MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

その背景にあるものを知る

2019-09-13 01:58:09 | 通訳者のつぶやき
全国医療通訳者協会(NAMI)ができてからは
私自身、医療通訳者の立場で発言することは少なくなってきました。
正直なところ、私の通訳技術はアドホックで
もっと通訳者として技術を持った人たちが医療通訳に参入し
声をあげてくれるまでのつなぎだと思い活動を続けてきたこともあります。
「医療通訳」がいろんな人に知られる「言葉」になり、
日本社会の中で進化していくことに、喜びを感じています。

ですので最近は、看護職や福祉職、行政職の方々との仕事が増えています。

ですが、制度が始まったばかりの地方都市では、
まだコミュニティ通訳研修をさせてもらったりもしています。
また、以前から行っている大阪大学の医療通訳養成コースには出講しています。

はじめの頃は、現場を持つ人や外国人支援を行っている人たちが多く
在留資格や制度の違いなどの話が比較的理解してもらいやすかったのですが、
最近は、言語から医療通訳に参入する方が増えていて
専門用語や通訳技術への興味から入る人たちが増えたなあと思います。
それは悪いことではありません。
むしろ、高い通訳技術を持つ人たちが、医療分野に興味を示してくれることこそ
私たちがずっと期待していたところです。

ただ、医療通訳は「通訳技術」だけではなく
「対人援助」の仕事でもあります。

対象者である外国人の背景にあるもの、
社会情勢や制度の違い、医療機関への壁といったことに
気づくことができるのは、患者と同じ言葉を話す通訳者です。
医療通訳者には、通訳技術とともに
まず患者自身を知って欲しいと思っています。

日本に住んでいる外国人の人たちは英語が母語の人たちですか。
外国人患者が治療費のことをとても気にするのは何故ですか。
在留資格ってなんですか。
難民の人はなぜ日本にいるんですか。
在留資格のない外国人はなぜ日本にいるのですか。
訪日外国人の人たちの医療には言葉以外にどんな困難がありますか。

医療通訳者が「患者と家族」を理解できていないと
治療現場で起こる様々なコミュニケーションの問題を理解できないことがあります。

医療通訳者にも是非「日本における外国人の社会背景」や「来日の経緯」
「母国の社会補償制度」などにも興味を持ってもらい、
その中で患者と家族の個別性を理解してもらえればと思っています。。


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デジャブ

2019-09-03 21:48:55 | 通訳者のつぶやき
私は90年代からスペイン語の生活相談員をしています。

相談員を始めたのは
入管法改正で南米から日系人がたくさん出稼ぎにきた頃です。

日系人でも3世ともなれば
祖父の顔をしらない、日本語を話したことがないという人もたくさんいて
言葉が通じない、たくさんの借金を抱えて来日する、劣悪な労働現場でした。

そして最初の頃にうけた相談のほとんどが、
「在留資格」と「労働関係」でした。

医療では「労災」と「結核」で
指や腕が落ちたケースは覚えていないほどたくさんありました。
「たこ部屋」と呼ばれる劣悪な生活環境の中で
結核を発症するケースも後をたちませんでした。
それくらい過酷な現場でした。
今に比べて支援者も少なかった。

だから、日本人はあまり気づいていなかったと思いますが
当時から、外国人労働者の境遇は厳しいものでした。

あれから四半世紀が立ちました。
途中、ゆるい景気回復やリーマンショックがあり
経済が動くたびに、外国人労働者は景気の調整弁となってきました。
それでも、日本に住んで働こうと残ってくれている人たちがいました。

でもなぜだろう、ここ数年、私が仕事をはじめた当時のことが鮮明に蘇ってきます。
いや、それ以上に当時よりも劣悪な形で外国人労働者が切り捨てられています。

一時は少しおさまっていた労災隠しや賃金未払いが
再び目立つようになってきました。
陰湿ないじめや劣悪な労働環境も
当時と違うのは日本人労働者にも余裕がなくなっているということです。

私は相談員なので
これからのことより、今いる人たちを日本社会の中で守りたいと思って仕事をしていますが、
制度の整わない中で、もっと外国人労働者を増やして
きちんと社会的包摂の中で一緒に生きていけるのか、正直なところ自信がありません。

