MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

真夜中の通訳

2010-10-29 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
救急病院の方から
「24時間対応できる電話医療通訳ってないの?」
と聞かれます。

たしかに、
病気や事故は24時間対応であり、
これからの季節は夜間に発症するケースも多くなると思います。

これについては
もしかしたら業者で対応しているところがあるかもしれませんが、
私の知っている限りでは「ない」と答えています。

で、「医療機関が24時間なのに医療通訳が24時間に対応していないのはなぜ?」

確かにそうですね。

たとえば通訳に携帯電話を持たせて、
必要な時だけ自宅でも通訳してもらえばいい。
それに対して通訳時間分お金を払えばいいでしょという意見があります。

その是非はここでは議論しませんが、
ではその陰で通訳がどのような準備をしているかについて
少しお話ししておきたいと思います。

個人差があると思いますので、
私がもしこのケースを受けたと想定してお話しします。



A病院のBさんから電話で、
「外国人患者のCさんが来週手術をする。
術後に急変するかもしれない大変な手術だから、
手術後24時間通訳の待機が必要。
家族は手術後24時間病院に詰めているので、
通訳は病院にこなくてもいいけど家で待機していてほしい」
と頼まれたとします。

Bさんとしては
通訳をお願いする可能性はとても低いので、
そんなに待っていなくてもいいし、
気楽に受けてくださいねという感じです。

でも、もし受けるとしたら通訳側は
依頼がある、なしにかかわらず準備をするのです。

まず、

手術に関する単語はもちろんのこと、
その後に起こる可能性のある症状についても調べておきます。
どんな言葉が出てきても通訳できるようにノートを作ります。

それから常にノート、メモ、辞書を手元に置いておきます。

まず、その日はお酒は飲みません。
外食や外出も控えます。

夜中に電話がかかってきては家族を起こすので離れた部屋で寝ます。
いえ、たぶん寝ません。

私は眠りがとても深くて、
夜中に起こされてもすぐに反応できる自信がないので、
たぶん寝ないと思います。

通訳の機会が100回に1回であっても、
その1回があるならばプロとしては準備をしなければいけません。
そしてその1回には報酬はありますが、
待機の99回には報酬がない・・・というのも困ります。

依頼する側はちょっと頼むという気楽な気持ちでも、
受ける側は万全の態勢をとっているのです。

だから、もし24時間体制をとるとしても、
きちんと当直として事務所で電話をうける体制でなければ
私はできないなあ・・・と思います。

まあ、私は1日10時間睡眠が理想のグータラ人間なので、
睡眠時間の短い人や熟睡しない人なら大丈夫かもしれないという
個人差はありますけど。
医療通訳倫理から考えれば、
私のようなタイプの人間は夜間通訳は引き受けるべきではないのでしょうね。






コメント (4)
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シンポジウム終了しました

2010-10-24 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
10月24日(日)「メディカルツーリズムと医療通訳を考えるみんなのシンポジウム」が
西宮市大学交流センターで開催されました。

今まで「外国人医師」「手話通訳」「医療人類学」「終末期医療」など
どちらかといえば医療通訳の中でも先進的なテーマを取り上げてきましたが、
今回はもっともホットなメディカルツーリズムをとりあげたので
医療通訳研究会(MEDINT)主催のシンポジウムとしては
はじめて90名を超える方々にご参加いただき、
盛況のうちに終了することができました。

座長、シンポジストの皆様、
ご参加いただいた皆様、
スタッフの方々、
本当にありがとうございました。

詳細については
本日の朝日新聞朝刊の神戸版に掲載されています。

http://mytown.asahi.com/hyogo/news.php?k_id=29000001010260001

バンコク病院院長のソムアッツ先生のお話をはじめ、
どのお話もはじめて聞くことが多く、
是非日本のメディカルツーリズムに関係される方全員に聞いていただきたい内容でした。
ですので、近日中に予算が取れれば抄録を発行したいと考えています。
ご期待ください。

ただ、今回は準備も大変で身体はくたくたに疲れたのですが、
シンポジストの先生はじめ、皆さんから
頑張れというたくさんのエネルギーをいただきました。

参加されたみなさん、
感想をコメント欄にいただければうれしいです。
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佐賀県に行ってきました

2010-10-15 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
すっかり秋らしくなってきましたね。
シンポジウムを週末に控えて、忙しくなってきました。

MEDINTをはじめてクラスやシンポジウムを開催するたびに
参加者は来てくれるか、講師は来てくれるか、
きちんと会場はとれているか・・・など心配になり、
夢に出てきて眠れなくなります。
もうかなり慣れましたが、
それでも今回のシンポジウムは規模が大きくて
予想以上にご参加をいただくので、
トラブルが起きず成功するまではゆっくりは眠れない日が続きます。

そんな中、14日に佐賀県国際交流協会の主催する医療通訳講座に参加してきました。
当日の様子はこちら http://spira.sagafan.jp/e283244.html

国際交流協会のKさんはとても熱心な方で、
集住地域でない場所でこれだけ充実した医療通訳講座を開催するには
予算どりも含めて大変なご苦労があったと思われます。
通訳の技法だけでも3回あり、
地元の病院のMSWさんや医師、大学教授など様々な関係者を巻き込んで、
ロールプレイも含めて計9回の講座は、
たぶん日本の国際交流協会レベルでは非常に高いものだと思いました。

