MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

東京で講演を行います

2014-11-24 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今週末、東京のさぽうと21さん主催の
第1回 理解を深める講座「多文化共生・・・医療通訳に何ができる?」で講演を行います。

東京を含め、関東でお話するのは初めてです。

すごく緊張していますが、
さぽうと21さんの活動場所であるアットホームな会場なので、
参加者の方々の顔もしっかり見えて双方向でお話ができる
環境なので、東京の空気感をしっかり学んできたいと思います。

なんと今回の講演では、さぽうと21の方から後半は好きな人と対談してもいいと言っていただきました。
関東在住であこがれの人、尊敬している人は何人かいますが、
できれば異業種格闘技で、いつもはあまり接点のない方で、
それでいて参加者の方々にも近い方でと考えて何名かあげさせてもらい、
大正大学の鵜川先生にお願いすることになりました。

鵜川先生は精神看護がご専門で、クリニックでのお仕事を持ちながら
女性、難民、在日外国人といったマイノリティの視点から研究をされています。
私自身、多文化間精神医学会でのご発表を聞くたびに毎回目からウロコの体験をします。
支援者がなんとなく感じていることをしっかり言語化してくれる貴重な研究者の方だと注目しています。

こうした形の対談にも気持ちよくご承諾いただきました。
当日は「在日外国人のこころと言葉」を医療通訳の立場から議論していきたいと思います。

緊張反面、新しい切り口での議論ができることにワクワクしています。
フロアも巻き込んでいきたいと思っていますので、
お時間のある方は入場無料ですので、是非ご参加くださいね。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

教えてあげる

2014-11-17 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
ある団体の方とお話していた時のこと、
「通訳者には私が教えてあげるから。あなたにも教えてあげる」と言われました。
この方は、医療通訳の団体の方。
でも通訳者でもなければ医療者でもない。
何を教えてくれるのだろうとその時は思いました。

ある病院の先生に医療通訳には何が大切かと聞いたら
「時間を守る。あいさつをする。報告をする。」と言われました。
その時は、ああそうなんですねと聞き流しましたが、
よく考えれば、それは社会人としての必要最低限。
きちんと通訳として稼働している人は
遅刻をしたり、きちんと仕事の報告ができない、
ましてや挨拶ができないとなると、そもそも次の仕事はきません。
特にフリーで働いている人はそれくらい競争に曝されています。

団体の方や病院の先生は
いったい、どれだけレベルの低い通訳者をイメージしているのだろうか、
それとも、そこにいる医療通訳者がレベルが低いのだろうかと
あきれてしまいました。

外国人相談の仕事をしていても、
「外国人」とつくと、レベルはある程度でいいと軽く考えられる風潮があります。
日本社会のオプションくらいの位置づけなのかもしれません。

プロとして稼働している人間にはそれが屈辱的であり、
医療通訳者のレベルは低くないということを言いたいし、
そんな見方をされる限り、バカバカしくてプロ通訳者は参入しません。

医療通訳のレベルが上がらないのは、
高いレベルを求めないからだと思います。
低いレベルでなあなあでやれる仕事なら誰でもやれるから
わざわざチャレンジなんかしない。

話はかわりますが、
今年の看護師の国家試験に医療通訳の問題がでました。

2014年度(第103回)版 看護師国家試験 過去問題

79 外国人の女性が38.5℃の発熱のある生後3か月の男児を連れて小児科診療所を受診した。
男児は上気道炎であった。女性は日本語が十分に話せず,持参した母子健康手帳から,
男児はこの女性と日本人男性との間に生まれた子どもであることが分かった。
夫は同居していない様子である。外来看護師は女性に,4か月児健康診査のことを知っているかを尋ねたが,
女性は看護師の質問を理解できない様子であった。
男児が4か月児健康診査を受診するために必要な社会資源で優先度が高いのはどれか。

1. 近所の病院
2. 通訳のボランティア
3. 児童相談所の児童福祉司
4. 地区担当の母子健康推進員

答えは2だそうです。
ボランティアを社会資源と位置づけるには医療通訳の責任は重すぎます。
せめて正解を「医療通訳者」とするように
私たちも動いていかなければいけないと思っています。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

