MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

日本渡航医学会ミニシンポジウムに参加して

2015-07-30 15:28:08 | 通訳者のつぶやき
7月25日~26日 新宿区の東京女子医大で
日本渡航医学会学術集会に参加してきました。

一日目の午後に医療通訳に関するシンポジウムが開催されました。

ミニシンポジウム
「言葉と文化の壁をこえる国際医療交流:医療通訳士が活躍できる環境をどう創るのか?」

座長
中村 安秀(大阪大学大学院)
南谷かおり(りんくう総合医療センター)

シンポジスト
谷村 忠幸(厚生労働省)
前田 秀雄(東京都福祉保健局)
岡村世里奈(国際医療福祉大学)
村松 紀子(医療通訳研究会(MEDINT))
エレーラ・ルルデス(日本赤十字九州国際看護大学)

当日のプログラムは こちら

そこで、これからの医療通訳の制度化にむけての意見発表があったのですが、
やはりこの1年ですごくスピードが速くなっている気がします。

当日の私の発表については、日本渡航医学会の学会誌で全文掲載する予定ですが、
かいつまんで要点だけ、ここに掲載します。
(興味のある方は秋に発行される学会誌をご覧ください)

1:医療通訳の可視化の必要性
 家で妻や嫁が介護をしていた時代、看護や介護は専門職とは呼ばれていませんでした。
しかし、第3者が行うようになった時、それは看護師や介護士といった医療にかかわる専門職になりました。
医療通訳も見えない誰かがやっているうちは専門職とは呼ばれません、医療通訳者の可視化を行うためにも医療通訳の認証はすぐにでも必要です。
よく、医療通訳者は日本に何人くらいいるのかと聞かれます。答えはわかりません。
誰が医療通訳者か、医療通訳者はどこにいるのか、医療通訳はどんな仕事なのかなども含めて、把握をする必要があると考えます。

2:医療通訳の多様性を大切にする
今、医療通訳者には「医療」「言語」「福祉」などのバックグラウンドを持った人たちが、
プラスアルファの研修を受けたり、勉強をしたりして、活動しています。
また、外国ネイティブで日本語を学んだ人、日本語ネイティブで外国語を学んだ人、
外国籍の親に育てられたけど日本の学校で教育を受けた2世など様々な人たちがいます。
誰が医療通訳にふさわしいかは私たちが決めるのではありません。
患者は心の内を話したいときは同じ言葉の通訳者を選び、
医療者との調整や周りの人に秘密にしたいときはコミュニティから遠い日本語ネイティブの通訳者を選びます。
性別も年齢も、医療通訳者になった経緯も、いろんな人がいたほうが選択可能です。
医療通訳者にも得意不得意の分野があります。医療者も医療通訳者が選べれば、
その時に応じて、専門用語や日本の医療システムに精通した人、
横にいるだけで血圧が下がるくらいの安心できる人まで、シーンによって選べるでしょう。
英語以外の言語については、通訳者を専門職として育てていく仕組みが必要です。
ただ、試験をやるだけでは、こうした少数言語の通訳者に医療通訳への参入をしてもらえないのが現状です。
医療通訳の需要と供給に大きな差があることを自覚して日本の医療通訳も制度化を考えなければ、公平な資源の提供を行うことができません。

3:医療通訳者に必要な能力
4:医療通訳者における専門職としての倫理
5:医療通訳の報酬

制度化に向けては医療通訳者の声も聞いて欲しい。
それが今の一番大きな願いです。
 



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ニワトリのお話

2015-07-23 09:42:39 | 通訳者のつぶやき
小学1年生のとき暗証した教科書の詩を今でも鮮明に覚えています。

私のうろ覚えで書いてみると・・・こんなお話です。

*******************************

小さい白いニワトリはみんなにむかって言いました。

この麦誰が蒔きますか?

豚は嫌だといいました。
猫も嫌だといいました。
犬も嫌だといいました。
小さい白いにわとりは一人で麦を蒔きました。



このあと、同じ調子でニワトリはひとりで
麦の種を蒔いた後、刈り取りして、粉を挽き、
粉をこねて、パンを焼いていきます。

********************************

最後に、
小さい白いニワトリはみんなにむかって
「このパン誰が食べますか?」
と聞いて、みんなは「食べる」と言います。

そこでお話はおしまい。

小学1年生ながら、このあとのニワトリの行動がずっと気になって今に至ります。

この詩は
ウクライナの民話とのことです。 こちら参照


医療通訳の活動をしていて、
一緒に学会や医師会などに声を上げていきましょうと誘うと
「儲かるようになったら」
「専門職として認められるようになったら」と
言われることも少なくありません。

忙しいのに
余計な労力を使うのは嫌だし、
活動にはもちろんお金がかかるし、
もう少し医療通訳がメジャーになったら関わりたい、
それまで成り行きをみたいというのが、
たぶん普通の考え方なのだと思います。

だから、今医療通訳の制度化に向けて活動する
医療通訳者が極めて少ない状況で、
医師や研究者や行政の人など声の大きい人たちにによって
医療通訳制度を作られてしまっても仕方がないとも思います。

先日の医療通訳士協議会の分科会で、
手話通訳の方が、
職業病である「頸肩腕症候群」があるために、
一人の通訳者を酷使してしまうと潰れてしまう。
潰れないために仲間を増やすんだと言っていました。

