MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

語学オタクはいらない

2015-03-30 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
オタク・・・。

随分便利な言葉ができたものです。
私が若い頃には、何かを集中して好きになることは
けっこう恥ずかしいことだったので、
趣味は「読書」とか「音楽鑑賞」とか当たり障りのないことを書いていました。

最近は、女性でも野球好きや鉄道好きは珍しくなくなり
「カープ女子」とか「鉄子」とか便利な名称ができました。




医療通訳を認証するとき、
どんな医療通訳者が実際の現場で役にたつかを
考えていく必要があります。

試験をすると
とにかく単語をよく知っている人が高い点数をあげます。
もしくは、試験になれている人、特に書く事が得意な人は
テストが得意なので高評価を得がちです。

もちろん、たくさんの単語を知っている通訳者は望ましいです。
でも、医療通訳者は単語を知っているかより
知らない単語が出てきた時にどう対処できるかの能力が重要です。
医療通訳は内科、外科、小児科、産科から精神科や感染症、予防接種まで
いろんな分野の通訳をします。
その全てに精通することを望むのは不可能だと思います。
もちろん、臓器の名前や基本的な症状などでひっかかっているのは論外ですが、
専門的な単語が出てきた時に、患者も知らない単語を
そのまま訳しても伝わらないことが多々あります。

医療を含むコミュニティ通訳は
受け手がきちんと理解して、判断して、選択できるように通訳をすることが目的です。
だから、普通の人がわからない単語をそのまま訳しても伝わらない。
それよりも、わかりにくいのであれば図表を使うとか、
メモをきちんととって聞きなおすとかといった
正しく訳したいと思う謙虚な姿勢こそが重要なのだと思います。
理解できないことを、自己決定したり選択したりするのは無理です。

美しい通訳でなくてもいいのです。
使命感をもって誠実な通訳をする心構えが大切だと思うのです。

ここでは語学オタクはいりません。

単語を100知っているのもよいことだけど、
知らない単語にどう誠実に当たることができるのかの方が
医療通訳者に欲しい才能だと思います。

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留学生が医療通訳を請け負う場合に

2015-03-23 17:13:07 | 通訳者のつぶやき
先週末21日に京都で開催されたJAFSA(国際教育交流協議会)主催の
多文化間メンタルヘルス研究会に参加してきました。

こちら は昨年の報告です。

JAFSA(国際教育交流協議会)は、1968年に設立され、
2003年に法人格を取得した特定非営利活動法人(NPO)で、
主に大学の国際教育交流に関する情報交換・調査・研究・研修・出版・提言等の諸活動を行っており、
約300に及ぶ大学・教育機関・企業等を会員とするこの分野唯一のネットワーク組織です。
(JAFSAのHPより転載)

今回は、留学生のこころの問題についての研修で、
四谷ゆいクリニックの阿部裕先生の基調講演と
各大学の担当者の事例検討が行われました。

日本も2008年「留学生30万人計画」を発表し、
2020年までに留学生を30万人に増やそうとしています。
大学では、様々な留学生のサポートを行っていますが、
移住者とはまた違った心の問題やサポートが必要なようです。

お話しを伺ってて、
留学生が精神疾患で受診するとき誰が通訳するのだろうと思いました。
通常、本人が日本語堪能、もしくは英語ができるのが前提と感じましたが、
こころを患っているとき、第2言語がうまくでてくるとは限りません。
そんな時、同国人の学生や知人がサポートに入っているとのことです。

でも、留学生といっても、まだ若い学生です。
修羅場にもなる精神科の受診の通訳はきついだろうなと想像に難くありません。
医療通訳者でも精神科場面での通訳は上級者でなければできないと言われています。
ましてや、医療通訳の訓練を受けているわけでもない
二つの言葉が話せるだけの学生に精神科の医療通訳をお願いするは
お願いする側がかなり慎重になってサポートしなければいけないと思います。

私はできれば、重篤な医療場面の通訳は
学内で人材調達を考えるのではなく
外部の医療通訳者を頼めるように予算措置して欲しいと思います。
結局、多くの善意の人が動くよりも医療通訳者がつくほうが
スムーズに医療に結びつきます。