そんな中で、今考えているのは
外国人支援を、言葉ができる人や国際交流団体だけに任せるのではなく
みんなで考えていこうということです。
医療であれば、通訳者だけでなく
医療者や福祉職、行政、地域の人たち、みんなに現状を知って欲しい。
周りにいる誰もが外国人住民の支援者になってもらえるように。
また、私たちも外国人住民から吸収できるように。
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南山堂「治療」8月号に記事を書きました

2019-08-06 00:46:59 | 通訳者のつぶやき
6月と7月は研修ばかりやっていました。
やっと夏休みにはいったので、そのことはぼちぼち思い出しながら書いていこうと思います。

ところで、最近は医療・福祉専門職を対象とした活動が増えています。
6月のハンドブックの執筆もそうですが
今回は、医師対象の雑誌である南山堂の「治療」8月号
「実地医家のための外国人医療」
に書かせてもらいました。
THE KING CLINIC院長の近先生が編集をされています。

「治療」には2006年、小林米幸先生が編集された
「プライマリケアのためのよりよい外国人診療」の時にも書かせてもらいました。
驚いたのは、医師を対象とした雑誌なので
10年以上たった今でも論文などに引用してもらうことがあります。
当時はないないづくしの時代だったので、読み返すと恥ずかしい。

医療通訳研修からは少し離れていますが、
ぐるりと回って、外国人の人たちの暮らしやすい社会になれば
それは目的としては同じなので、頑張ろうと思っています。

医師の雑誌なので普通の場所で目に触れる機会は少ないと思いますが
本屋さんでみたら、のぞいてみて下さい。



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外国人の医療・福祉・社会保障相談ハンドブック

2019-07-24 03:19:04 | 通訳者のつぶやき
2016年に自費出版した「外国人の医療・福祉・社会保障相談ハンドブック」が
2019年6月に明石書店から出版されました。
今回は「移住者と連帯する全国ネットワーク」の編集で
7月現在、すでに第2版が発行されています(すごいスピード!)。

内容については自費出版版をベースに加筆修正を行っています。

私は自費出版から「医療・福祉現場のコミュニケーション」を担当しており
今回も第2章部分(医療通訳派遣団体リスト除く)を担当しています。
前回と違っているところは、現在先行している医療通訳だけでなく、
福祉現場の通訳についても言及しているところです。
また、社会資源の使い方ややさしい日本語の考え方についても
加筆しています。

この本の中心は
法律や制度の活用、事例検討で
経験豊かなNGOのワーカーが
本当に困った人たちのケースを論じており、
巻末には関係法令集も掲載されています。
市役所などの窓口で「外国人には適応されない」というような
説明を受けたとき、この本を使うようにと作成されました。

東と西の両方の外国人の医療と福祉ネットワークのメンバーが
分担執筆しました。

是非、お手元に1冊備えてもらえればと思います。

詳細は こちら
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何もないということ

2019-07-01 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
大阪で開催されたG20が終わりました。

大阪の隣県に住んでいるわが身にも
ピリピリした緊張感が伝わってきました。

新幹線のコインロッカーやごみ箱の閉鎖、
高速道路の封鎖、
大阪は学校も休校になっていました。
全国から警備の人たちも集まっていました。

何も起きないというのは
当たり前のことのようですが
実はすごいことです。

万全の準備があってこその
「何も(事件や事故が)ない」状態なのだなと思います。

医療通訳の仕事も似ているところがあります。

通訳はその場所で発語されたすべてが正しく通訳できて
はじめて100点(当たり前)といえます。
通訳がいない状態で話している(言語の壁がない)のと同じです。

その状態から、単語が漏れたり、解釈が間違えていたりすると
どんどん減点されていきます90点、80点、70点・・・。
逆に120点になることは仕事の性格上、そうそうありません。
その減点部分をいかに減らすかが、
通訳者の力量になってきます。

暗記に自信があっても、メモをとったり
確実にわからない単語は発語者にいい直しをお願いしたり
本人に伝わっていないようであれば他の言葉で表現したり。
伝えるために頭の中はすごい勢いで
言葉の引き出しを開けたり閉めたりしながら、適切な言葉を探しています。

私たちが医療通訳の勉強をするのはその引き出しを多くするためです。
医療通訳者が未熟なせいで、困るのは通訳者ではなく、患者です。

そういうことを肝に銘じで、
「なにもない」通訳を目指したいと思います。









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空気が変わった

2019-06-05 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳だけでなく、支援者として場に参加していると
時々「空気が変わる」瞬間に出会うことがあります。

