MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

ナースのナース

2004-11-30 15:29:12 | 通訳者のつぶやき
11月の講義で、有馬さんが看護師の仕事についてレクチャーしてくださいました。そのとき感じたのは、看護師の仕事は本当に多岐に渡り、医師よりも患者に近い存在だということです。「患者さんのすべてを知っておきたいと思うのが看護師の習性です」とおっしゃる有馬さんの言葉がそれを物語っています。

通訳で同行すると、忙しい医師にかわって看護師が様々な場面でフォローしてくださいます。また、ゆっくり話を聞いてくださるので、患者も通訳もリラックスして話せます。こうした温かい気持ちは言葉の壁があったり、日本ではじめて病院に行く人には本当にありがたく感じます。しかしそれも、患者一人ひとりにあったケアをするための患者情報の収集と考えれば納得いきます。

朝日新聞朝刊(2004.11.24)にケアする立場の看護師が、患者の死や毎日の激務などから「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になるという記事が掲載されていました。記事では、そうしたナースをケアするための「ナースのナース」という専門家が紹介されています。看護師というケアの専門家だからこそ、自分自身のケアは後回しにならざるを得なく、悩みを抱え込んでしまったり、無理を重ねてしまうということを記事は伝えています。

医療通訳者の間でも、受診サポートもしくは支援通訳をしている人でそのフォロー体制がない場合バーンアウトしてしまうという話はよく議論にあがりますが、看護師のような専門家の方々でも同じような問題を抱えていると知って、どんな職業にもコーディネーターやスーパーバイザーのような現場から少し離れて相談する場所が必要なのだと痛感します。


やさしい日本語通訳

2004-11-08 15:28:24 | 通訳者のつぶやき
A病院からブラジル人が診察にきているから通訳に来て欲しいという電話がかかってきました。優秀なポルトガル語の通訳さんに行っていただいたのですが、帰ってきてから通訳さんがぽつりとこぼしました。「この患者さん、来日してから15年で十分日本語の上手な人でしたよ。ただ、病院の人の話す日本語が難しかったので、僕はポルトガル語じゃなくって優しい日本語で通訳しました。日本語で日本語の通訳をするのなんて初めてでしたよ(笑)」

実はこれ、良くあることなのです。一見して外国人と見える人が来たと、その人は日本語が上手なのに、下手な英語をしゃべってみたり、怖がってみたり(?)という過剰反応をする人が少なからずいます。

ある留学生にいわれました。「Aさんの日本語はわかるけど、Bさんの日本語はわからない。」確かに私たちが英語を聞くときでも、とてもわかりやすい英語と全然聞き取れない英語があるような気がしませんか?わかりやすい英語はあなたのレベルに相手が合わせて話してくれているのかもしれません。ゆっくり標準語でわかりやすい言葉を選んで話せば通じるケースは多いのです。なんでも「通訳さ~ん」じゃなくて、相手に合わせて単語を選び、相手の気持ちになって話すことが大切なのだと思います。