参加者の方は英語と中国語が中心で、
医療通訳は初心者の方が多かったのですが、
通訳訓練はすでに受けていらっしゃる方が多く
ワークをやっても勘のいい方が多かった印象を受けました。

集住地区でない場所でこうした講座に参加すると
いつも感じることなのですが、
外国人が少ないからと言って医療通訳が必要ないわけではありません。
一人でも医療通訳の必要な人がいる場所には
医療通訳の存在が不可欠なのです。
見えにくい問題であっても問題がないわけではない。
でも、通訳登録者の方々は活躍の場面が少なくてモチベーションを保つのが大変です。

剛腕投手が登板する日の外野守備みたいなもので、
だからといって球が飛んでこないわけではない。
常にウオーミングアップをして備えなければならない。
(私は球場でそういう外野手を見ているのが結構好きです)

だから医療通訳の使命や存在意義についてのお話をします。
そこに一人でも外国人がいる限り、
この医療通訳者は必要なのです。
モチベーションを保ち続ける活動が必要となってきます。
それは集住地区よりも大変なことだと私は思います。

佐賀県はそんなに外国人数が多い県でもありませんが、
少なくとも参加してくださった方々の情熱は本物だと感じました。
各地でこのような動きが活発化すればいいなと思います。

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こころの支援協議会に参加して

2010-10-08 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
9月25日、26日に多文化間精神医学ワークショップが
東京の明治学院大学で開催されました。

多文化間精神医学会
HPによると海外駐在員やその家族の適応問題、帰国子女の再適応、
日本国内における外国人労働者の適応問題、外国人花嫁問題、
国家間・民族間の紛争、それに伴う難民問題、宗教・民族問題などを
多方面から専門的に探求するために
1993年7月に設立されたとあります。

3月の福島の学会に続き2度目の参加ですが、
さまざまな専門家の方々に出会えるので、
非常に学びの多い場ですし、
私が医療通訳の3大課題だと思っている
増え続ける外国人移住労働者の心の問題にも
取り組んでいる学会です。

25日は外国人のこどものこころを中心に
スクールカウンセラーや当事者などの発表がありました。

特に当事者としてお話しされたベトナム人女性の話が心に響きました。
さまざまな苦労をしてこられたと思うのですが、
きちんとキャリアを積み上げてきたと同時に、
家族の中できちんと母語を伝えてきた親御さんも素晴らしい方だろうと思いました。

言葉と心は特に子供の育ちの場面ではつながっていると思います。
時々、子供が親に言いたいことが母語で表現できない場面にであったり、
子供の日本語がわからず親がいらだつ場面に出会うことがあります。
言葉は人を形づくる上で大きな役割を担っています。

26日のこころの支援協議会では、
残念ながら参加者は少なかったのですが、
精神科医の意見を直接聞くことができて、
私にとっては非常に貴重な体験でした。

医療通訳は言葉をつなぐだけでなく
文化や制度もつなぎます。
他業種の方々との連携や情報交換が大切だと痛感しました。


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10月24日シンポジウムやります

2010-10-01 12:00:26 | 通訳者のつぶやき
MEDINTでは下記のシンポジウムを開催します。
メディカルツーリズム礼讃だけではなく、
文化や言葉の問題はどうなるのか、
日本の中に住んでいる在住外国人のケアはどうなっているのかという
広い視点から医療通訳について考えていきます。
是非ご参加ください。

「メディカルツーリズムと医療通訳を考えるみんなのシンポジウム」

日時:2010年10月24日(日)午後1時30分~午後4時30分(開場午後1時)
場所:西宮市大学交流センター大会議室(阪急西宮北口下車 ACTA東館6F)
定員:120名(要申込)
資料代:1000円  (医療通訳研究会(MEDINT)2010年度会員 無料)
主催:医療通訳研究会(MEDINT)
共催:大阪大学グローバルCOEプログラム「在日外国人を取り巻くコンフリクトを緩和するシステム構築」班
(研究代表者:中村安秀氏)

プログラム
基調講演「タイにおけるメディカルツーリズムの現状」
座長:中村安秀氏 大阪大学大学院人間科学研究科 国際協力学・教授
基調講演者:ソムアッツ・ウォンコムトォン氏 タイ王国・バンコク病院院長
(逐次通訳 竹迫和美氏)

提案1 「中国人患者の医療に対する考え方と医療行動」
 田中健一氏 北京天衛診療所牙科医師(北京在住)
提案2 「日本における医療通訳資源の活用について」
 飯田奈美子氏 多言語コミュニティ通訳ネットワーク共同代表 中国語通訳

シンポジウム 「日本におけるメディカルツーリズムと医療通訳を考える」
座長:松尾信昭氏 神戸夙川学院大学観光文化学部教授
 
申し込み方法
申し込み方法:メールかFAXで必要事項をご記入の上お申し込みください。
必要事項:所属先・名前・ご連絡先(ご住所・メールアドレスかFAX)
申し込み送付先:医療通訳研究会(MEDINT) medint2005@yahoo.co.jp  FAX:078-230-3080

このシンポジウムは(公財)兵庫県国際交流協会の国際交流事業助成制度を受けています。
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