MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

日本人通訳のメリット

2009-03-25 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳の話をしていて、
「ネイティブ通訳」と「日本人(日本語を母語とする)通訳」どちらがいい?
と聞かれます。
日本人通訳としては胸を張って日本人通訳といいたいところですが、
やはりネイティブ通訳のほうがいいだろうなと思います。

たとえば皆さんが言葉の通じない国で病気になったら、
とても心細いでしょう。
そんなときに同じ日本人の通訳者が来てくれれば、
言葉にしなくてもわかってもらえる安心感がありますよね。
自分の味方が来てくれた・・・みたいな。
それはネイティブの通訳者には勝てないところです。

また、日本で英語通訳者を探すのは難しくありませんが
NHK語学講座で扱っている言語以外の言語、
たとえばタガログ語やタイ語、ベトナム語を流暢に話す日本人通訳者は
本当に少数だと思います。
(協力隊の2年では通訳するほどの言葉の習得は非常に難しいです)
だからこうした言葉もネイティブで日本語の上手な人に任せざるをえない。

じゃあ、医療通訳は全部ネイティブ通訳者に任せればいいという声もあるかもしれません。
でも、少し待ってください。
実は日本人通訳者を使うメリットはいくつかあるのです。
そしてそれは患者自身が知っていて意識的に使い分けているのです。

メリット1:コミュニティとの接触が少ない。
守秘義務が保てる。悪く言えば、後腐れがない。
つらい闘病の体験を思い出したくない人もいます。
日本人通訳者ならその後連絡を取らなくても、患者の生活に支障はありません。

メリット2:漢字の読み書き。会話は自分でできる人でも、文章を読んだり書いたりは難しい人がいます。
その部分を手伝って欲しい場合は、やはり漢字の読み書きのできる人ということになります。
まあ、日本人だからといって漢字が得意かどうかはわかりませんが。
だから日本人通訳者は日本語をもっと勉強すべきと思うこともあります。

メリット3:病院・行政などの相手方との交渉。
日本人の方が交渉のつぼがわかっているケースがあります。
この場合は病院の顔を立てるとか、この場合はしっかり権利主張するとか。
日本側の空気を読むことはできます。

私は同質の医療通訳がたくさんいても面白くないと思うのです。
得意・不得意も含めて様々な経歴やキャラクターの人が
たくさん参加してくれれば、
それだけ患者の選択肢も多くなります。
排除ではなくて共存しながら、
医療通訳者を増やしていきたいなと思う今日この頃です。

PS:WBC2連覇!どちらが勝ってもおかしくないすばらしい試合でした。
最後に投げた韓国のイム・チャンヨン投手は大切なヤクルトのクローザー。今年も名勝負を期待しています
コメント

エイズ予防財団の通訳研修

2009-03-18 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
3月14日と15日に大阪で開催された
エイズ予防財団の通訳研修に参加してきました。
NGO指導者研修と一緒だったのですが、
2日間朝から夕方までの密度の濃い研修でした。
日頃勉強しないので、月曜日は寝込んでしまったのは余談ですが・・(笑)。
医学的な所見を聞きながら通訳ノートを作り、
ソーシャルワーカーさんのお話では
高額医療費や身体障害者手帳など身近な制度の活用を学び、
エイズ拠点病院の活用方法についても聞くことができました。

いつも思うのですが、
感染症に関してはどんどん情報を新しくしていかないと
通訳としてもついていけないことが多いです。
外国人=AIDSなのではなく、
AIDSは誰もが感染する可能性のある病気です。
その上、まだ偏見も多いので、
患者の守秘義務の遵守や、
医療制度の活用など知っておかなければいけないこともたくさんあります。

また、2日目にはベテランの通訳3名が経験に基づいて、
AIDSに関する医療通訳の難しさや文化的に困ったケースの具体例を
聞かせてくれました。

今回は通訳者のケアについての講義もありました。
患者だけでなく通訳者のケアを考えるなんて、
ひと昔前の研修では考えられませんでした。
時代は進んだなあと感慨深く思いました。

医療通訳者は「与える」「出す」行為が多くて、
自分に栄養を与える機会が少ないのです。
こうした研修機会は頭と心にじわっと栄養がしみていく感じです。
AIDS患者さんの通訳も精一杯やろうと思えた2日間でした。

ところで、定額給付金の支給がはじまりました。
各市町、支払い方法や申請書が違うので、
ひとつづつ丁寧に説明しなければいけません。
説明と申請書記入手伝い、必要書類をそろえるのに
一人30分はかかります。
年度末はただでさえ新入学の説明や引越しなどの手続きが多いのに、
困ったものです・・・
コメント

様子をみましょうを訳す2

2009-03-11 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
昨年2月に「様子を見ましょうを訳す」というテーマで書きましたが、
今回は具体例を挙げて見たいと思います。

何も足さない、何もひかないを原則とする医療現場で、
この言葉ほどやっかいなものはありません。

Aさんは少し日本語ができます。
ある日おなかが痛くてB病院に行きました。
医師は痛み止めの薬を出して「様子を見ましょう」といいました。
そのとき、Aさんはこの医師に見放されたような気がしました。
原因もわからないのに薬だけ渡されて、
何か重大な病気だったらどうしようと悩みました。

だから2日たっても痛みが治まらないので、C病院に行きました。
C病院でも同じように何か薬をくれて「様子をみましょう」といわれました。
Aさんは失望して、病院に行くのを辞めました。
結局、仕事中に痛みに耐え切れず急性虫垂炎で救急車で運ばれました。

無事に手術も終わったAさんと話していると、
Aさんの中にB病院にもC病院にも診断を下せなかったことへの
憤りを感じられました。
そこで思ったことは、
医師が使う「様子を見ましょう」がどこまで本人に伝わっていたかということです。

スペイン語の通訳をしていると、
時々日本語にいらいらすることがあります。
ストレートに言葉で説明すればいいものを、
言い訳や言い逃れなどを先に出してくるので、
結局何が言いたいのか相手に伝わらないことがあるのです。
もっとも重要な点がきちんと伝わっていないと感じるときもあります。
「様子を見ましょう」も、
その裏にある文化を訳さなければ、
調子がよくならなければ違う角度から検査をしてみるので、
再来院するようにとのメッセージが伝わっていませんでした。
これは日本語でもよくあることかもしれませんが、
日本語に不慣れだったり、通訳を入れる場合のコミュニケーションは、
できるだけ明確な言葉で表すことが必要です。
相手が誤解したり、間違った理解をするような言葉を使うことは避けること。
そして、何よりもこの場合は、
「様子を見ましょう」の中に
一緒に病気に向き合いましょうという「愛情」がこめられていることは
あまり伝わっていませんよ、先生。




コメント

変わらない人

2009-03-04 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
いろいろ悩んだり落ち込んだりしたとき
会いたくなる人たちがいます。

それは、10年以上同じ情熱をもって外国人支援の仕事を続けている人たちです。

今日(3月6日)、武庫川ユニオンが主催する「外国人派遣切りホットライン」に
スペイン語通訳として参加しました。

武庫川ユニオンのK書記長は、
震災前から外国人の解雇や労災問題に
情熱を持って取り組んでこられた方です。

一生懸命やってくれる人は少なくありません。
ただ、同じ情熱を持ってやり続けることの出来る人は多くない。

外国人労働者を支援をしても、裏切られたり、
嘘をつかれたり、折角解決してもそのまま放り出されたり。
通訳として、K書記長ががっかりするような場面を何度も見てきました。
だけど、そのことに絶望せず、
また次に困った外国人がくれば
自分のことのように怒っているK書記長の姿は、
すがすがしくさえあります。

誰かのためにということを言わず、
「面白いから」という言葉で片付けることができるくらい、
支援のプロに私もなれたらいいなと思います。

今、外国人は医療どころではない困難な状況にあります。
今後この状況が様々な疾患に繋がっていくことを予想できます。

今日、「変わらない人」と会って、また少し元気が出てきました。
コメント