MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

医療通訳は怖いからやらない

2012-12-24 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
シンポジウムの中で
リリアン先生が「司法と医療の通訳は怖いからやらない」
と、おっしゃっていました。

リリアン先生の日本語はもちろんネイティブ並で
そんな方がわざわざ「怖い」とおっしゃている言葉の重さに
会場のどのくらいの方が気づいていたかなと思いました。

私はリリアン先生ほどの通訳者ではないけれど
私も医療通訳は怖いです。

このブログで何度も書いていますが、
医療通訳は好きでやっているのではありません。
できればやりたくないといつも思っています。

でも、患者がいてまわりの誰も通訳がやれないなら
自分がやるしかないと思ってやってます。
子供がやるよりは第三者である自分がやったほうがまだいいかなと。
守秘義務が守れない人や専門用語のがわからない人がやるよりはいいかなと。
だからやる限りはきちんとやらなくてはいけなくて、
医療通訳の勉強をしたり、仲間作りをしています。

医療通訳をやるのは通訳がいない患者がいるからで、
もし制度化ができて医療通訳がいつでも使えるようになったなら
私はすぐにリタイアするとおもいます。

でも今も誰かに強制されてやっているわけでもないので、
私、好きなのかな・・・とも思いますが(笑)。

優秀な通訳さんたちが、
お金の問題ではなくて
医療通訳はリスクが高いからやらない、
メンタル的にきついからやらないといいます。
医療通訳の問題は人材に尽きるのですが、
それは報酬の問題だけでなく、
もっと倫理やサポート体制といったものにまで及びます。
これからMEDINTではそうしたことも考えていきたいと思っています。





フリーライダー

2012-12-17 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
「こんな夜更けにバナナかよ」(渡辺一史 2003 北海道新聞社)は
読んだ方もいらっしゃると思いますが、
難病患者の鹿野さんと24時間体制で支えるボランティアとの
きれいごとではない交流を描いた名著です。

あまり専門書以外の本を所有しない主義の私も
この本は「大切な本」の棚に置いています。

この本の中に印象的なエピソードがあります。

ケア付き公営住宅を作るように頑張ってきた障害者と関係者の人たち。
やっと議会を通り、ケア付き公営住宅が実現したけれど、
当たり前のことだけれど、公営住宅の入居は抽選。
運動を進めてきた人が抽選に当たらず、
何もしなかった人が抽選に当たって
「こんな住宅に住みたかった!」とはしゃぐ姿を横目で見ている関係者。

フリーライダーはその名称の通り「ただ乗り」の意味で、
活動に必要なコストを負担せず利益だけを受ける人を示します。

誰かが費用を負担してサービスを供給すれば、
負担していない人も便益を受けられます。
結果として、供給のための費用を負担する誘引は働かず、
みながただ乗りをしようとするようになるのです。
(Wikipediaより)

医療通訳の便益を得る人たちは
医療者、患者だけではなく、様々な人たちだと考えます。
患者のためと思ってほそぼそと活動を続けている人は多いけれど
でも今が、80年代からいる人たちの定住化がすすみ
在日外国人医療通訳が本当に必要な時なのです。

制度をつくるのをただ待つのではなく、
できれば多くの方々に
動きながら制度を作ることを理解し、参加して欲しいと思います。

それは医療通訳者も同じことだと思います。


医療を担う子供たち

2012-12-10 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
12月8日、神戸市看護大学のシンポジウム
「医療を担う子どもたち-医療とコミュニケーション」が開催されました。

とても寒い日で参加された方は大変だったと思いますが、
今まで聞いたことのなかった当事者の方々の
すばらしい議論が展開されました。

医療通訳を経験してきた元子供たちの話を聞きながら、
自分自身の記憶がよみがえってきました。

私の父は慢性疾患で長期療養をしていました。
栄養管理が必要で、若い医師からいつも厳しく言われていて、
数値がよくないと家族が呼び出されます。
母は家族を支えるためにずっと仕事をしていたので、
病院に行くことはできないし、父の栄養管理する余裕もありません。
困った父は子どもの私を病院につれていきました。
医師は私に「このまま数値が悪くなればお父さんは死にます。
家族が何とかしなければいけない。」と言いました。
父ははいはいと聞いていればいいからと言いましたが、
父の付添いとして診察室に入り、
父が死ぬと言われた私は動転し、
家に帰って母の前で号泣していました。
今なら父の気持ちも理解できますが、
その時はなんでこんなに悲しいのだろうと思いました。

シンポジストの方々のお話は
家族の心肺停止やがん告知など、これよりもっと厳しい場面のお話でした。

子どもであれ家族が家族を助けるというのは当たり前のこと。
日本で一番信頼できるのも自分の家族だというのも事実です。
だから彼らは自分の家族の通訳をしないということには違和感があると言います。
でも、子供にはその限度が決められない。
普通の通訳と告知の通訳は違います。
これはこどもにさせていい通訳なのかどうかは
親や医療者といった周りの大人が判断しなければいけないことだと強く思いました。

CODA(Children of Deaf Adults)=聞こえない親を持つ聞こえる子ども
の会こともはじめて知りました。

医療通訳はそこに患者がいるから必要なのです。
その患者と家族がどのような状態であるかということに
無関心では医療通訳者は務まりません。
是非、通訳者の方々にも聞いてほしかったです。


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イーヨーのぬいぐるみ

2012-12-03 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
いよいよシンポジウム「通訳を担う子供たち~医療とコミュニケーション」
今週末に近づいてきました。
まだまだ定員には達していませんので、
いまからでも間に合います!
ご都合のつく方は申し込みよろしくお願いします。
ちらしは こちら

会場である新神戸から市営地下鉄1本約30分の距離の「学園都市」は
神戸市外大や兵庫県立大などがある大学集住地区です。
おすすめは神戸市看護大学のお隣、流通科学大学のランチ
土曜日も11時からやってますので、少し早めにきて是非行ってみてください。
一般の方も利用できますよ。
また、神戸市看護大学は、こじんまりしていますが、
西洋のお城のようなかわいい建物です。
天気がよければ撮影スポットもたくさんあります。

10年前からずっとやりたかったテーマを
今回やっとできました。
私自身も楽しみにしています。

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Iさんに電話での相談や通訳の時は
不機嫌な顔になると見えていなくても
声にでるから机に鏡を用意したほうがいい
とアドバイスを受けました。

確かに、私はスペイン語での相談を聞くのがつらいと思うことはないですが、
同じ話が延々続いたり、時間が長くなると
つい机の上に落書きをしたり、パソコンの埃を掃除したりします。
そういう態度がたぶん声にも出てしまうことがあるので
「聴いてる?」「わかっている?」と言われてはっとすることもあります。

集中力・・それは一番苦手なもの。

だから、鏡もそうなのですが、
机の上にクマのプーさんにでてくる
ろばのイーヨーの小さなぬいぐるみを置いてます。

声が不機嫌そうになったら
そのぬいぐるみをみて少し笑顔になります。

相談員や通訳者が「きれて」しまったら
一番困るのは外国人。
だから私たちは「きれない」「おこらない」のが大前提。
当事者が怒っても相談員、通訳者の頭の中はクールでなければ。

今日もイーヨーに癒してもらいながら、
頑張っています。