2月、社会福祉士会の近畿ブロック会議が神戸で開催されました。
そこで分科会4の兵庫県社会福祉士会が担当する「やさしい日本語」をコーディネートしました。

医療通訳の活動をしていますが
患者は治療が終わったから元の生活に戻るわけではありません。
患者と家族を取り巻く障害や生活支援、お金の問題など
福祉との連携は必須となります。

私自身、兵庫県社会福祉士会の一員として活動する中で
日本にいる外国人クライアントが、日本の社会保障をきちんと使えているかが
とても気になっています。
と同時に、社会福祉士が在留外国人の困りごとに
どのくらいかかわっているのかということもとても気になるのです。

そこで、分科会では近畿2府4県の士会の会員を対象に
外国人クライアントをとりまく現状と
やさしい日本語を使ったコミュニケーションのワークを行いました。

今回のワークで興味深かったのは
フィリピン人とペルー人の模擬クライアント(日常会話レベル)に参加してもらい
実際に彼らからアセスメントをとる練習をしたことです。

あるグループは
「何らかの事情で家出して公園で寝泊まりしている60代女性」の聞き取りをしました。
「何語ですか」「スペイン語」「ああ、スペイン人」(言語と国籍は一致しない)からはじまり
「おなかすいてますか?」を聞くのにもジェスチャーゲームのようになります。
模擬患者役はなかなかすすまない聞き取りに、不安そうな表情をしはじめました。

そこで、あるベテランワーカーが
彼女の正面に座って、じっと目を見て「わたしはあなたの友達です」と言いました。
参加者は驚きに包まれます。
ワーカーとクライアントの間にはバウンダリー(境界線)が必要であり
あくまでも専門職として対応するためには「友達」は禁句です。
「友達」というと「じゃあお金貸して」とか「保証人になって」とか
「家に泊めて」となるかもしれません。

でも、ここで空気が変わりました
そこから、クライアント役の人が聞き取りを行っている人たちに打ち解けるようになったのです。
そういえば、私も医療通訳を始めたころ、役割なんて言わないで
友達として接していたことを思い出しました。
その頃に接した患者さんたちのことはとてもよく覚えています。

経験を積めば、専門職として言ってはいけないこと、やってはいけないことを学びます。
倫理や行動規範の中には私たちを守る言葉がたくさん入っています。

でも、時にこうした空気を変わる瞬間を感じると
なにが正解なのかがわからなくなるのです。

がむしゃらに支援をしていたころが懐かしくなります。
でも、がむしゃらな支援は専門職として行うものではありません。
普通の人ならいつかバーンアウトしてしまう。
(中にはまったくバーンアウトしないすごい人もいますが)

何年やっても支援者の態度に正解はないのだと思った出来事でした。

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業務独占と名称独占

2019-04-23 01:50:44 | 通訳者のつぶやき
大きく分けて資格には2種類あります。

業務独占と名称独占です。

業務独占は
医師や看護師のように
その資格を持っていなければ仕事ができない。
資格のない人が仕事をすると
「医師法」などの法律違反になります。

逆に名称独占は
その名前は勝手に使ってはいけないけれど
その資格がなくても仕事ができる。
(法律違反にならない)
資格は能力をはかるものとして使われることが多いです。
社会福祉士も名称独占ですが
募集の際には資格を持つ人に限定したり
社会福祉士がやらなければ診療報酬にならない業務などもあります。

医療通訳の資格は、その名前は勝手に使ってはいけないけれど
その資格がなくても仕事ができるような、名称独占の資格になるだろうと思います。
その名称を持っていなければ仕事ができないというものにすると
資格対象となっていない言語の通訳者や
読み書きが苦手で試験をパスできない通訳者は仕事ができなくなってしまいます。
また、家族や友人といった通訳者しか見つからない地域では
そうした人が通訳することが違法になると診療ができません。

資格は名称により基本的な能力を担保し
学会などで新しい知識と技術をプラスし、技能を更新し続けるといった
2つの側面がなければ、時代遅れになっていきます。
従来のような、一度とればOKという資格ではなく、更新制であることも重要です。

