MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

MEDINTのお金の話

2010-04-30 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
MEDINTを作ったときに、
ひとつ決めていることがあります。

それは講師にきちんと謝金を払うということです。

何を当たり前のことをといわれるかもしれませんが、
実は善意の活動の世界ではお金に関して無頓着な人が少なくないのです。

というか、お金の話をするのは悪いことのように考える人がいます。

MEDINTで決めているのは
肩書きのある人も肩書きのない人も同じ金額であること。
時には大学教授に話をしてもらうこともあるし、
もっと高額の謝金をもらっている人にお話をお願いすることもあります。
外国人の方もボランティアさんも講義していただく限りは同じです。
皆さん一律でお支払いさせていただいています。
最初に金額を提示して納得してくださった方のみお願いします。
金額はたぶん2時間お話してもらうのには一番安い金額だと思います。

何故そういうふうに決めたかと言うと、
偉い先生なら高い講演料を出すけれど、
一般のボランティアさんなら「無料」でもやってくれるだろうという
偏見をなくしたいと思っているからです。
ある意味それは、「善意の搾取」だと感じるから。

ですから財源の確保無しには事業運営はできません。

MEDINTは主に会費で運営しています。
その会費もコミュニティ通訳者の収入を考えると年額5000円以上は無理だと思っています。
そして年会費5000円ですら私たちにとっては大金です。

そもそもMEDINTの目的は医療通訳者にもっと勉強して欲しいということなので、
本来は無料でもいいと思っているのです。
でも助成金や寄付金の取得は最近ますます難しくなってきています。
残念ながら昨年は設立以来はじめでの大幅な赤字を出してしまいました。

時間を見つけては助成金の申請書を書いている状態ですが、
最近は競争率が高くなっているのと、
環境やこどものようなわかりやすい分野に企業の助成金がいってしまうので、
外国人医療や支援のような分野は財源確保が本当に難しい。

NGOを始める前から覚悟はしていましたが、
やはり心が折れそうになることもあります。
でも、財源を確保するのはNGOを運営する私たちの責任です。
今年も予定通りの講座を開催するために頑張るしかありません。

こんな中で届けられる浄財は本当にありがたいです。
今年もAMDA兵庫県支部から助成をいただくことになりました。
助成金はお金もうれしいけれど、事業や活動へのエールだと思っています。
皆さんの期待を裏切らないように活動を進めていきたいと思います。
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日本の中の異文化

2010-04-23 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
多文化共生という言葉が使われて久しい昨今、
「外国の文化」と「日本の文化」が違う文化であり、
それらとうまく折り合って新しい社会を作ろうという
認識は徐々に広がっていると感じています。

でも「異文化」といえば「外国」とは限りません。
日本の中にも異文化はあります。
特に自分の仕事圏や生活圏から離れると、
使う言葉も価値観も善悪までが違った世界になります。

今週はそんな日本の中の2つの異文化圏にでかけました。

ひとつめは大学。
ある大学の外国語学部で
週1コマ講義を担当しはじめました。
自分自身も他の大学ですが20年以上前学部生として、
15年前大学院生として在籍していましたが、
今ではずいぶん変わったなあと思います。

たぶん実際にはそんなに変わっていないのでしょう。
自分自身がどっぷり普通の社会に暮らしているので、
忘れてしまっているだけなのだと思います。
いわゆる常識は一般社会とは違うものです。
伝え方も難しいなと思うことがあります。

たとえば昔は「シラバス」なんてなかったし、
授業内容や評価も先生好みにかなり偏っていたような気がします。
今は学生からの評価もあるみたいだし、
成績のつけ方もある程度透明化しなければいけない。
いい意味で「教育機関」としての認識が強くなってきたのかな。

ただ、年代の違う若い人に話す時、
いつも感じるのですが、
たとえば「阪神淡路大震災」もまだ小さかったし、
「入管法改正」の頃に生まれているわけで、
一般の共通認識としてはないので
歴史(?)を解説する配慮は必要ですよね。

もうひとつは自民党本部。
協力隊経験の社会還元についてのお話です。
JICAについてはいろいろ意見はあると思います。
しかしJICAボランティア事業には、
技術協力だけでなく、人材育成や人的交流の目的もあります。
ボランティア事業を経験して、
日本に帰ってきて両国の架け橋になったり、
在日外国人の支援をしたりする人たちが少なくないといった現状をお話しました。
ただ、どの部分を切り取って聞いてくださったかはわかりません。

医療通訳の難しさは
「外国語」と「日本語」の翻訳だけでなく。
「一般人」と「医療専門家」の言葉の翻訳もするからです。

そういう日本の中の異文化の人と話のは
とても疲れるし、気も使います。
ただ、違う分野の人や専門家にこの問題を理解してもらう
努力をしなければ道は開けないと思っています。

つらくても医療通訳の制度化にむけて、
こうした異文化コミュニティに発言していく努力を
怠ってはいけないのです。
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プロシーディング完成しました

2010-04-16 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今年はじめてプロシーディングを発行しました。
MEDINTにとっては初の印刷物です。

