MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

通訳を利用する人

2011-08-29 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
あまりネガティブなことを書くのはよくないのですが、
こんなこともあるんだなあ・・という程度で
通訳を使う方にも知っておいてほしいことがあります。

当たり前のことなのですが、
自分の口から出た言葉には痛みが伴います。
喧嘩で相手に浴びせた言葉や別れ際に言い放った言葉、
自分を正当化していても、相手の表情を見ると
人としてちくりと心が痛みます。

日本では「言霊(ことだま)」という
言葉に宿ると信じられた霊的な力があると言われています。
「言葉を選ぶ」とか「言葉にするかどうか考える」とか
言葉に対しても慎重になる傾向が強い気がします。

他の文化の人たちは言葉に対してまた違った感覚を持っていると思いますが、
医療に限らず通訳をしていると、
通訳を使っていう言葉は
自分でいう言葉よりも、遠慮がなくきついものが多い気がします。
「えっ!それを訳すの?」と思われるものを訳すこともありますが、
自分で言うならたぶん言わないだろうなと思うような言葉でも
通訳を使えば平気になる人もいます。
そして、稀ですが通訳を使うと人格が変わるなあ・・と思う人もいます。
こうした人は、逆の言い方をすると
言葉ができないことを利用していることもあります。

そういう人の通訳につくと
通訳者は大変です。

前回の嘘をつく患者のところで、
嘘をついても医療者は見破るという話をしましたが、
通訳とはいえ自分から出る言葉が、きつい言葉や厚かましい言葉だと
疲弊してしまいます。

最近、トラブルの通訳をすることが増えてきました。
多文化が共生するということはこうしたトラブルを乗り越えることなので、
私は小さな衝突はどんどんするべきだと思っていますが、
どちらも自己主張のために声を張り上げて同時に主張すると
通訳どころではなくなります。

和やかで静かな通訳がしたいなあ。
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嘘をつく患者

2011-08-22 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳をしていて、
明らかに嘘と思われる証言をする人がいます。

待合室では、昨日のバーベキューの話をしていたのに、
診察室では「サラダしか食べていません」という人。

待合室では、「仕事中にころんだ」と言っていたのに、
診察室では、「家でころんだ」という人。

医療通訳は「ええっ??」となります。
さっき言ってたのと違うやん!と。

そんな時皆さんはどうしますか?

そのまま訳しますか?
それとも本人を諭しますか?

即、命にかかわることは別ですが、
私は最近そのまま訳すことが多いです。
患者は自分の言葉に責任を持つ大人ですから。
そしてそれを聞いている医療者もプロです。

医師に嘘をつく人は日本人にも外国人にもいます。
変な話かもしれませんが、
通訳が入った人だけ好きな嘘をつけないのも気の毒かなと思ったりもします。

だって、この人が通訳を使わなかったら自分で嘘をつけるのに、
通訳をつかったことで嘘がつけなくなるのです。
嘘をつく権利の侵害(?)です。

そういう時には、
結構、眼の表情を使って、
「私(通訳)は知りません(答えに責任持てません)よ」という表情を作ります。
読み取る医療者もそうでない人もいますけど。

でも怖いのは、
ちゃんとした医療通訳が介入していれば、
患者はちゃんと整理された真実の言葉を発していると信じる医療者です。
通訳者は言葉の置き換えについての責任は持ちますが、
言葉の「内容」についての責任は持てません。

ある内科(糖尿病専門)の先生にこの話をしたら、
「嘘つく人は少なくないです。嘘はわかります。
通訳の方が心配しなくても大丈夫です」と言われました。
さすがプロ!と思いました。

もちろん、命にかかわるような嘘や、
医療者を危険な目に合わせてしまうような嘘は、
本人に言い換えてもらいます。

この辺が家族・支援者と通訳者の立場の違いのような気がします。
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残暑お見舞い申し上げます

2011-08-15 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
暑い日が続きますね。
皆さんいかがお過ごしですか?

