MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

医療通訳者の声

2016-01-29 18:03:42 | 通訳者のつぶやき
医療通訳の議論をしているのに、
肝心の通訳者の声が聞こえてこないという声を耳にします。

声を上げにくい状況こそが問題なのだということに
どのくらいの人が気づいてくれているでしょうか。

これは私のイメージですが、
通訳者は組織に属したり群れたりするタイプでなく
一匹狼の職人タイプが多いような気がします。

組織に属していれば別ですが、
フリーであれば通訳技術で評価される専門職です
常に競争にさらされています。

「医療通訳が私のビジネスになれば考える」
というひとが多いのは仕方がないことです。

また、コミュニティ通訳をやっている人は
連携がなければやっていけないので、仲間意識はありますが、
賃金が低いので、学会とか研修会にいくのにも一苦労です。

私がこの活動を始めた頃も、
東京に行かなければいけない、地方の学会で発表しなければいけないというとき
一番問題になったのがお金でした。
東京を往復すれば何日か分の生活費が飛びます。
宿泊などしようものなら、月給の1/3を超えてしまいます。
だとしたら、誰が簡単にシンポジウムに顔を出せるでしょうか?
私が医療通訳の活動ができたのはひとえに円安のお蔭です。
旅費が必要になった時、円安になってくれたのでその差益で交通費を出しました。

その反対に円高になった時は、近場の研修会に行っても懇親会にはいけなくなりました。

最近は、科研にいれてもらえたり、
研究費や研修で呼んでいただけたり、無駄遣いをしなければ、
交通費は何とかなるようになりましたが、
それでも、潤沢なわけではありません。

生活を守りながら医療通訳の制度化にむけての声を上げるのは
医療通訳者にとっては簡単なことではないことを知ってほしいと思います。

皆さんの身近に通訳者がいるはずです。
医療通訳者には言いたいことはたくさんあると思います。
その声を届けられる人が届けてください。
その声をあげられる人があげてください。

医療通訳者自身が動けるようになるのは、
この活動が仕事として安定してからのことになると思います。
それまでは、もっと皆さんの力を貸してください。

明日は尼崎総合医療センターで「医療通訳研修会」があります。
お近くの方は是非おこしください。
詳細は こちら
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医療通訳の難しい診療科

2016-01-15 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
時々、初めてお会いする方に「ブログ見てます」と言っていただくと
すごく恥ずかしいような、じゃ話が速いわと思うような、
複雑な、でもうれしい気持ちになります。

このブログは「グルメ」とか「暮らしに役立つ知識」とかといった
面白いものでも、生活に役立つものでもないので、
読んでいらっしゃる方は「医療通訳オタク(研究者)」か
同じ志の医療通訳者の皆さんくらいと思うのですが、
貴重な時間の中で読んでいただき大変感謝しています。

今日のテーマは医療通訳の難しい診療科です。

私個人の意見を言うと、
医療通訳を始めたころは、「小児科」でした。
患者本人(子ども)が症状を説明することができないうえに
親はパニック状態で、あまり詳細に説明できないこともあります。
「何としても子供の命を」「子供がかわいそう」という思いが強くて
冷静な対応ができなかったり
「なんでもっと早く気付かなかったのか」と自分を責める親御さんの思いに
引っ張られることもありました。

次に、癌治療の患者さんも難しいと感じました。
癌の告知から治療、再発、また治療、再発から余命告知と長い時間のお付き合いになるし、
そのたびに打ちひしがれる患者さんと家族さんを見るのはつらいです。
長期になるとお金の問題も出てきます
通訳者は冷静に第3者の立場ということはわかっていても、
付き合いが長くなると、感情を置いておくことが難しくなってきます。
また、癌はすでに私たちの身近な病気なので、
通訳者自身の家族のなかに癌の治療をしている人がいれば、そのことと重なって複雑な思いになります。