そして、忘れないで欲しいのは、
重篤な場面の医療通訳をする学生や知人の人たちの
こころの傷の問題です。
慣れていない人が医療通訳をすると
ショックを受けたり、うまく自分自身で通訳したことを消化できないことがあります。
どうしても学生や知人に医療通訳をお願いする場合は、
そのお願いする人が通訳者を孤立させない配慮が必要です。
こうした場面で医療通訳を受けてくれる学生は
優しい人が多いのです。
その分、抱えてしまうことも多い。
周りの人がきちんとそのことを理解するようにお願いしたいと思います。
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巡業が終わりまして・・・

2015-03-16 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
2月から3月にかけて
いろんな場所に出没していました。

年度末なので、行政関連の行事が多い。
確かにこの時期になると、年内に予算を消化しなければいけないので
たくさんのイベントや研修等が開催されます。

医療通訳や外国人支援関連に
何らかの形で予算がつくのは喜ばしいこと。
おかげでいろんな場所に出かけて、新しい出会いが生まれます。

2月には市町村国際研修所で「医療通訳基礎研修」が開催されました。
一日目の夜には交流会も開催されたのですが、
参加者は「基礎」レベルではなくて
皆さん地域の課題を抱えて、奮闘している方々ばかりで
こちらのほうが参加者の方々から勉強させてもらいました。

医療通訳は全国レベルでの運動も必要ですが、
地域によって外国人住民の集住度、言語別需要や傷病別の需要、地域の病院体制などが違います。
地域でも制度設計することが重要だなと感じました。

3月にはあいち医療通訳システムのフォローアップ研修に行きました。
研修のためにあらためてシステムの概要について調べましたが、
行政と医療機関、大学が連携して、「派遣」「電話通訳」「翻訳」を3本柱にした
とてもよく考えられているシステムだと思います。
(HPに詳しいことが書かれていますので、ご存知ない方は是非調べてみてください)
特に痛感したのは、厳しい試験を合格して登録された通訳者さんたちの
プライドの高さと職業意識の強さです。
医療通訳のプロとしての意識をもって稼働しているので、
要請件数はあがってきています。
特に英語に関しては、「医師が話せる」と「通訳をいれる」では
レベルが違うことを医療機関が理解してくれるようになっているのか、
年々件数があがっているのは、よい通訳者さんが見本を示してくれているのだと思います。

先週末は新潟へ。
新潟県でも独自の医療通訳に向けて協議会での話し合いが始まっています。
座長のS先生は通訳者でもなく医療者でもないけれど、
外国籍住民のサポートをずっとされてきている方です。
集住ではなく、広い県域をどうまとめるかが課題ですが、
こうした問題を地域の様々な専門の方々が集まって議論されているのは
とても興味深いですね。
また新潟県にはすでにメディカルツーリズムで専門医療を受けに
多くの外国人が来日しています。
未来の話ではなく、待ったなしの話なのです。


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MEDINT看護部会主催の研修会

2015-03-02 19:20:22 | 通訳者のつぶやき
医療通訳研究会(MEDINT)の活動には
医療通訳者のための研修、医療通訳の社会啓発のほかに
医療通訳ユーザーのための研修があります。

医療通訳ユーザーは主に
病院の医師や看護師というイメージがあるかとおもいますが、
地域看護や地域保健、身近な薬局や介護施設なども
外国人患者と家族は利用しています。

そうしたユーザーの人たちに
外国人医療や医療通訳の上手な使い方を知ってもらうことは
これから私たちが活動しやすい環境を整備するためには
必要不可欠なことだと思っています。
こうした人たちに医療通訳の応援団になってもらうことは
大きな力になります。

特に看護師、保健師、助産師の人たちは
患者との距離が近く、私たち医療通訳者との共通点も少なくありません。

MEDINTでは5年前から看護部会を作り、
様々な活動をおこなってきました。

今年度出前講座に助成をいただき、
3月に2つの講座を開催します。
受講者は保健師もしくは協力隊経験者と限定されていますが、
その分ピンポイントの中身の濃い研修会になると思います。

2014年度地域保健支援者対象講座
2015年3月14日(土)10:00~15:00
「外国籍住民が健やかに暮らすために」  

2014年度JOCV看護職帰国隊員対象講座
2015年3月15日(日)11:00~16:30
「笑顔で外国人患者を受け入れよう!
~ 看護職者のための外国人医療支援講座~」  

詳細はMEDINTの HP をご覧ください。

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