また、医療通訳者には適材適所があり
基本的な通訳技術はもちろんですが
気配りできる人や院内でコーディネートできる人、医療知識のある人、
コミュニティで信頼されている人、社会保障に詳しい人など
場所によって必要とされる人材も違ってきます。
医療現場にほしい人が必ずしも資格をもっているとは限りません。
資格はあくまでもスタートライン。
医療通訳という仕事は奥深く、分野によっての違いがあってもいいと思います。

医療通訳よりも職業として認められている
刑事法廷の司法通訳人には、まだ公的な資格制度はありません。
各地方裁判所に登録されているということが稼働の基礎になっています。

どんな医療通訳者になりたいかで
医療通訳者が資格を選ぶ時代になると思います。
やみくもに資格を並べるのではなく
しっかり見極めて、本当に自分の武器となる資格がでてきたら是非チャレンジしてください。
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助成金の季節

2019-04-09 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今年も桜の季節とともに
昨年いただいた助成金の報告書作成の季節が来ました。

MEDINTでは昨年
AMDAひょうご
(公財)コープともしびボランティア振興財団
兵庫県いのちといきがいプロジェクト
の3団体の助成金をいただきました。
ひょうごボランタリー基金助成事業は申請中)

MEDINTを始めた2002年の講座は
関西で医療通訳の活動をされている方々に
無償で来ていただきました。
今考えるととても恥ずかしいことなのですが
会員もなく、立ち上げたばかりの団体に
皆さん気持ちよくご協力くださいました。
ただ、NGOの先輩に
「活動を継続したいなら、講師謝金はきちんと支払わないといけない。
そのお金を取ってくるのが、主宰者の仕事」と教えられました。
それから、シンポジウムや研修の講師をお願いする方には
有名・無名にかかわらず、同じ金額の謝金を用意するようにしています。
高額ではありませんが、私たちが頑張って出せる範囲内の金額です。
医師には安い金額なので断られることもあります。
その時はご縁がなかったと諦めます。
講座主宰者が努力してお金を工面することで、
主宰者の講座への本気度を示すことができると実感します。
なので助成金はMEDINTの命綱です。

善意で行っている医療通訳者には
ひとつでも多くのよい研修を受けてほしい。
でも、まだ職業として確立していない医療通訳者から
高額な会費や参加費をとることはできない。したくない。
結局は、助成金を申請して、その間を埋めることを続けています。

高額な医療通訳講座がたくさん出てきています。
儲かる通訳を目指す方には、それも先行投資であり、否定するものではありません。
でも、そうした雇用に結びついている人たちはまだ一握りで
他の仕事をしながら、医療通訳をやっている人がほとんどです。
そうした人たちに、ちゃんと医療通訳の研修を受けて、活動を続けてほしいと願っています。
MEDINTの講座は通訳者同士の横のつながりを作ることと
対人支援の場面での医療通訳のできる人材を育成していきたいというコンセプトで作っています。
無料だと真剣でない人たちも混ざって講座の質が落ちるので
年会費はそのぎりぎりのラインで設定しています。

助成金をいただくことのいいことは
申請書で事業の根拠を説明する機会を得ること、
報告書でその振り返りをすることですが、
実は助成団体から励ましの言葉をもらえるのが、本当に大きいです。
今年度いただいた3団体はお金だけでなく
講師の紹介や他団体との連携など様々な形でもご支援いただきました。

よい医療通訳者が必要だと思うなら
医療通訳者まかせにするのではなく
社会が責任をもって育てるべきだと思います。

私は「儲かるから」参入する医療通訳者を信頼しません。
「儲かるから」医師をやっている人を信頼できないのと同じです。
きれいごとかもしれませんが
まず患者の医療を守る意識があって
その成果としての報酬がでるという流れがあるべきです。
そのために通訳者を支援する組織として
MEDINTは今年度も活動を継続していきます。

新しい年度もよろしくお願いします。
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医療通訳者は医療専門職でありたい

2019-04-01 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
MEDINTも新しい年度がはじまりました。
昨日、スタッフとともに今年度の活動方針を話し合いました。

最近の動向も含めて、医療通訳者がいかにあるべきかを
考える時期にきていると思います。

当たり前のことですが
医療通訳者は医療専門職を目指すべきだと思っています。
強みは通訳技術とともに、外国人患者の周辺理解ができることです。

そのために、医師や病院、雇用主の言いなりになるのではなく
自発性をもった医療通訳者を目指さなければならない。
時には、医師や雇用主と議論をするくらいの
対等な立場でなければ存在意義がありません。

