MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

労災隠し

2009-01-28 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳をしていると労災隠しに気づくことがあります。

一番ひどいケースは、
「外国人には労災はない」というものですが、
それ以外にも
「アルバイト(またはパート)だから労災はない」とか、
「雇用保険料のように保険料を天引きしていないから、あなたは労災には加入していないのだ」とか、
「短期の雇用契約でまだ正式でないから社員として登録されていなかった」とか、
いろいろなことをいって労災適応をさせないでおこうとする会社も残念ながらあります。

15年前に扱ったケースですが、
安全装置のないプレス機で指を落とす事故がありました。
日本に来てまだ数日の外国人でした。
ただ、よく話を聞いてみると、同じプレス機で指を落として
すでに帰国した人たちが数人いたのだということです。
その頃は今と同じ未曾有の円高で、
日本円でそれなりの補償額を受け取って帰国した人々でした。
彼らは労災扱いせず、指を失ったのと引き換えの解決金で帰国していたのです。
なので労働基準監督署が調査に入り改善されることもなく、
次の慣れていない労働者がまた事故に遭うということが繰り返されていたようです。

労災でも、会社側と話し合いをして、
労災扱いせず会社が面倒を見てくれるというケースもあります。
治療費、休業補償費だけでなく障害補償まできちんと対応してくれれば
患者としては特に問題ありません。
会社に恩義があったり、他の家族が働いていたりする場合、
また怪我の程度が軽くてたいしたことのない場合、
労災として申告しないということもあります。

これが、解雇になったとたん、実は・・・というケースが最近増えているのです。
ずっと世話になると思っていたから労災申請せず我慢したのに、
解雇されるなら労災申請するぞというものです。
時間がたっていたり、一度他の診断書が出ている場合、
医師との通訳も大変です。
本人の痛みや状況を詳しく説明するだけでなく、
その痛みと事故の因果関係を説明しなければなりません。
また、事故から時間がたっていると、他の原因を疑われることもあります。

労災そのものについて理解していない外国人は少なくありません。
病院だけでなく通訳者が最低限のことを知っていれば、
患者の正しい判断につながるのにと思うことがあります。

労災を申請するかどうかは医師や患者の判断ですが、
労災隠しを知ってしまった通訳者の守秘義務と倫理の問題は、
どうしたらいいでしょうか?

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国民健康保険料のこと

2009-01-21 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
解雇で失うものは仕事だけではありません。

社宅に入っていた人は家を失いますし、
借金をしていた人は、返済計画通り返せなくなります。
外国人の場合、住宅やビザの保証人が会社ということが少なくないため、
あたらしい保証人もさがさなければいけません。

でも、一番影響が大きいのは社会保険を失うことだと思います。
日本人の中には、外国人=保険未加入という思っている人が少なくないのですが、
一部の人を除き、公的保険に加入することは可能です。
最近は派遣会社に勤める人でも社会保険に加入してます。

ご存知のように社会保険は「健康保険」と「厚生年金」がセットになっていて、
収入に応じて保険料が決まっており、
半額を会社が負担してくれ、給与から天引きされます。
社会保険料控除も会社が年末調整でしてくれます。
扶養家族が増えても保険料は変わらないし、
4日以上病気や怪我で休むと休業補償もあります。

この社会保険が解雇とともになくなるのです。
そして国民健康保険、国民年金に加入することになります。

この国民健康保険の保険料についてどれくらいの方がご存知でしょうか?
すんでいる市町村によって計算方法が違いますが、
本来、給与所得者は社会保険に入っていることが前提なので、
多くの場所ではその計算式を給与所得者にあてはめると、
手取りに比べて高額に感じる金額が提示されます。
また、国民健康保険料は前年度の所得に応じて計算されるため、
解雇されていてもその金額を提示されて驚きます。
もちろん、実態に応じて減額の請求はできますが、
その制度を知らない人も少なくありません。

また、国民健康保険は「所得割」(収入に応じた支払い分)だけでなく、
家族の数が多ければ数に応じて保険料が増える市町村もあります。

社会保険を辞めたとたん、
国民健康保険に加入し、
天引きでないため、その支払い金額に驚くという人が少なくありません。

アメリカでは「保険の切れ目が命の切れ目」といわれますが、
日本には幸いちょっと疲弊してきていますが公的保険制度があります。
これで救われた人は少なくありません。
だから相談にこられる方には是非入ってくださいとすすめるのですが、
人によっては国保保険料が高すぎで難しいケースがあるのです。
その場合は、分割払いをお願いしたり、
毎月一定額を払うリボ払いのような方式をとったり、
少しだけ払って仮の保険証をだしてもらうとか
その人に応じて支払いを交渉しますが、
それでも大変な方もいます。

素人ですが、
国民健康保険料の算定方法を
もう少し実態にあったものにして欲しいなとずっと前から感じています。
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不安な日々