記録を残すことや
もっとたくさんの人に医療通訳のことを知ってもらうために
印刷物を出版するということはとても大切なことなのですが、
そのノウハウもなかったのですべてが手探りで
いろんな人に助けてもらいながらの作業で半年かかりました。

内容は昨年9月に開催された
「外国人患者の終末期ケアを理解するために」というシンポジウムの
ほぼすべての発言(質疑応答除く、32ページ)を収録しています。

ペルー人、ベトナム人、中国人、ブラジル人通訳の方々が、
医療現場で感じたことを実際のエピソードを含めて話してくれています。
これは広く外国人患者ケアに活用できる視点だと思っています。
また現場で働く医療通訳者の声はなかなか取り上げられないため、
貴重な資料となっているとおもいます。
多くの医療従事者の方に読んでいただきたいと思っています。
兵庫県内の終末期医療機関には無料で配布しています。
ご希望の方はmedint2005@yahoo.co.jpまでご連絡ください。

また一般の方には1冊500円(送料別)で販売もしています。
購入をご希望の方は
郵便振替口座 00960-9-129522 医療通訳研究会
プロシーディング代(1冊500円)と送料(5冊まで80円、10冊まで160円)の
合計金額をお振込みいただき、
振込用紙に送付先、お名前、領収書の有無をご記入ください。

このプロシーディングの種が私たちの知らないところまで飛んで根付き、
きれいな花を咲かせてくれることを期待しています。

またこのプロシーディングの売り上げはMEDINTの活動資金にもなります。
皆さんのご協力をよろしくお願いします。
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もっと外国人患者教育を!

2010-04-09 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
ある医療通訳者のセミナーのワークショップで
外国人医療の問題点と改善点を並べた時のことです。

病院側と医療通訳者側の問題点、改善点はたくさんでたのに、
患者の改善点は「医療を受ける権利を訴えること」のみという
結果にある意味とても驚きました。

日本の医療者も医療通訳者もとても優しい。
だから病気になった患者にいろいろしてあげたいという気持ちが強い。
それは理解できます。

でも、本当にそれでいいのでしょうか?
皆さん外国人患者への評価が低すぎませんか?

外国人患者であっても何も無能力者ではありません。
言葉の問題と日本の医療に不案内なだけで、
十分理解力をもった人たちです。

「してあげる」だけでなく、
外国人患者のエンパワーを手助けするのが
医療通訳者の大切な役割でもあります。

たとえば予約日を守れない患者は何が問題なのか。
本人が予約日を忘れてしまうことです。
ならば、鉛筆をもってもらって自分で書く。
もしくはクリアファイルを買ってそこに必ず予約表を入れる癖をつける。
日本社会では10分前集合が常識であることも付け加えます。
またキャンセルの場合の電話番号と
「きょういけません。よやくをかえてください」等伝え方の日本語、
病院側の担当者の名前を明らかにすることなど
工夫できることはたくさんあります。

私は医療通訳者は患者のエンパワーメントの
お手伝いをする仕事だと考えています。
患者が病院でストレスなくスムーズに治療が受けられるように、
通訳者がいないときでも、ある程度自分でやれるように。
医療通訳者がいなくても医療現場のコミュニケーションに支障がなくなることが
本当のゴールなのではないでしょうか?

医療通訳者として自分の仕事がなくなることがゴールだなんて
なかなか理解してもらえないかもしれませんが、
それくらい、少数言語の通訳者は少なく必要としている患者の数は多い。
すべての患者に手をかけてあげることはできないのです。

外国人患者にももっと日本の医療における知識とコミュニケーションの手法を知ってもらい
患者自身にも力をつけて欲しいと思っています。
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余命に対する感覚の違い

2010-04-02 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
4月1日から青年海外協力隊の春募集がはじまりました。

私たちの時は、農業や機械・土木系、医療系がメインだったのですが、
最近は技術系よりも文系の人も参加可能な職種が増えています。

「エイズ対策」もそのひとつで、
小さな村などに派遣されてHIVの感染予防の啓発活動を行います。
最近は日本で外国人の医療支援をしていると時々OBに出会うこともあります。

アフリカに派遣されていた元隊員と話をしていたときのこと。
余命の話になりました。

アフリカの平均寿命はざっくり言って40歳から50歳くらい。
たとえばHIVに感染しても発症するまでに10年くらいあれば、
30代で感染すると平均寿命とさして変わらなくなるのです。
これから10年間に感染症で死ぬか、事故で死ぬか、戦争で死ぬか・・・
AIDSで死ぬのはその選択肢のひとつに過ぎないといいます。
彼は、日本では寿命が80歳だと思うから30代の感染が怖いので、
もし40歳が平均寿命の国なら感覚は違うのだと。
なるほどと思いました。

たしかにパラグアイもそんなに平均寿命の高い国ではありませんでした。
周りに80代はいなかったし、私の下宿のお母さんも60代で破傷風でなくなりました。

医療設備のいい日本にいるから早く死ぬことが怖いと言われると、
変に納得してしまう自分がいます。
環境が余命に対する感覚を変えているのだと思います。
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