MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

都合のいい医療通訳者

2009-07-29 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
先週土曜日、今年度前半の4回にわたる松本先生の講座が終了しました。
本来ならば6月で終わっているはずだったのですが、
新型インフルエンザの影響で5月の講座を一回キャンセルにしたため
7月まで伸びてしまい、先生にもご迷惑をおかけしました。

ご参加いただいた方はお分かりだと思うのですが、
今回の4回にわたる松本先生の講座は、医療通訳向けの講座としては
前代未聞の画期的なものになったのではないかと思います。
実は、医療者の方々に講座をずっと受け持ってきていただいて、
漠然と物足りなさを感じていました。
もちろん、MEDINTの講座をしてくださった先生方は
皆さん一流で教え方もうまくて、よい勉強になったのですが、
私たちは勉強になっても、先生にはメリットがあったのかと
思うことが多々あったのです。

今までは医療者が教え、通訳者が学ぶという形が、
当たり前のこととして存在していました。

松本先生に講座をおねがいするにあたり、
「この講座で実験してください」とお願いしました。
そこで、松本先生は参加者のニーズを汲み取りながら、
毎回少しずつ講座を変えてこられました。
これがとても面白く、久しぶりに知的に興奮しましたし、
医療通訳者の訓練として、こういうやり方もあるのだということを
私たち自身が発見することができました。
もしかしたら先生自信もいろいろ発見してくださったのではないかと思います。

私たちは医師になるわけではありません。
また、診断やアドバイスができる立場でもありません。
通訳に徹するためにどんな知識が必要かということを
察知する理解力こそが私たちに必要だと思うのです。
今回の4回シリーズの講座では、
細かい用語は覚えていなくても、
そうした理解への手順を教えていただけのではないかと思っています。

医師が医療通訳者に教えると
時には医師の都合のいいだけの医療通訳者の養成になってしまう危険性があります。

これからもMEDINTでは
実験的な講座を続けていきたいと思っています。


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先週末は学術集会へ

2009-07-22 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
先週末は博多で開催された日本渡航医学会
学術集会に参加してきました。

今年から一般演題が増えたことと、
新型インフルエンザ関連の演題募集があったので、
私もトリオフォン通訳を使った感染症通訳と
5月16日前後の新型インフルエンザに対する在住外国人の反応について
演題発表させてもらいました。

今回の新型インフルエンザについては、
正しい情報伝達が課題となったと感じています。

町の中がマスクだらけの情景は、
正しい情報がなければ外国人にとっても恐怖を感じるものでした。
混乱ではなく正しい情報で適切な予防と治療についての
情報を伝えなければならないと痛感しました。

感染症通訳は私が医療通訳の活動を始めた原点でもあります。
人を選ばない、放置できない、帰国で解決しない感染症において、
どう適切な通訳を行うかは通訳者にとっても重要な課題です。

今、南米日系人の失業者が多くて、
多重債務やローン返済の不履行、会社倒産にかかる労働債権の手続きなど、
本業のほうは目の回る忙しさです。

医療通訳も31日(金)に東京大学で開催される
医療通訳士協議会の準備が急ピッチで行われています。

様々なチャンネルから医療通訳を考えていく活動が盛り上がってきています。
暑い日が続きますが、まだまだばてられませんね(笑)。
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理解してくれる人を増やしたい

2009-07-09 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今週は神戸市看護大学に行ってきました。

「文化と国境を越える医療支援」講座の1コマで、
医療通訳者の立場からというテーマで話をしました。

対象者は看護学生(3年生)です。

講義は昨年に引き続き2回目でしたが、
実習や実際の業務の中で、
外国人患者を担当したことのある方が少なくないようで、
私のつたない話も熱心に聞いてくれました。

医療通訳を含む外国人の医療支援をしている人間の数は
支援を必要としている人の数に比べて決して多くはありません。
ですので支援には限界がありますし、
支援者や団体のいない地域にも外国人患者はいます。
そこで、医療従事者で外国人医療を理解してくれる人を
一人でも増やしていきたい思っています。
看護学生の方々は近い将来、看護の現場で
必ず外国人患者に遭遇します。
そのときにやさしくわかりやすい日本語で、
在留資格や生活・文化背景に配慮したケアをしてもらえれば
外国人患者も安心して受診できます。
時には外国人の医療や福祉の専門家や通訳者などとの
ネットワークを持っていることで救えることもでてきます。

先週は大阪大学大学院で講義させてもらいました。
医療通訳で一番足りないのは、実践者より研究者だと感じています。
大学院生の中で本気で医療通訳研究に取り組んでくれる人が
一人でも二人でも増えてほしいというメッセージを伝えました。

一通訳者が自分でできることはとても少ない。
理解してくれる人を増やすことが一番大切だと思います。
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敵か味方か?

2009-07-01 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
外国人に依頼されて病院に行くとき、
結構どきどきします。

親切にしてくれるかな。
ちゃんと治るかな。
外国人だからと特別な眼で見られないかな・・・。と

通訳がそれくらい緊張しているのだから、
患者本人はもっと緊張しているのだろうなと思います。

以前にも書きましたが、
外国人患者の相談では言葉のできる病院以上に、
その治療に実績があったり、評判のいい病院を紹介して欲しいと言われます。
はじめて病院を訪れる心細さは日本人の方と同じです。

だから、最初に病院のいいところを見つけて、
できるだけ患者に言うようにしています。
「先生、優しかったね」とか、
「設備が整っているから安心して治療できるね」とか、
「受付の人が親切だから安心だね」とか。

本当は、そういう意見は通訳が言ってはいけないのですが、
治療を受けようとするときに、
通訳者が病院のいいところを指摘すると、
患者の不安がすこしだけ軽減するような気がします。

だから、本当にまれですが
専門医がとても冷たい言葉を投げかけたり、
冷たい態度をとったりということがあると、
私の血圧も上がります。

患者が医師を選ぶという意味では、
その冷たい言葉をきちんと訳さなければいけない。
でも、その言葉を受け取った患者はどう思うだろうか。
この近辺に専門病院がなかったり、
紹介を受けた大病院だったりすると、
転院や医師を選びなおすというのは不可能に近い。
この言葉を訳さないで知らないままのほうがいいかもしれない。
頭の中でどうしよう・・・と混乱してしまいます。

何も引かない、何も足さないという理想の通訳が成立するのは、
医療者の言葉が何も引くことも足すこともしなくていい場合に限られます。
いつもそうだったら、どんなに楽だろうと思います。

長引く不況のなかで、
健康問題も出てきています。
私にはどうすることもできませんが、
外国人患者が病気になったときに気持ちよく医療をうけられるように、
医療機関の方々とも仲良くしていければと思います。
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