MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

医療通訳のこれから

2007-12-26 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今年最後の更新となりました。

外国語の生活相談に携わって15年、医療通訳の活動をしはじめて5年が過ぎました。
その間に在住外国人を取り巻く環境や社会情勢は大きく変わりました。

短期間のお客さんだと思っていた人たちが隣人となり、短い間のお互いの我慢はもう通用しなくなりました。
「多文化共生」はきれいな言葉ですが、そんな言葉では解決しない問題やトラブルもおきています。

ひとつひとつの衝突や議論を経て、お互い住みやすい社会を作っていかなければなりません。
そのためには、嫌な思いもしなければいけないだろうし、大きな声で自分の意見を言わなければいけない機会も出てきます。
きれいごとだけではすまされません。

衝突や議論は面倒くさいしエネルギーが要ります。
でもそんなに悪いことではないと思っています。
いろんな人が住みやすい社会は、今までもこうして作られてきたからです。

これから本格化していく共生社会のコミュニケーションのために架け橋となる優れた通訳者が必要となります。
私たちは、外国人支援の立場から、専門知識を持った通訳者を増やしたいし、育てたいと思っています。
それは機械翻訳にはできない温かみを持った専門通訳者です。

私は通訳者育成・教育という視点から大学での取り組みが重要と考えています。
最近、語学の専攻の中に司法や医療などの専門通訳者育成を取り入れ始めたところがではじめました。

たとえば京都産業大学の司法外国語プログラム
法学部の授業と語学(中国語)の授業を取ることによって、
司法分野に強い中国語通訳者もしくは、中国語を理解する司法職を育成します。

また、医療通訳の分野では愛知県立大学の医療分野ポルトガル語スペイン語講座。大学の中で医療分野の言語を学べる試みです。

今後は医学部や薬学部といった医療従事者の育成をはかる学部の中で通訳者や2世・3世といった人たちが医療用語をブラッシュアップするための講座が出来ないかなと思っています。
今、MEDINTで講座をやっていますが、大学は教えることが専門ですから、NGOやNPOのコンセプトを使って大学教育の中で専門通訳者の育成をしてもらえるほうが効率的だと思いますし、なんらかの修了証書もだせるのではないでしょうか。
医療通訳の制度化、認定化の前に学べる場所が必要です。
来年はこうしたことも視野に入れて、活動を進めていきたいと思っています。

皆さん、良いお年をお迎えください。
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シンクロナイズド通訳

2007-12-19 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今年も残り少なくなりました。
最近、硬い記事が続きましたので、ちょっと面白い写真を入れてみました。

6月にウィングスタジアムで行われたJ1ヴィッセル神戸と大分トリニータの試合。神戸市民観戦会の抽選にあたり、メインスタジアムのベンチ上席での観戦になりました。いつもはヴィッセルボランティアで通路に立っているか、よくてもバックスタンドでの観戦ですので、すぐそこに選手がいる席での観戦に大人気なく大興奮でした!

すぐ目の前で大分の監督が声を出しています。大分の監督さんはブラジル人のシャムスカ監督。だから、話している言葉はたぶんポルトガル語です。内容までは聞けなかったのが残念でしたが。

ただ、とても面白かったのが通訳さんの動き。写真のように始終監督と全く同じ動きをしているのです。どこかで見たことのある風景だなと思ったら、シンクロナイズドスイミングの動きに似ているのです。監督が右手を上げれば通訳も右手をあげ、その手を振り下ろしたら、同じように振り下ろします。あまりにタイムラグのない動きに、一卵性双生児か(笑)と思うくらいです。
優れた通訳は、時にはその本人になりきれるようですが、今まで見た中で一番凄いなりきり通訳さんでした。

プロスポーツの通訳さんには、そのスポーツやチームが好きで、感情移入している方が多くみえます。ご苦労は多いとは思いますが、その思いがチームの人気や成績に影響しています。今度スポーツ観戦するときに、是非通訳さんを見てください。きっと新しい発見があると思いますよ!
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子供に通訳をさせないで

2007-12-12 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳ではないのですが、先日ある消費者金融のトラブルに関する通訳をしました。ご存知のように、キャッシングや消費者金融は身近にあり、とても簡単にお金が借りられるので、気軽にお金を借りてしまう外国人の方も少なくありません。
利用が増えるとトラブルも増えます。

返済が滞ると、自宅に電話がかかってきます。
最初は優しい電話だったかもしれませんが、だんだん怖い電話になっていきます。
でも親は日本語が話せないので、電話に子供が出て対応しているのです。この方の場合は子供が泣きながら電話対応していると聞きました。
物を買うとかお金を借りるとか、お客様の場合は日本語の出来ない外国人でも丁寧に扱われ、クーリングオフや金利などの理解をしなくても、とりあえずサインができれば契約が成立してしまいます。もちろん、説明責任義務を果たしていませんが、百歩譲ってそのまま完済したり、きちんと予定通り返済できれば、両者の間には特に問題はおこってきません。ただし、返済が滞ったり、契約内容に問題があった場合はきちんとしたコミュニケーションをとる必要がでてきます。そこで、業者は未成年であったとしても日本語の出来る子供に説明すれば親に伝わると都合のいいように判断します。私自身はあまり通訳をしながら怒らないほうだと思うのですが、今回の件に関しては、強い怒りを感じました。
子供は日本語は出来ても、大人の言葉、つまり法律や契約に該当する母国語を知りません。また日本語の意味もよくわかりません。これらの言葉は、社会に出てから習う言葉であって学校で習う言葉ではないからです。親は自分で交渉したいけれど日本語ができないので、子供に電話を取らせます。もし私が子供だったら、怖い取立てのおっちゃんの言葉はトラウマになるでしょう。また、それらの交渉を自分で解決できない親を軽蔑してしまうかもしれません。
移民の2世はそうして外からは見えにくい大きな苦労を背負っていることがあります。だから大人の問題を子供に通訳させないでください。
これは医療通訳の現場にもあります。しっかりしているように見えても子供は子供です。大人がしっかりと自分で解決するために医療通訳制度を整備する必要があります。
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小児科の通訳

2007-12-05 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
外国語の出来るM医師と話していて、医療通訳で一番大変なのは何科だろうという話題になりました。
私が一番通訳しにくいのは実は「小児科」です。

子供の病気は急変しやすいという理由もあるのですが、大人なら我慢できることも子供のつらそうな顔を見ると我慢していられないという親御さんが多いのです。
いつもは冷静な方も、子供の病気となると人が変わったように、興奮して大騒ぎになります。夜間でも遠方でも病院に駆け込みます。
また、その高い患者さんのテンションを通訳をするので、通訳者はかなり疲れます。

でも逆に子供さんが元気になると、普段の2倍うれしいともいえます。その笑顔は値千金です。

12月になり、急に寒くなってきました。今年のインフルエンザの流行は早いようですね。冬場は風邪も含めて、病気になることの多い季節です。通訳者が風邪で声が出ないなんて「しゃれ」になりません。今年も体調管理はばっちりやらないとと思っています。
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