MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

卵が先か鶏(にわとり)が先か?

2013-06-24 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
先日、授業の中で学校教育サポーターや
日本語ボランティアをしている学生の発表を聞きました。

その後、学生の意見の中で、
こうした在日外国人の教育や日本語の分野を
ボランティア任せにしていいのかという
意見が出ました。
また、プロでない人間が日本語を教えていいのかという
是非論の意見も出ました。

どれも、当然の意見です。

新しい社会の問題を解決するときに
いつもぶち当たるのは
「卵が先か、鶏が先か」という議論です。

医療通訳もいつもこれに悩んでいます。

医療通訳の認定制度や報酬保証がないうちは
プロの技術があっても、アマチュアの人も一緒くたにされます。
お金がつかないから適当でもいいという人もいる一方、
一生懸命やる素晴らしい通訳者もいます。
でも世間では「鶏もどき」と扱われます。

「鶏もどき」の存在は本物の鶏の誕生を阻害するかもしれません。
「鶏もどき」でいいやという人たちがたくさんいると
本物の「鶏」は生まれないからです。

今の医療通訳はこの「鶏もどき」の状態です。
この「鶏もどき」が頑張ってしまうと
本物の「鶏」でなくてもこっちでいいじゃないかと
行政や病院が思ってしまうと制度化のブレーキになります。

逆に、この「鶏もどき」がとても優秀で
もどきにしておくのはもったいないと行政や病院が思ったら
本当の「鶏」を生み出す努力を一緒にします。

社会的コストの伴う制度改革については、
例外なくこうした過程が繰り返されていると思います。
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医療は贅沢品

2013-06-17 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
移住連神戸フォーラムが終わりました。
開催された分科会一覧は こちら
(医療通訳・コミュニティ通訳は12分科会です)

医療通訳・コミュニティ通訳分科会は
JAMIの中村先生、MCIネットの飯田さんに
基調報告をしていただき、
最新の医療通訳・コミュニティ通訳事情について
お話してもらいました。

議論の時間がゆっくりあったので、
今後のビジネス化の可能性や
制度化に向けての方向性なども話した上で、
支援に傾くだけでなく通訳技術が重要であるという指摘もありました。

参加者に介護現場で働く方が数名いらして、
介護、看護職からの意見も聞くことができたのも収穫でした。

今回は報告書を作成しませんので、
当日のお話は参加した方から聞いてくださいね。

ただ、全体的な感想を言うと、
移住労働者の中では医療はまだまだ贅沢品だなあと思います。

関係の深い分科会として「貧困」「医療」分科会があるのですが、
まだまだ在留資格の関係や制度の狭間で
医療を受けられない人の問題が大きいと感じます。
医療の質や通訳よりもまずは医療へのアクセスが問題というのは
たぶん普通に保険を持っている人には想像しづらいことだと思いますが、
現場では確かに、まだまだ「医療通訳の質」を問うレベルではないことを
思い知らされます。

国民健康保険に入れず、
透析治療が受けられなくて帰国し亡くなったRさん。
20年たった今ならなんとかなっただろうか・・と自問してしまいます。

ただ、医療通訳は決して贅沢品ではありません。
中村先生もおっしゃっていましたが、「医療を受ける権利は基本的人権」であると思います。
その際に日本語が通じなければ人権を侵害することになる。
通訳のレベルが低ければ、誤診や医療過誤の危険性もはらんでいます。
医療がまだまだ贅沢品の日本だけれど、
だからといって医療通訳は贅沢品だとは思いません。
そのことを強く感じた2日間でした。


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15日は移住連の神戸フォーラムです!

2013-06-10 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
次の土曜日、6月15日は移住労働者と連帯する全国ネットワークの
神戸フォーラムです。

詳細は こちら

午後3時半からの
第12分科会のテーマは「医療通訳/コミュニティ通訳」です。

HPではなかなか分科会の内容が紹介されないので、
このブログをご覧の方にここで分科会の内容を
ちょっと宣伝させてもらいます。

第12分科会の趣旨は
「通訳を必要とする外国人を支援する際に、専門知識と通訳倫理を兼ね備えた通訳者の存在は不可欠です。
しかし、外国人支援における通訳の質について厳しく言及されることが少ないかわりに、
未だに通訳の役割が理解されていないことも少なくありません。
本来の医療通訳・コミュニティ通訳は、外国人の医療やコミュニティの様々な場面で、
単に言葉を置き換えるだけではなく、コミュニケーションの橋渡しや調整、
問題解決に向けて対人支援の一部となる役割を担っています。
 近年、要通訳案件が減ることはなく、逆に通訳内容は年々難しくなってきています。
通訳の環境整備を怠たれば、守られるべき様々な外国人の人権を損なうことにもなります。
この分科会では、現状を踏まえたうえで未来に向けた医療通訳・コミュニティ通訳のあり方についての
議論をしていきたいと思います。
 これから医療通訳・コミュニティ通訳をやってみたいという人の参加も歓迎します。」

ゲストスピーカーはお二人
①)「医療通訳士の役割:ことばと文化の壁を超えて」
   中村安秀(医療通訳士協議会(JAMI)会長・大阪大学大学院人間科学研究科教授
② 「コミュニティ通訳の役割と責任」
   飯田奈美子(多言語コミュニティ通訳ネットワークmcinet 共同代表)

ねっ!参加したくなりましたよね。
では、皆さん会場でお待ちしております。


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MEDINTの講座について

2013-06-03 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今日はMEDINTの講座のお話をします。

MEDINTは通訳派遣をしていません。
もちろん、今一番必要なのは
実際に外国人に同行してくれる医療通訳者であるということは
十分に理解しています。
その上で通訳派遣をしないことに決めています。

ひとつは私自身が医療通訳者であり続けたいので、
派遣をすればコーディネーターの役割をしなくてはいけなくなり
現場を離れて通訳者であり続けることが困難になるからです。
それはよい医療通訳になりたいという目的と相反することです。
(もちろん誰かがしなければいけない大切な仕事ですが)

もうひとつは通訳者の目線での問題提起をすることと
通訳者のコミュニティを作りたいと考えているからです。
団体が違っても、言語が違っても
医療通訳というくくりで交流出来る場所が作りたいと思っています。

今、MEDINTでは年に4回の言語分科会を開催しています。
英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語に今年からタイ語が加わりました。
中上級の医療言語向けの講座はあまりないので、
講座運営は講師と参加者に任せていますが、言語情報の交換の場所にもなっています。
同じ日に時間をずらせて5言語一緒にやるので、
休憩時間などに他の言語の方との交流もできます。

それ以外に医療の勉強会や通訳技法の勉強会もやっています。
年に1回にシンポジウムも開催しています。

会員の方には年間5000円の年会費をいただいています。
講座はこの年会費と助成金で運営していますが、
年会費だけで、どの講座を受けても追加費用はかかりません。
例えば英語とタイ語の講座を全部受けて年間8講座、
それ以外の講座も受けると講座単価は下がっていきます。
「通訳者にもっと研修の機会を」というのがMEIDNTの目的で、
たくさん勉強する人に負担を与えないというのが原則です。
また、もっとたくさんの方に会員になっていただければ
講座の数を増やすことができます。
介護や仕事などで勉強を休んでも
いつでも戻ってきてもらえます。

一番嬉しいのは会員さんがたくさん研修に来てくれること!
ゆるいネットワークを作りながら
医療通訳者の環境整備に声をあげていければうれしいです。

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