タブレットで行えるような右から左の通訳作業は
すぐにAIに持っていかれます。
医療通訳者は外国人医療におけるコミュニケーションの専門職であり
院内調整や他職種との連携ができてこその
スペシャリストであると考えます。

たとえば薬剤師は医師の処方に従って薬を出しますが
決して言いなりになっているわけではありません。
ダブルチェックはもちろんのこと
副作用に関する説明や他の薬との飲み合わせ、
そうした専門知識を生かした専門家として存在しています。

医療通訳者にも
外国人医療の通訳だけでなく
医療における異文化への配慮や
外国人の日本における社会保障の現状、
医療にアクセスしづらい人たちへの配慮など
行うことがたくさんあります。

医療通訳者を育てるなら
単語をたくさん知っている人ではなく
こうした医療現場における配慮ができて
他の専門職の役割を理解し、協働できる人材でありたいとおもいます。

一昨年、MEDINTでは「母子保健通訳の育成」、
昨年「告知場面におけるサポートができる人材の育成」を行いました。
昨年は特に、患者会の代表やがん相談支援センター、クリニクラウンといった
患者をサポートをされている方々にお話を伺うことができました。
緩和ケアやがんといった医学知識だけでなく、
医療の周辺の学びも必要と考えています。
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坂尾福光先生のこと

2019-03-20 00:00:00 | 通訳者のつぶやき

坂尾先生には2010年からMEDINTの医療英語をご担当いただきました。

当時、医療通訳者に医療と英語の両方を教えてくださる
講師の方がなかなか見つからず、
医療英語中級を教えていただいていた玉巻先生にご紹介いただいたのが坂尾福光先生でした。

坂尾先生は
医療英語を学んだ方ならば一度は使ったことがある
金芳堂「英語で診療シリーズ」5冊の著者です。
当時、西宮で開業されており、共著者のコンロイ先生と
お二人でご担当いただくというとても贅沢な講座を9年間続けていただきました。

坂尾先生は開業医として地域で診療される傍ら、
医療英語の普及に情熱をもって取り組んでこられました。
小児科通訳の実習のために先生のクリニックに伺ったこともあります。
回数の少ないMEDINTの英語学習者のために
西宮医師会の講座にも毎回ご案内いただいていました。

いつも、穏やかでやさしく、
それでいてとてもユーモアにあふれた方でした。

先日、先生がいらっしゃらない3月の医療英語分科会で
医師役を務めました。
台本を読んでいるとコンロイ先生が
「台本通りでなくてもいいですよ」とおっしゃいました。
そういえば、坂尾先生はいつも台本通りではなく
医療英語の講座は笑いが絶えなかったことを思い出しました。

医療英語の講座が「楽しい」とおっしゃる方が多くて
それはお二人のキャラクターによるものだったことを痛感しました。

先生、長い間、医療英語分科会をご担当いただきありがとうございました。
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自治体国際化フォーラム3月号に掲載されました

2019-03-12 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今月発行された自治体国際化フォーラム3月号に
医療通訳研究会(MEDINT)の記事が掲載されました。

国際化の最前線から
「病気になったときくらい、母語で安心して医療を受けられる日本社会でありたい」


記事を書きながら、MEDINTを作ったころのことを思い出していました。

「医療通訳」という言葉もまだ普通名詞になっておらず
友人として同行して、通訳の手法や倫理もわからないアドホック(*)なまま
命にかかわる通訳を冷や汗をかきながらやっていたころのことを思うと
今は「医療通訳とは何か」「医療通訳の倫理」「医療通訳の行動規範」などが
少しずつ広まっており、学びたい人には研修も提供されています。

当初からの私の目的は
私が通訳をしなくても、
もっと優秀な通訳者が通訳をしてくれて
外国人患者が困らない社会を作ることです。

その目的が少しづつ実現しつつある現在、
次の目標は、その通訳者が気持ちよく仕事のできる環境を作ることと
誇りをもって仕事ができるように支援すること。

本来、医療通訳は
医療を受けるすべての人が医療にアクセスできるために
必要な社会資源のひとつであると考えています。

増える外国人住民、訪日外国人に対応するために
医療従事者も様々な取り組みを始めています。
2018年には医療従事者や福祉専門職と一緒に活動することが
多かった気がします。

