MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

病院の言葉をわかりやすく

2008-10-22 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
昨日のニュースで、国立国語研究所が発表した
「病院の言葉」を分かりやすくする提案の中間報告について
報じられていました。

http://www.kokken.go.jp/byoin/teian/

確かに、医療通訳を始めたころ、
ここに出てくる「腫瘍マーカー」や「寛解(かんかい)」、「QOL]などは
聞いたことがありませんでした。
すべて診察室ではじめて聞いて、医師に説明してもらって
はじめて知った単語です。
説明にも新しい概念なので、
単語ひとつでは表現しきれないもどかしさもあります。

「クリニカルパス」は診察室ででる単語ではなかったので、
なんとなく想像はしていましたが、
正確に知ったのは今回が初めてです。
「最低限のガイドライン」か「患者向けのマニュアル」みたいなものかなと
思っていました。
正解は「退院までの道筋を示した表」だったので、
理解率は20%くらいで、理解は正確ではありませんでした。

医療者の方が「パス」「パス」いうので、
何をパス(通過?)するのかな・・・と(笑)。
それは冗談ですが。

以前から会員のKさんにこのお話は伺っていたのですが、
HPにもアップされてこれから意見を募集するとのことで、
できれば医療通訳者の声も届けられないかと思っています。

https://www.kokken.go.jp/byoin/teian/enquete/

委員会には立教大学大学院教授の鳥飼 玖美子先生が
入っておられるので、通訳に対しての配慮もあるのかなと感じました。

是非、皆さんも一度のぞいてみてください。
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子どもの通訳

2008-10-15 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
A産婦人科から電話がかかってきました。
電話でもいいからという通訳依頼です。

病気の問診ではなく、産褥指導だったので、
手元のパンフレットを見ながら、
通訳していきました。

病院「助かりました。
   実はこの方には通訳がついていたのですが・・・。」
通訳「その通訳はどうされたのですか?」
病院「通訳は13歳の男の子なのです。
   患者の子どもさんなんですが、
   さすがに13歳の男の子に避妊やらおりものやらの通訳を依頼できなくて」
通訳「当たり前です!というかそのことに気づいてくださってよかったです。」

私たち通訳者はどんな言葉も訳すように訓練されます。
司法や医療といったコミュニティ通訳の中には、
日常の中では使わないような単語や用語もでてきますし
普段はあまり口にしない性的な単語や身体の名称もあります。
そのたびに照れたり恥ずかしがったりしていては仕事になりません。
もちろん泥沼離婚の裁判や虐待の聞き取りなどは
口にするのもはばかられるような言葉を訳さねばならないこともあります。
でも、それは職業としてのものですから、
第3者としての目で平静を保つように自分に言い聞かせます。
(本当はすごく動揺しているんですけど)

ただ通訳者ではなく家族や知り合いについてきた子どもが、
産褥指導の通訳というのはどうなんだろうと思うと、
わたしならいやだなあと思います。
男の子だけでなく女の子でも
母親や大人の性的な姿や身体のことは、あまり知りたくないと思うでしょう。

でも、高校の先生たちと話していると、
子どもたちは家族や親戚の医療通訳をしているということを聞きます。
日本にはまだ医療通訳が制度化されている地域が少なく、
誰でも使える状態にはなっていません。
そんな中でも、少しずつ医療通訳は増えています。
細い糸ですができるだけその糸をたどってもらい、
病院の方には子どもたちの人権への配慮をお願いしたいと思っています。
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精神科の医療通訳

2008-10-08 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
5日(日)に日本パブリックサービス通訳翻訳(PSIT)学会の大会が
明治学院大学(東京)と東和エンジニアリング大阪支社(大阪)を
遠隔テレビ会話システムでつないで開催されました。

午前中のテーマは「精神科の医療通訳」で、
精神科医から措置入院と通訳の説明があり、
精神保健施設から精神医療の通訳についての運用状況の報告、
臨床心理士から文化や言葉の問題と通訳者自身の問題、
研究者からは諸外国での精神科医療通訳の状況について発表がありました。