最近は、「精神科(統合失調症)」と「感染症」ですね。
先日阪大のシンポジウムでお会いした感染症の先生にその話をしたときに
「それは隔離や措置入院といった公権力を使う疾患だからです」と言われて
なるほどなあと思いました。
本人の意思とは関係なく、入院をしてもらうように促すためには、
単なる医療用語以上の制度や法を把握しておく必要があります。
本人が「痛い」とか「つらい」といった症状より前に動くこともあるので、
その場合は、日本のやり方や法律についてもきちんと説明することが必要です。

皆さんにとって難しいと感じる診療科はどれですか?
もし、よろしければコメント欄で教えてください。
今後、通訳者研修を行うに当たって、
「教える人がいる診療科」ではなく、
「本当に医療通訳者が学ばなければいけない診療科」はどれなのか
という議論もしなければいけないので、
その参考にできればと思います。

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私の活動する地方では、
一方でNPOによる病院派遣がすすんでいるのですが、
ボランティアベースでやる通訳者や団体は減ってきている気がしてなりません。
90年代の野戦病院状態が再び始まっています。
声があげる余裕がなくなるくらいの疲弊する日々に
いつまでもつかなあという不安が募ります。
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医療通訳の需要と供給について思うこと

2016-01-05 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
新しい年になりました。

阪神淡路大震災以来、
年始の「おめでとう」の挨拶はやめました。
対人支援の活動をしている一人として
どこかに悲しみを抱えている人がいるということを
忘れないでいたいという戒めからです。

また、よく言われますが、年齢を重ねるごとに
時間の感じ方が速くなりますが、
昨年は本当に速かったです。
やるべきことに振り回されながら
なんとかこなした1年でした。

MEDINTの活動やメンテナンスが、
少し滞っているところがあるので
気合を入れなければいけないと思っています。
少し速度を落として、
じっくりと活動に取り組むべき時期ですね。

皆さんのご期待に沿える活動は
なかなかできていませんが、引き続きのご支援をお願いします。

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各地で医療通訳ボランティア登録をされている皆さんから
活動機会が少ないという不安が寄せられます。

活動が必要ないということは
困っていないということだからいいことだと思いたい。

でも、そうでない可能性もあります。
そこを忘れてはならない。
それは需要と供給がうまくあっていない場合です。

医療通訳の必要な時間に稼動できる人がいない。
かなり前に申し込まなければいけないので、急な医療通訳を頼めない。

病院や患者は24時間365日というけれど、それには大きなシステムが必要です。
地方都市では不可能ですので、
実際に稼動するときにできることとの折り合いをつけ、
どこかで線をひかなければいけない悩ましいところです。

もうひとつは、医療通訳のレベルが低いという場合。
日本にきて日が浅い人は別ですが、
80年代、90年代に日本に来ている人はある程度日本語ができます。
その人の日本語と通訳者の外国語を比較したときに
2000年代以降、患者の日本語のほうが優れているケースが散見されました。
医療通訳のレベルが患者に必要なレベルに達しているかは
いくらボランティアといえども、通訳者自身も心しておかなければいけないことです。
単にバイリンガルでは医療通訳はできないということは
様々な場所ですでに確認されています。
医療通訳を受ける以上、患者に信頼されるレベルを常に保つ努力をすることが
私たち医療通訳者に求められるということをいつも覚えておかなければと思います。

需要と供給がうまくいっている上で、
今日も困った人がいないのなら、それは「ほっと」すべきことなのではないでしょうか。

医療通訳は語学練習の場所ではありません。
もちろん、経験をつむことは重要です。
でも、何のために医療通訳を行うのか。
常に患者に視線を向けつづけることが大切だと感じます。

1月には三重県
JIAM多文化マネージャー研修
医療通訳研修会
2月には岐阜県、徳島県、
JIAM医療通訳研修に行きます。
どこかでお会いしたら、声をかけてくださればうれしいです。

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