MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

日本は冷たい?

2009-02-25 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
外国人支援の活動をしていて、
良心的な方々から、「日本は冷たいですね~」と言われます。
これは日本人特有の自分たちへの謙遜からでる言葉なのかもしれませんが、
私はそうは思いません。

お客様以外の外国人はどこの国でも厳しい生活を強いられています。
仕事を争ったり、生活圏に入ってくる外国人に
やさしくて温かい国はまだまだ少ないと思います。

南米で日系移住者の方々の苦労を聞くにつれ、
この人たちは自らの手で地位と尊敬を勝ち取ったのだと思います。

「親方日の丸」という言葉があります。
背中の後ろに「円」を背負っている人間には
本当のところはなかなか見えてきません。

留学や旅行、表敬訪問など
その国のいいお客さんとして滞在した人は、
親切にしてもらったよいイメージばかりを持って帰られます。
それはそれで悪いことではありません。
ただ、訪問者ではなくて移民として暮らすということは
そんなに表面的なことではすまないという覚悟が必要なのです。

美しい出会いだけをして
諸外国は外国人に優しい、日本は外国人に厳しいという
ステレオタイプのイメージを持つことは、
これからの思考を停止させてしまうのではないかと危惧しています。

多文化共生は衝突の連続です。
医療通訳もこうした文化衝突の只中にいます。

では、海外で冷たくされたから日本でも冷たくするのか?
ではなくて、
元気な時は大変だったけど、
病気になった時はとてもやさしかったといってもらえる社会にすること。
仕返しではなくて、日本独自のやり方で。

どこもお金持ちには優しく、
貧しいものには厳しい。
医療制度においても、
それは当てはまります。

自分が海外にいた時はよくしてもらったというのは
階層の違いによる錯覚かもしれません。

日本の政治は迷走していますが、
私は日本社会をあきらめてはいません。
厳しい現実の中でも、思いやりのある人たちがたくさんいます。
外国人医療の問題を考えるときも、
こうした思いやりのある人たちとともに動ければと思っているのです。
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医療通訳者がいなくなるのは時間の問題かも

2009-02-18 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
数年前、大学生の就職セミナーで、
在住外国人支援の仕事というテーマでお話ししたときのこと。

国際学や言語を学んだ学生たちの多くは
できれば在住外国人支援の仕事をしたいと
とても熱心に話を聞いてくれました。

でも、現実を知っておいてもらおうと
最後に私の年収額を言ったところ、
その熱心な視線が、さーっと引いていくのを感じました。
本当にみごとなくらい・・・さーっと。
仕方がありません。
現実は甘くないなあというところでしょうか。

NGOの関係で他職種の方とお茶を飲みに行っても、
収入の話を正直にすると、急におごってくれたりします(笑)。
もちろん、おごってほしいわけではありません。
そのように感じられてしまうコミュニティ通訳者の収入が
情けなく悲しくなるのです。

私はたぶんコミュニティ通訳者の中では
高いほうの収入だと思います。
でも、一般社会人の中では低収入です。

以前、ある先生が、
自分をケアするためにはお金が必要とおっしゃっていました。
いくら人のためになる仕事でも、
いくら社会的に責任のある仕事でも、
報酬が伴わないものは長く続きません。

14日に大阪大学で医療通訳士協議会が発足しました。
やっと大きな枠組みで制度化に向けた動きが始まります。

でも、私の心配は制度化まで医療通訳者が「もつ」かどうかです。
設立記念シンポジウムの中で、
伊藤さんが医療通訳が辞めていくという話をしていました。
社会が疲弊していくと、
多くの問題が表面化せずに放置されてしまいます。
そのしわ寄せが医療通訳者にもきています。

良心的な医療通訳者がいなくなるか、
医療通訳がきちんと制度化されるか、
これからは時間の問題です。
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目からハムを読んで

2009-02-04 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
昨年9月に発行された
イタリア語同時通訳者 田丸公美子さんの「目からハム」は
とても面白いので是非読んでみてください。
私は同時通訳者でもないし、
会議やアテンドといった通訳の経験はありませんが、
通訳者の末席を汚すものとしてとても興味深く読みました。

仕事終了後「とてもよく出来て、お客様に喜ばれました」と報告してくる通訳の場合、得てして客からの評価は低く、「次は別の人にしてください」と言われ、反対に「いろいろと行き届かずにご迷惑をおかけしました。また勉強し直します」と報告してくる通訳には「ぜひ次も同じ人を」とリピート依頼が多い。
(「目からハム」P90)

これは思わず電車の中でうなずいてしまいました。

実際にいろんな通訳者の方とお付き合いさせていただいて、
優秀な方ほど謙虚でよく準備され、勉強されています。
MEDINTに参加されている方も、
優秀な方ほど忙しい時間を都合して参加されます。
通訳に100%完璧はありません。
(超優秀な方にはあるかもしれませんが・・)
いつもどこか足りないとか、間違っていたんじゃないかとか
もっとよい表現があるのではないかと思います。
医療通訳のような対人支援通訳の場合も、
もっと適切な表現、もっとわかりやすい伝え方を追求すると、
いつまでも勉強を続けなければいけません。
自分の評価よりもユーザーの評価を謙虚に聞ける態度が大切だと思います。

また、間違いだらけの通訳選び(P102)の中に
名刺に二ヶ国語以上の言語を書いている通訳を疑え・・という記述もあります。
もちろん、同じラテン語系とか中国語系とかならありえることだと思いますが、
言語体系の全く違うものをいくつも並べている通訳は
本当に全部できるのか・・との疑問を投げかけています。

通訳者は辞書を見ながら言語を訳すだけでなく、
その文化的背景や言い回しなどにも気を配る必要があります。
もしそれが本当に何ヶ国語もできるのならばすごいことですが・・。

他にもイタリア語通訳ならではのユーモアあふれる逸話が
たくさん紹介されています。

ちなみにこの「目からハム」とは日本語の「目からウロコ」なのだそうです。
目から鱗がこぼれるのも変ですが、ハムが出てくるのも笑えますね。
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