2009-01-14 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
★先週末、第18回びわ湖国際医療フォーラムがありました。
12演題(うち6題が在住外国人関連)の発表があり、
様々な立場の方々の意見を聞くことができました。
私も「ネイティブ通訳者の重要性」というテーマで発表しました。
発表演題の中で特に興味深かったのは
検査現場の会話集を手がけられた診療放射線技師の方の
現場の説明と訳文の違いというところです。

★たしかに検査現場では、
「足の下に枕をいれますね」という言葉を使います。
ただ、これを文字化すると、
足の下なのか、足の裏なのか、そもそも膝の裏でないのか・・・と
文字ではどう訳していいのかわからなくなります。
言葉はその状況を共通認識とした上で発するものですから、
そこに翻訳文を使うのは、なかなか難しいかもしれませんね。
医療通訳の場合、正確性はもちろんですが相手に伝わることがより重要です。
そのために専門用語の羅列ではなく、伝わる言葉で解読することもあります。

★日曜日、MEDINTで5月に引き続きローチェ多恵子さんに
通訳トレーニングをしていただきました。
その中に「サマリー(要約)」トレーニングがありました。
それは「足すのでも引くのでもなく、要約する」という技術です。
大切なものを残して必要のないものは除いて伝える。
確かにいい澱みや不確実・非鮮明な情報に関しては、
伝えられると逆に混乱してしまうことがあります。
その場合、通訳者は要約をします。
ただし、この要約は医療知識を持ち、
正しい判断をできる医療通訳者にしかできません。
医療通訳初心者が勝手に行うことのできるものではありません。
ここでも、伝える技術、通じるコミュニケーションについて教えられました。

★ところで、日系労働者の解雇の現実はたぶん皆さんが想像している以上です。
年末年始にかけてひどいデマが日本中を飛び交いました。
「一度日本から離れると在職証明書がないと再入国できない」とか
「仕事のない外国人に再入国許可を出さない」とか。
年末年始は離れた家族や友人と会ったり連絡したりする上に
公的な窓口はしまっていて確認ができません。
なので、すごい勢いでこのうわさが駆け巡りました。
もちろん入国管理局に連絡してそのような変更がないことは確認しましたが、
常に雇用の調整弁として使われてきた人々は、
景気の悪化の影響が自分たちにかかってくることを経験上知っています。
今回の景気の悪化は男性労働者にも及んでいるためメディアも取り上げますが、
外国人労働者や障害をもつ労働者、女性や高齢者はこうした事態のずっと前から不安を抱きつづけているのです。

★ほぼ毎日定額給付金はいつでるかという質問を受けますが、
去年までは「taroだけが知っている」と答えていたのですが、
最近は「taroもわからない」と答えています。
日本の政治はどこに行くのでしょう。
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医療現場の思い

2009-01-07 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
愛知県立大学の「医療分野ポルトガル語スペイン語講座」で
「医療通訳者の心得とセルフケア~事例検討を通じて」をテーマに
お話をさせてもらいました。

http://cer.aichi-pu.ac.jp/com-medico/index.html

以前にもご紹介したことがありますが、
医療現場のコミュニケーション技術の取得を目的とした講座で、
参加者の多くは通訳者ではなく医療従事者です。
初級のスペイン語やポルトガル語を学びながら、
在住外国人を取り巻く状況や通訳の基礎についても学びます。

私は医療通訳として知っておきたいことや
セルフケアについて経験を交えてお話させてもらいました。

終了後、受講者にショートレポートを出していただいたのですが、
必要に迫られて講座を受講している人の多さに驚きました。
皆さん書いてある内容がとても具体的で、
まず、目の前の外国人患者にどう対応したらよいか知りたい
という思いがひしひしと伝わってきます。

愛知県は中南米移住者の集住地区のひとつです。
当然ですが、医療現場には日本語が堪能でない
スペイン語圏、ポルトガル語患者がやってきます。
もちろん、日本の病院ですから日本語だけで通しても悪くはありません。
でも、そんな心細い中で母語で挨拶してくれたり、
話しかけてもらうだけで、とてもリラックスした気分になるのです。
「Buenos Dias」とか「hola」とか言われるだけで、
自分(外国人)はこの病院に受け入れられたという気がするから不思議です。

医療従事者の方には通訳者ほどの語学力は必要ありません。
心を開いて相手を理解するために
英語ではない言葉を学ぼうとすることはとてもいいことだと思います。

この講座が3年の間にいい成果を生み出して、
他の地域にも波及することを願ってやみません。
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新年のご挨拶

2009-01-01 18:19:26 | 通訳者のつぶやき
旧年中はお世話になりました。
今年は、外国人労働者にとっては厳しい年になると思います。
調子のよいときだけの多文化共生でなく、
本当の日本社会の真価が問われます。
MEDINTはもう一度原点に戻って、医療通訳の今と未来を
医療通訳者の視点で考えてきます。
2月には医療通訳士協議会の設立総会も予定されています。

今年もよろしくお願いします。
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