MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

病気が人を変える

2013-04-29 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
病院にいる通訳者は
他の医療者と同じように
患者として外国人にはじめて接します。
○○病のAさん、というふうに。

でも、コミュニティの通訳者は
その人の元気な頃を知っています。

来日して、結婚して、子供が出来て、
転職して、車を買って、家を建てて・・・。
その場面場面でその人の姿を見てきました。

だから、Aさんの人生の「ある場面」にいる
病気であるAさんと出会います。
病気であるAさんは元気な頃のAさんの「続き」と感じます。

でも、悲しいことに病気が人を変えることがあります。
病気の状態を苦しんでのこともあるし、
薬の副作用のこともあるし、
痛みなどによる一時的なせん妄状態の時もあります。
重いうつ病の場合も、認知症を患っている場合もあります。
(私は専門家ではないので、わかりませんが)

時にはAさんは病気の重さに苦しんで、
周りの人達を傷つけはじめます。
その姿は、まるでハリネズミのようです。
病気による幻覚や錯覚が現れている場合、
本人にとっては本当にそう見えているといいます。
元気な人への嫉妬心もあるかもしれない。
でも元気な時を知っている身近な家族や友人はその姿に深く傷つきます。

そうした患者とどう関わればいいのか。
家族をどうサポートしていけばいいのか。
元気な頃を知っている通訳者は考えます。

どうしてあげるのが正解なのか答えはひとりひとり違います。
言葉の違いを解消するだけでは足りない。
話を聞くだけでも足りない。
医療者ではないので具体的な痛みを取り除くこともできない。
こんなとき通訳者は無力感に苛まれます。

病気が人を変えると頭では分かっていても
本当の意味で理解するのは難しいのだと思います。
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大正かしまし娘

2013-04-22 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
仕事のない日は父の老人保健施設へ行きます。

できたばかりでピカピカの施設は
まだ新建材の匂いがします。

居室にテレビを持ち込めないので、
居住者、訪問客、家族やスタッフなどで
トイレ前のテレビのある談話室はいつも賑わっています。

「老人保健施設」は介護保険制度で
介護保険が適用される方を対象にしています。
つまり要介護1から5の人で原則65歳以上
(病気によっては40歳から利用可能)が対象で、
リハビリテーションを中心とした「医療」サービスを提供し、
在宅復帰を目的としている施設です。

ここに大正生まれのかしまし娘がいます。
お一人はいつもきれいにお化粧をしてカバンをもって
お迎えが来るのを待っています。
もちろん、退院や転院の予定はありません。
でも、誰も来ないから居室に帰れとは誰もいいません。
「お疲れでしょうから椅子に座ったら」
「お気を付けて」と声をかけます。

たいていはあとの二人のかしまし娘が
「お迎えが来るまでちょっとおしゃべりしましょう」と話しかけ
談話室に誘い、大正話に花が咲きます。
「再婚するなら明治の人だけど、いないわ」とか、
「戦争中は大変だった」とか、
「あなたは昭和のどのへん(生まれ)?」とか。
若干同じ話をループしていることはあるけど、
他者とコミュニケーションをとるのが上手だなあといつも感心します。

私の祖母は大正生まれでしたが、
この世代は15年しかなくて人数は少ないけれど
戦中戦後ドラマチックな人生を送ってきた人が多い。
特に女性はおしゃれでかっこいい人が多い気がします。
祖母もハイカラで負けん気が強くてかっこいい女性でした。

昭和の真ん中くらいに生まれた私は
大正かしまし娘の話を聞いていると
まだまだ人生長いなあと思います。

先日も90代の方と新幹線で席が隣になり
世間話をしていましたが、
好奇心旺盛で世界中を旅している方でした。
また、彼女もかっこいい女性でした。

年上の方々とお話すると
年をとることがなんとなくワクワクすることに思えます。
年齢を重ねることに抗うのではなく、
うまくつきあいたいなとも思うのです。

かしまし娘を知らない方は こちら
ちなみに本物のかしまし娘さんは皆さん昭和の生まれです。

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僕を信じて

2013-04-15 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
英語以外の言語の通訳をしていると
利害の相反する二人(たとえば離婚裁判)の
通訳をしなければいけないことがあります。

法廷の通訳を受けるときには
必ず被疑者の名前を確認して
被疑者と個人的に知り合いではないか、
被疑者の関係者と知り合いではないか、
このケースに関連した通訳をしたことがないかなど
きちんと申告をした上で受任します。

でも、コミュニティ通訳は
まず通訳者があまりいないことと、
当事者が希望をした場合は、
とても難しいし苦しいですが
利益の相反する二人の通訳をすることもあります。
(もちろん関係者には許可を得た上ですが)

結婚届や子供の出生届け、
住宅の購入や新入学といった
うれしい手伝いをしてきた家族が突然破綻すると、
幸せだった頃とは違う表情の夫と妻に会うことになります。

妻は妻の主張をし、
夫は夫の主張をします。
そこには仲の良かった頃の思いではなく
お互いが譲らない自己主張の場になるのです。
それは日本人のケースでも同じ。
だけど外国人もしくは国際結婚の場合、
自分の言葉で直接主張するのが困難になります。
そこで通訳が必要になるのです。

