MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

災害の構造

2021-05-20 03:00:01 | 通訳者のつぶやき
関西はいつもより早い梅雨入りから、
ずっと雨の日が続いています。
皆さん、お元気ですか。

雨の日はいつもより相談件数が少ないのですが
なにかやろうという気分になるには天気は重要な要因かもしれませんね。

新型コロナの感染拡大がはじまってから1年。
2度目の春が終わりました。

最近、通訳をしていて感じることは、
さすがに、この状況にみんな疲弊してきたなということです。

でも、この状況を「災害」それも長期にわたる災害と理解することで
対応が見えてくるように感じます。

発災直後は、みんな同じ方向を向いて
乗り越えようとします。
生き延びたから、一日も早く生活を取り戻したいという方向へ
歩みの速度は違っても動こうとします。
政府の支援策も示されて、去年の春は、そういう雰囲気だったと思います。

今年の春は、明らかに去年より感染者も死者も多く
医療崩壊が起こっていて、すべてに手が回っていません。
回復の目処はたっていないのに、
経済的な支援は終了したり、減額になったりしています。

外国人相談窓口にもいろんな声が寄せられます。
持って行き場のない感情をぶつけられることもあります。
きっと保健所や病院、行政やコールセンターの方々は
もっと大変だろうなと思います。

通訳をしていても、結果がうまくいかないと
ぶつけどころのない怒りや悲しみが、通訳にぶつけられます。
「私はあなたの通訳をしただけ」といっても
通常、よほど信頼関係のある人でないと
通訳が悪かったからうまくいかなかったと言われます。
誠意をもって対応しても、それは仕方がない時があります。

阪神淡路大震災の時も
復興に乗り遅れていく人たちの中に
こうした感情が、澱のように溜っていきました。
あのときに似ている気がします。

しかし、支援者側にも、こうした許容の限界を感じる時があります。

通訳者は、その場にいる唯一の両方の言葉のわかる人間です。
つまり、その言葉の含む感情も理解できる人間なのです。
わかるからこそ、加害者のいない災害だからこそ、
やり場のない感情をどうすればいいのかと思い悩みます。

医療従事者以外のワクチン接種がはじまりました。
外国人の高齢者の方々も予約をしています。
厚生労働省が予診票やファイザー社製ワクチンの説明の翻訳を出してくれているので
それを見てもらいながら説明し、日本語版に記入していきます。
おかげでずいぶん楽になりました。
ワクチン接種はこれからが本番です。
打ちたいと思う人が適切な時期にきちんと打てるようにと思います。
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ヤングケアラー

2021-05-09 21:42:59 | 通訳者のつぶやき
ちょうど1ヶ月ほど前、厚生労働省が初の実態調査を行い、
中学生の約17人に1人がヤングケアラーであるという報道がありました。

「ヤングケアラー」中学生の約17人に1人 国 初の実態調査(NHK)


定義については厚生労働省がHP上で定義しています

ヤングケアラーとはこんな子どもたちです
(厚生労働省のHPより)

その定義の中に「日本語が第一言語ではない家族や障害のある家族のために通訳をしている」という項目があります。

私たちは、2013年に開催したシンポジウム「通訳を担うこどもたち~医療とコミュニケーション」の中で
子どもたちが、手話や外国語を使って家族の通訳をしている現状について扱いました。
当時は、誰かがついて行かなければ医療が受けられない状況も少なくなくて、
「誰か連れてきて下さい」と通訳の調達は患者自身に任されていました。
通訳を連れて行けないことで、受診ができない、初診が遅れるということが起こっていました。
そこで、費用がかからず、守秘義務も守れる通訳者として子どもたちが、同行していました。
母語と日本語ができる子どもは親だけでなく、親戚や他の大人の通訳も頼まれます。

病院だけでなく、行政窓口や裁判所など、こうした通訳が必要な場所はほとんど平日昼間です。
学校を休んだり、部活動などを早引きしたりしなければなりませんでした。

医療通訳を制度化するにあたり、
もっとも考えなければいけなかったのは
こうした子ども達が担っている通訳のことです。

詳細は恐縮ですがMEDINTシンポジウムのプロシーディングを読んでいただければ
当時、手話・ベトナム語・スペイン語の元子ども達が
どんな思いで通訳をしていたかを知ることができます。

家族が助け合うのが悪いわけではないのです。
その通訳を子どもがやっていいものなのかを
きちんと専門職が精査しなければいけない。
風邪をひいた時の通訳とがんの告知の通訳は明らかに重さが違います。
今でも、医療通訳の制度のない地域では、子どもがこうした通訳を担っている現状があります。

ヤングケアラーの概念の中に、通訳をするこどもが入ったことで
この問題が明らかになったと思います。

「医療通訳」は「お手伝い」の範疇を明らかに超えていると言うことを
私たち大人がしっかりと認識する必要があります。
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