自分を守るために仲間を育てるのだと。

医療通訳者も少数言語や通訳者の少ない地域では
少数の通訳者がたくさんの件数の通訳を行っています。
勉強する暇もないし、食べていけないから他の仕事も掛け持ちする。

昔、ある通訳者が
「医療通訳に専念できたら、どんなにいいだろう」と言っていました。
今の状況では、医療通訳は専門職とは言えません。

だから、一日も早く医療通訳を専門職として自立させ、
職能団体として活動していかなければと思っています。

様子を見ているだけでなくて
医療通訳者も自ら動かなければ、
ニワトリのパンも焼けず、社会も変わらない。
なによりも日本語のできない患者さんはそのまま放置されてしまいます。

今週末は日本渡航医学会学術総会が東京女子医大で開催されます。
土曜日のお昼にはインバウンド委員会のシンポジウムで
医療通訳についての議論を行います。
東京近辺の方は是非ご参加ください。
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精神科と医療通訳

2015-07-14 15:01:58 | 通訳者のつぶやき
7月4日~5日 日本外来精神医学会 に参加しました。
大会長が多文化間精神医学会で四谷ゆいクリニックの阿部裕先生だったので、
外国人医療や医療通訳に関するシンポジウムもいくつか開催され
1日目に「身近な多文化外来の実践」
2日目に「ラテンアメリカシンポジウム」と「医療通訳と精神保健専門家との連携」など
多彩な内容で実施されました。

私は2日目の連携のシンポジウムにシンポジストとして参加しました。

普通の精神科の学会においては
いつも外国人医療に関するシンポジウムは
参加者が少なく閑散としています。
今回も関心の高い先生は多くはありませんでした。

ただ、注目度は低くても
関心を持ってくださる方はいますし、
外国人患者はすでに少数者とはいえない時代がきています。
だから、ずっと声を上げ続けることが必要なのです。

「精神科の医療通訳は他の分野と違う」
これは多くの医療通訳者が共有する認識だと思います。

まず、大きな違いは検査値や画像での診断ではなく
患者や家族の言葉で表現される診断が多いこと。

診断がついても自分が病気であるという自覚がない、もしくは「病識」を拒否すること。

その人の生まれ育った文化においては「精神科」に偏見がつきまとうこともあります。

たとえばスペイン語圏の通訳をしていると
服薬による治療が明らかに必要だと思われる人でも
「精神科」ではなく「カウンセリング」を希望する人も少なくありません。
「私は困っているけど、精神病じゃない」といいます。
福祉の立場からカウンセリングでは診断名がつかない、手帳がでないといっても
なかなか理解してくれません。
一番つらいのは本人だと思うと切なく感じます。

また、見た目で病気がわかりにくい。
でも病気なので、元気なときより本人の説明する力が落ちる。
あれやこれやで本当に難しいと感じます。

通訳者にのみ感じられる「違和感」のようなものがあると思います。
しかし、通訳場面で通訳者の意見を差し挟むのは倫理違反です。

シンポジウムで主張したのは、
精神科こそ、医療通訳者をチーム医療の中にいれてほしいということです。

愛知県の通訳者には
自力で精神保健福祉士の資格を取った人もいます。

今後、精神科と医療通訳の連携は必須の時代がくると思います。



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医療通訳資格制度に関するフォーラム

2015-07-07 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
多文化医療サービス研究会(RASC)さんが主催されたフォーラムが
7月4日(土)、東京で開催されました。

 ご案内については こちら をご覧ください。

「医療通訳資格制度の是非を問う」という、
ある意味挑戦的なテーマだったのですが、
本当に是非について網羅された
近年では指折りの内容の濃いフォーラムでした。

私はちょうど日本外来精神医療学会で東京に来ていたのですが、
学会の公開講演をサボって参加した甲斐がありました!
(学会については来週報告します)

壇上には賛成2名、反対2名で
医師と通訳者がそれぞれ1名づつでした。
反対の方もどちらかといえば「慎重」であるという論調でしたが、
諸外国の事例や現在の厚生労働省の動きなどを加味した上で、
様々な角度から資格制度を論じていました。

私は立場上、医療通訳の資格化および認定制度には賛成の立場です。

たとえば「介護福祉士」
自宅で介護していたときは
配偶者や嫁が介護していて、それは「職業」とは考えられていませんでした。
介護を第3者がやる場合、そこには専門職としての専門性と報酬が発生します。
介護の社会化には必要不可欠なことであったと思います。

医療通訳も善意の人々によって支えられ
公的な社会資源というよりは個人や地域のネットワークに支えられているのが現状です。
そこには地域格差やネットワークにつながれない人々がいることも忘れてはいけません。
誰でも利用できる「公正」な制度を作るためには、
誰が専門職であるのかを明示する必要があります。
また、その専門職の人々は、資格や認証の上に胡坐をかくのではなく、
自分たちでその専門性を社会に認めてもらうような活動をしていく義務が発生します。
そういう意味では、私は認証はゴールではなく、スタートだと認識しています。
だから語学能力を測る資格ではなく、実践者を創る資格だと思っています。

その辺の議論は
7月18日(土)大阪で開催される
医療通訳士協議会(JAMI)の総会で行います。

ご案内は こちら

是非、ご参加ください。





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