行政の窓口はカレンダー通りなので、
私は今日も仕事です。

暑いんですが、
我が家は田舎で、神戸市内と比べると3~5度低いのです。
なので今年はまだクーラーをつけていません。
窓を開け放てば、よい風が通ります。
すいかを丸ごと食べるとか、
窓を開けると蝉が手づかみできるとか(しないけど)
夏ならではの楽しみもあります。
今のところ扇風機でやり過ごしていますが、そろそろ限界かも。
去年は8月上旬からクーラーをつけていたので、
暑さに対して鈍感になりつつあるのかもしれません。
皆さんも熱中症には気を付けてくださいね。

大きな工場などで働いている人は
この時期2週間くらいお休みという人が多く、
休みの間に、在留資格の更新や保険料の支払いなどの手続きを
やってしまおうというタイプと
遊ぶぞ~というタイプに分かれます。
(さすがに航空券の高いこの時期に帰省する外国人は少ないです)
今年は景気が悪いから、皆さんに近場でじっとしているのかな?

できれば窓口もすいているこの時期に永住申請とか
法律相談とかその手のややこしい手続きをしてほしいと思ってしまいます。

医療通訳のお話は、今週はちょっとお休み。
皆さん、良い夏をお過ごしくださいね。
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医療通訳はお金儲けではない

2011-08-08 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
最近、医療通訳はトレンドというか、
前に比べて社会の関心が高まってきたような気がします。

もちろん、いろんな人が医療通訳に興味をもってくださることは
有難いことです。

ただ、一つ忘れてはならないのは
あくまでも医療通訳はお金儲けではないということです。

なぜなら、ただ医療通訳が倫理に忠実に活動をすることで
大きな利益が出るはずはないから。
もちろん、仕事に対しての正当な報酬は必要です。
でも、報酬を目的に医療通訳をする人は
本末転倒でありたぶん長くは続かないと思います。

お金儲けのための医師や
お金儲けのための看護師が本来の姿でないように、
お金儲けのための医療通訳もまた本当の姿ではありません。

医療通訳の本領はあくまでも
患者の言葉の壁を取り除くことです。
目的は外国人患者が安心して医療を受けられることなのです。
それが私たちの目的であり、
報酬はそのあとについてくるものです。

医療通訳を目指してこられる方で
会議通訳や観光通訳が減ったからと言われることがあります。
優秀な通訳者の方が医療通訳に入ってこられるのは有難いことです。
ただ、通訳の目的や手法が違うので、是非一緒に学んでほしいと思います。


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無知が人を傷つける

2011-08-01 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
ある福祉関係者の勉強会で、生活保護のロールプレイをしました。

「60代男性、酔って自転車で転んで骨折。
身寄りはなく、日雇い労働で保険にも入っていない。
もちろん貯金はなく、治療費と入院費の目途がたたない。」
というケースです。

講師の方が、
「他に何か確認しておかなければいけないことはありませんか?」
と聞かれたので、
「日本国籍ですか?」と質問しました。
そうしたら会場から笑いが出ました。

日本国籍かどうかを聞くのは
単なる好奇心ではなく、
生活保護適応や保険の遡及などにかかわってくる可能性があるからです。

そうか、この人たちは
生活保護が受給できない外国人や決定に対して不服申し立てができない外国人、
在留資格がなくて国民健康保険に入れない外国人という想定がない場所で
仕事をしているのだなあと思いました。

時々、こういうワーカーの人に当たって、
とても期待させられて、最後にはできませんでしたといわれることがあり、
福祉関係者の外国人に関する知識のなさを痛感することがあります。
もちろん、答える前にきちんと調べてからという方がほとんどなのですが・・・。

身体障害者にも精神障碍者にも高齢者にも母子家庭にも外国人はいます。
難民申請をしているのに結果が出ないままの仮放免の人たちもいます。

福祉の勉強をする時に
そうした知識の前提がないと、傷つけることがあります。

医療通訳者は通訳ですが、
基本的な在留資格や制度についての知識を持っておかないと、
不用意な発言で患者を傷つけてしまうことがあります。
福祉に関する研修にも是非積極的に参加してほしいと思います。
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