精神科の医療通訳は、一般の診療通訳より難しく、
特別な研修が必要な分野だと思っています。
具体的に言えば、看護師の資格を取った人が、
後1年勉強して助産師をとるとか、保健師資格をとるような感じで、
「精神科」「救急」に関しては、
一般診療通訳よりも高いレベルの技術と倫理観が必要になってくるように感じます。
もし、資格化するにしても、もしかしたら一般診療通訳をAレベルとすると、
「精神科」や「救急」はその上に研修を積んで
A+レベルでないとできないといったように、
精神科の通訳は誰でもできるわけはありませんし、
精神的にもタフでなければこなすことができません。

精神疾患の患者の通訳、特に統合失調症の方の場合は、
通訳も熟練していなければ重い疲労感を感じたり、
精神的に混乱したり、二次受傷がでることが予想されます。
しかし、一般に精神科領域の通訳に特化した研修は
ほとんど実施されていないのが現状であり、
通訳者は精神科の特殊な施設や診療環境に驚きながら、
慣れていくしかないというのが実情です。

自傷他害の可能性のある患者についても、
どう接すればいいのか、
通訳者の安全は確保できるのか、
文化的背景をどの程度補うのかなど、
決めておかなければいけないことはたくさんあります。

日本大学の押味先生がおっしゃったように、
精神科の通訳をするには診察前と診察後に
通訳者と医療者の「打ち合わせ」が不可欠だと思います。
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言葉と顔

2008-10-01 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
福岡から高速艇で3時間、日本から最も近い外国のひとつ、釜山に着きました。

こんなに近いのに、言葉も文字も食べるものも習慣も違います。
街中は当たり前ながらハングルだらけ。
日本より英語やアルファベットの使用は少ないような気がします。
観光客の行く地下鉄の主要駅や観光施設には日本語や英語の表示がありますが、
普通の街中にはほとんどありません。

いつも韓国にいくと韓国人と思われて地元の人に話しかけられます。
ただ今回は日本人が行く場所にほとんど行かなかったこともあって、
その頻度がとても高かったように感じました。

地下鉄で道を聞かれること1日2回以上(同じ人に2回聞かれたことも)、
物売り(おみやげでなく栗むきとか磁気腹巻などの日用雑貨)に声をかけられ、
食堂の割引クーポンや求人案内(たぶん)のちらしをもらい、
地下鉄内では物乞い(たぶん)から寄付してという紙までもらいました。
両隣の人はもらっていないのに・・・・(涙)。
またある時は「今日は釜山ロッテ勝ったねえ」(たぶん)と話しかけられました。
(これは私が野球の試合帰りに釜山ロッテジャイアンツのタオルをしていたからいけないんですが)
とにかく、本当によく話しかけられました。

唯一日本語で話しかけられたのは税関で、
やった!日本人に見えた(?)と思ったのもつかの間、
日本のパスポートを手に持っていたからと気づきました。

しかし一緒に歩いている韓国語のできるツレはまったく声をかけられません。
韓国人は私に「通訳してやれ!」と言ってきます。
なぜかツレに通訳しない私がいつも怒られます。
また、顔が似ているので、何とか通じるはずだ!と
すごい迫力で何度も話しかけてきます(涙)。
ああ、会話は気合なのか・・・と思うのですが、
いかんせんまったく韓国語がわからないのでお手上げです。
(もちろん語学は愛と下心と気合なんですが、まじめな皆さんごめんなさい)

でも、これって私たちが中国語や韓国語の人には日本語で、
いかにも外国人(?)には英語で(英語話者でなくても)話しかけるのに
似ているなあと思いました。

日系人も顔が日本人と同じだから
言葉ができて当たり前という先入観があるみたいで、
日本語ができないと困ることが多いように感じます。

顔と言葉、アイデンティティは別物であるというのは
あたり前のはずなのですが、
この先入観は何とかならないものかなと思います。
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