね」から
「大変申し訳ないことをしてしまった」や「死んでお詫びがしたい」まで、
様々なグラデーションがあって、日本語ネイティブならその「重さ」も理解できると思います。

看護師の友人に聞くと
たとえば注射をしたら
「痛い思いをしたね。ごめんね。」という意味で、よく使うといいます。

専門職の人が日本語ができないと思っている外国人も
まったく聞こえていないわけではありません。
知っている言葉が混じっていればそれが耳に残るし、
話せなくても聞いてある程度理解できる方も少なくないのです。

通訳を使わないで日本語を発語する場合も、
相手がその言葉を聴いているということを忘れないでください。

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「チーム医療」プロシーディングできました!

2014-06-02 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
お待たせしました。

やっと昨年12月に開催した医療通訳研究会(MEDINT)シンポジウム2013
「チーム医療の中の通訳者~私たちはこんな医療通訳者と働きたい」の
プロシーディングが完成しました。

テープ起こしがあがってきたのが2月にもかかわらず、
今回はチェックにすごく時間がかかってしまいました。

申し訳ありません。

昨年12月には、たくさんの方にご参加いただきましたが、
もう一度読み返してみると、新しい発見がたくさんあると思います。
是非、手にとってみてくださいね。

内容についてはここでは転載できないので、
私の書いたあとがきの一部を掲載させてもらいます。

おわりに
最初、支援者として同行していた医療通訳者は、
多かれ少なかれ医療機関に複雑な思いを抱いていました。
もっと患者に優しくしてほしい。もっとわかりやすくしてほしい。
医療文化の違いを配慮してほしい。
また、外国人だからと露骨に嫌な顔をされたり、
本人の目の前で差別的な発言をされたり、保証人にならざるをえなかったり・・・。
時には、医療機関のために医療通訳をやってきたのではないと思ったこともありました。
でもそんな中で、言葉が通じないから診察ができない、
治療方針を理解してもらえないから治してあげられないと心を痛めてくれる医療従事者の人たちと
たくさん出会えたことが救いでもありました。そうした皆さんとの出会いが、
医療通訳を制度化して、どんな外国人でも安心して母語で
医療を受けることができる日本社会を目指したいという共通の思いになっていきました。
今回のシンポジストにはあえて医療機関の方々ばかりを選ばせていただきました。
どなたもとても心のあたたかい先生方です。
私たち医療通訳者は、みなさんのチームの一員として認めてもらうために、
どんなことに気を付ければいいでしょうか。どんな通訳者を必要としていますか?
もっと聞かせてください。苦情も受け付けます。私たちはどんな素養を身につけて、
どんな研修を受けて、どんな通訳者になればいいでしょう。
みなさんにとって使いやすい医療通訳者って?
一緒に働きたいと思ってもらえる通訳者はどんな通訳者でしょうか。
いままで先生方は、もしかしたら医療通訳に遠慮されているところもあるのかなと不安にも思ってきました。
今回のシンポジウムをひとつの出発点にして、これからも議論していきましょう。
よろしくお願いします。


2014年初夏

医療通訳研究会(MEDINT)代表
村松 紀子
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