IMIA受賞あいさつ

2014-11-10 00:00:00 | 通訳者のつぶやき

IMIAメンバーの皆様、このたびはこのような栄誉をいただきありがとうございます。
22年間スペイン語通訳相談員として働いてきただけで、
褒めていただくようなことはなにもないのですが、
今回はこれから日本における医療通訳の発展にもっと頑張れという叱咤激励の受賞だと理解してありがたくいただきたいと思います。
私が医療通訳を始めたころは、医療通訳者はあくまでも外国人患者の身内という扱いでした。
結核患者に同行した時も、精神疾患患者の通訳をした時も、医療者側でなく、
患者の友人もしくは家族としての扱いを受けていました。
患者が通訳をつけなければ診ない、できる人が他にいないならば自分が受けるしかないという追い詰められた状況で難しい通訳も受けてきました。
私の医療通訳の原動力は「恐れ」と「怒り」です。
 スペイン語に自信があるわけではありません。だから、どんな通訳現場もいつも緊張するし且つ「怖い」と感じています。
と、同時に外国人患者からひとりで病院にいっても言葉が通じないから行けないと言われると、公的保険に加入し、
税金も払っている日本社会の一員である人が、
どうして最低限の医療を受ける権利を阻害されなければいけないのかという「怒り」になるのです。
 また、ある医学会のシンポジウムで「先生方は冷蔵庫を買ってお金を払わなければ泥棒だと思うけれど、
通訳を使ってお金を払わなくてどうして平気なのですか」といいました。
別にお金がほしいと思っていたわけではありません。人間は無料のものに対する扱いが雑です。
なんでも要求してくるし、無理も言ってきます。

 それがおかしいと思っていました。私は患者のためと思って通訳を引き受けている、
病院に使われる筋合いはないと思い、医療者に対立感情を持っていた時期もあります。
また、疲れてバーンアウトしていく医療通訳者、
生活のために他の仕事をせざるを得なくて辞めていく通訳者を見る都度にこのままではだめだと思いました、
 ただ、2000年代になって医療通訳研究会(MEDINT)を設立し、医療者の方々の意見を聞いたり、
通訳者研修をお手伝いいただいたりする中で、
 医療者も決してそれでいいとは思っていないのだということが理解できました。
 医療は今後ますます複雑化していきます。様々な専門職がチームとなって患者にあたる時代です。
 医療通訳者も質の確保をして、チーム医療の一員になれるように研鑽していかなければいけないと強く思います。
と、同時に医療通訳者の立場から、これからもはっきりとこうしてほしいという要望を伝えていかなければいけないと感じています。
 IMIAの皆様も私たちと同じような状況からこうした組織を作り上げたと竹迫支部長から聞いています。
 日本で頑張るたくさんの医療通訳者のひとりとしての受賞だと受け止め、IMIAの皆さんから勇気をいただいたことに感謝します。

 ありがとうございました。

****************************************************

青臭い言葉は今日で封印です。
これからはもっと前向きに医療通訳に取り組んでいきたいと思います。
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お金を産む通訳 お金を産まない通訳

2014-11-03 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
11月最初の連休はどう過ごされましたか?

私はノエビアスタジアムで開催された
ラグビーの日本代表VSマオリオールブラックス戦を見に行きました。
すごく楽しみにしていたのが、NZ代表が試合に先立ち行う「ハカ」!
さすがに迫力がありました。

試合はやはりオールブラックスが優勢だったけれど、
思った以上に日本代表も頑張ってました。
2019年には日本にラグビーのワールドカップがやってきます。
日本のどこでやるかはまだ決まっていないようなので、
神戸には神戸製鋼コベルコスティーラーズもあるので、
是非、神戸に来てくれることを願っています。

**********************************

「プロの通訳」と「ボランティアの通訳」
その境目は報酬にあると思っている人が多い気がします。

たくさんお金を産む、
例えば、観光客を呼び込んでその人たちがお金を使う
様々な商品を売って利益を産む
映画やコンサートの興行成績に寄与する
文化交流で新しい消費が発生する・・・

そうした通訳は、確かに通訳をすることで
はっきりと消費や生産に貢献しています。
お金を産む通訳といえます。

そこには通訳報酬がはっきりとコストとして換算されます。
利益貢献の一部に通訳者の役割があるからです。

かたや、地域に住んでいる外国籍住民のコミュニティ通訳は
お金を産む通訳とは言えません。

長い目で考えると、コスト削減であり、トラブル解消であり、
人権を守る活動で、人々が健やかに安全に暮らすお手伝いなのですが、
そこで明確な利益が生まれるとはなかなか考えにくい。
だからコスト意識がとても低いのです。

10年前、渡航医学会のシンポジウムで
「先生方は、冷蔵庫を買ってお金を払わないのは泥棒だと思うのに、
通訳を使ってお金を払わないのは平気なのでしょうか?」と
聞いたことがあります。

通訳の価値は「お金を産む産まないではなく」
「必要かどうか」で判断されるようにならなければと思いますが、
その基準はとても難しい。

医療通訳を「お金を産む」という尺度ではなく、
社会資源として必ず必要であるというロジックで考えていかなければいけないと思います。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする