MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

病気は病気だけではない

2014-12-15 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
通訳仲間のAさんが愚痴っていました。
「病院の通訳をしていて、地域福祉との交渉が必要になり、
その通訳をしていたら、もう病院と関係ないから通訳をやってはダメと言われた」

Bさんも愚痴っていました。
「学校で日本語支援をしていたら、
どうも精神的につらいみたいだから、病院についていこうとしたらダメといわれた」

医療通訳をやっていて痛感するのは、
「病気は病気だけではない」ということです。

ある学生に
「医療通訳は病気を治せますか」と言われました。

医療通訳は病気を治せません。
でも、治療の周辺環境を整えたり、ストレスを軽減したり、
患者や家族が治療に積極的になるように状況を整えるには
医療通訳が必要です。

特に、DV被害者や虐待の被害者、交通事故や犯罪被害者、
難病や終末期、介護の必要な病気、障害をもつ患者、
そしてその家族には病気は病院だけで終わるものではありません。

通訳者としてはなだらかに線として続く通訳支援に線引きはありません。
ただ、まず基本となる治療現場での通訳すらきちんと確保できていないのであれば
まずはそこから動き始めなければなりません。

どんな田舎にいても、
その町に一人しかいなくても、
少数言語であっても、
医療現場での最低限の通訳支援が行えるように。

制度化を絵に描いた餅にしないように。
すでに制度化への動きは始まっています。



ベストよりベターを目指して

2014-12-08 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
急に寒くなったので、体調を崩している人が多いようですね。

私も11月はずっと風邪をひいていました。
綾瀬はるかさんに「あなたの風邪はどこから?」といわれると
私は「鼻と喉から」と即答できます。
夏場にガソリンスタンドでもらっていた景品ティッシュの箱が
どんどん消費されていきました。

12月になって寒さに慣れたのか
やっと落ち着きました。
仕事をしながら風邪を治そうとしたので、
11月中に「今しなくてもいいことは後でする」という(いつもの)悪癖がでて
12月にそのツケが回ってきています。
あ~ごめんなさい。
ご迷惑をおかけした方々すみません。

11月は医療通訳の依頼が多かった気がします。
私は仕事(スペイン語相談員)の中での電話通訳依頼が多いのですが、
病院に行く途中、もしくは受付をすませてから、
「今から診察室に入るから、また電話するから通訳して」という依頼がはいり、
何分か後に電話がはいります。
総合病院のこともありますし、小さな近所のクリニックや歯医者さん、
保健所の1歳半検診会場や薬局などからの電話もあります。
最近は「日本語に通じない人には医療通訳が必要」という認識が
じわじわ広がってきていて、
電話での通訳を嫌がる先生は少なくなってきました。
逆に通訳しやすいように話してくれたり、
診察室で外国人患者にも優しく対応してくれている様子が電話口からも伝わります。
「あんた誰」「ちょちょっと通訳して」と言われていた20年前とは違うなあと思います。
通訳場面はあいかわらず多いけれど、大きな違いは医療者の理解と協力です。

事前の電話の後に、出てきそうな単語を調べたり、
知らない病気などに関してはインターネットで調べたりして、
診察室からの電話に備えます。

診察室からかかってこないときは逆に心配です。
難しい言葉が出てこなくて、通訳に電話するほどではなかったとか
検査だけでコミュニケーションの必要がなかったというならばいいのですが、

「電話通訳?だめだめ、時間がかかるから。子供でもいいから通訳連れてきて。」
「僕は英語できるから英語で話そう」(スペイン語圏の人には英語が苦手な人も少なくない)
「どこの誰かもわからない人に守秘義務のある話はできないよ」(本人が依頼しているのだけど)

・・・と言われていないかと心配になります。
病院が通訳者を雇用できれば一番いいですし、
なんらかの派遣制度があれば心強いですが、
それは大都市や集住地区でなければ難しいこと。
私の住む兵庫県は広く大きく外国人は散在しています。
電話での通訳はもちろん誰にとってもベストチョイスではありません。
でもまったくコミュニケーションがとれないよりは
ベターなチョイスであるし、慣れた通訳者が対応すればよりベストに近いものになります。
食わず嫌いせず、医療者の方々にもベターな選択肢を一緒に探してもらえればうれしいですね。

医療通訳協議会も最初からベストを目指さず、
ベターを積み重ねていきたいと考えています。