通訳者は自分の考えを混ぜた通訳をしてはいけません。
妻から聞いたことは頭の中から消して、
夫の通訳にのぞまなければならない。
夫のいうことが正しいかどうかは
もちろん通訳が決めることではない。
だからそのまま通訳します。

千千に心は乱れ、
夫の「僕を信じて」の声が響くけど、
私は信じるとか信じないという立場ではなく
通訳なのだと説明をします。

コミュニティ通訳がただの「何もたさない、何も引かない」の
通訳ではないことは、やったことのある人ならわかるはず。
そこで守られなければいけないのは
言葉の壁で自分が主張する権利を奪われないこと。
そのために通訳者はあえて機械にならなければならないのです。




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病院嫌い

2013-04-08 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳をやっていても
自分が患者としていく病院は苦手です。

立場上、相談者には
「症状がでたらすぐに病院にいくこと」
「検査はこまめに受けること」
「手遅れになるのが一番大変」と
偉そうなことを言っていますが、
実はその本人が病院が嫌いなのです。

子供の頃、イヤほど病院に通った苦い思い出があり
アルコールの臭いや痛い注射に今でも拒否反応があります(誰でもか?)。

職場で一年に一度、強制的に健康診断を受けます。

先日の検査でバリウム検査がひっかかり、
胃カメラの指示が出ましたが、さあ、困った・・・。

胃カメラ検査は通訳として同席することはあっても
自分で受けたことがないのです。

実は15年ほど前、ある外国人の胃カメラに付き合ったことがあります。
当時はまだかなり太いホースみたいなものをのどの奥に突っ込んでいました。
(黒い色をしていたので蛇みたいに感じたのかも・・・あくまでイメージですが)

外国人患者さんは痛い痛いとわめくし、
そばで身体を抑えていたのですが、
あの、恐怖は忘れられません。

胃カメラより痛い検査はたぶんたくさんあるけれど、
その時の患者さんの恐怖の表情が忘れられずトラウマにさえなり、
本日に至っているわけです。

でも、会社の検査なので会社から早く再検査を受けろとの催促が来て
いよいよごまかすことができなくなって、
泣く泣く病院に行くことになりました。

胃カメラをやるなら、知っているところのほうがいいので、
2011年にMEDINTで病院実習(内視鏡検査)をやっていただいた
中島先生のクリニックに行きました。

結論から言うと15年前に見た胃カメラとは大違い。
まず、鼻に軽く麻酔をして、鼻からカメラを入れます。
また、点滴で意識がぼーっとしている(寝ているのではない)間に
検査が終わっていました。

幸い特に大きな疾患は見つからなかったのですが、
これなら毎年ヘロヘロになるバリウム検査より楽かも・・・とも思いました。

怖がらずに病院に行かなくっちゃ、ね。
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医療言語分科会

2013-04-01 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
3月31日、今年度最後の医療言語分科会を開催しました。

MEDINT会員の方を対象にしたものですが、
英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語、タイ語の
医療専門のネイティブの先生に少人数クラスで
医療言語を学ぶクラスです。

医療の言語に限定した中上級のクラスがないので、
ないなら作ろうとMEDINT発足当時から地道に続けてきましたが、
紆余曲折を経て、良い先生方との出会いがあり、
やっと5カ国後の安定したクラス運営ができるようになりました。

ただ、問題は資金面です。
英語以外の言語クラスは少人数のため大きな赤字です。
助成金をつぎ込んでなんとかここまでやってきましたが、
今年度はまったく助成金の目処が立っていません。
先生方へのお支払いができなくなると
このクラスは休止になります。

今、会員数を増やすことが命題なのですが、
職業化されていない現段階で、
お金を払って勉強できる人はまだまだ少数です。

広報など展開していかなければいけないのですが、
個人的に介護などもはじまり多忙を極めており、
MEDINTへ割ける時間が少しずつ減りつつあります。
10年かけてスタッフを増やしたいと思ってきましたが
勇気をもって声をかけても
断られると失恋したみたいに落ち込んで
次に声をかけるのをためらってしまうというダメダメぶりがアダになり
なかなかスタッフも増えていない状態です。

滋賀県や静岡県の通訳さんたちに偉そうなことを言いましたが、
やはり運営は大変です。

ほかにもクラスを提供する場所が出てきたので、
今年度はこれからのMEDINTの方針を考えていかなければいけない年になりました。

ただ、言語分科会に参加してくださって、
「これからも是非」という声を聞くと「がんばろう」という気になります。

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スペイン語分科会で
はじめて「ものもらい(めばちこ)」と「結膜炎」の違いに気づきました。
今までずっと同じものだと思っていました。
やっぱり、経験だけでやってるとだめですね。
日々学習です。これが本番じゃなくてよかった(涙)


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