特に興味深かったのが
大阪府看護師会の日本国際看護師認証研修
東洋医療専門学校の救急救命士課程の多言語演習でした。

これについては後日、またの機会にご紹介させてもらいたいと思います。


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こそっと再開します

2019-01-25 11:33:45 | 通訳者のつぶやき
お久しぶりです。
MEDINT村松です。

家庭と仕事に優先順位をつけて
自分でなくてもなんとかなるものをぽろぽろ落として
バランスを保ちながら過ごしていました。

スペイン語相談員や大学教員の仕事を続けながら
MEDINTの活動や看護・医療職研修、
外国人相談員や医療通訳者の育成などは継続してました。
看護の教科書にも参加させてもらったし、
新しい仕事にもチャレンジしていました。

ただ、文字を書いたり本を読んだりする力がものすごく落ちてしまい、
手紙やメールでのやりとりがひどく苦手になってしまいました。
情報が多すぎると疲れるのでテレビもやめました。
(台風情報や国会中継とかはネットで見られるし・・)

このまま雲隠れするのもいいかなあと思っていたのですが、
最近の医療通訳に関する一連の動きや
全国100箇所に外国人相談ワンストップセンターを作るというような動きに
まずいなあと思っており、これはこっそりブログを再開して
東京に出て行かなくても、意見を残せる場所を作らなければと思うようになりました。

過去1年間に行った活動なども振り返りながら
再び思いを綴っていこうと思います。

「頑張れ」という言葉より
「待っている」という言葉が本当に支えになりました。

今後ともよろしくお願いします。
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シンポジウムのプロシーディングができました

2018-06-07 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
お待たせしました。
(待ってなかった方にも!)

2018年2月にポートアイランドの神戸女子大学で開催した
医療通訳研究会(MEDINT)シンポジウム2017
「支援者を支援する~医療通訳者を支える仕組み」の
プロシーディングができました。

スタッフの皆さんと一緒に
テープおこしをしながら
当日の熱気を思い出していました。

ご発言いただいた先生方ありがとうございました。

来週より販売を開始します。
HPFacebookで販売方法をお知らせしますので
興味のある方は是非ご購入をお願いします。

今回のテーマは「医療通訳を支える」ことです。
また、裏テーマは「医療通訳者を増やし、守り、育てる」です。

登壇者は以下のとおり

<基調講演 > 「ネイティブ医療通訳者を対象とした研修のあり方について」
静岡県立大学看護学部  濱井 妙子さん
<シンポジウム> 
在名古屋ブラジル総領事館ブラジル人民委員会SABJA-Disque-Saude医師  中萩エルザさん
NPO法人CHARM事務局/MEDINTタイ語講師  プラー・ポンキワラシンさん
医療通訳者   岩田秀梅さん

コーディネーター  医療通訳研究会(MEDINT)代表   村松 紀子


オリンピックにむけて
医療通訳者の資格や認証の話がでてきますが、
活動環境が整わず、医療通訳者の数が少ない状態で
選別のみが先行してしまうと
医療通訳のできるひとがますます少なくなってしまうのではないか。
特に英語・中国語以外の言語での認証ができないと
その他の言語の通訳者がアドホックとされてしまうのではないか。
資格化よりも研修を充実することで「選別」より「育成」の発想が必要です。

厳しい意見もいろいろと出ましたが
今、医療通訳者を増やしていくための
周辺整備が必要であるという話が中心となりました。

特に、ビジネス通訳と医療通訳の間でおこる倫理的な問題や
現場で起こる医療通訳者のアドボケイトについては
シンポジウムの中だけでは十分に議論ができなかったので
特別に専門家のコメントも掲載しています。

4年ぶりに開催したシンポジウムは
今までのシンポジウムの議論を元に
どのように研修を考えていくかいについての議論になっています。

是非、2009~2013のプロシーディングと一緒に
読んでいただければと思います。

よろしくお願いします。


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怪我の功名

2018-06-01 10:22:15 | 通訳者のつぶやき
お久しぶりです。
今年の目標はブログを書くことだったのに
今日から6月です。

この2年、いろんなことがありました。
仕事と活動を
手は抜いたけど休まなかったことで
何が正解だったかは・・まだわかりません。

とにかく、今は2年前に戻りつつあります。
ご心配をおかけした皆さんすみませんでした。

怪我の功名というのでしょうか。
ひとりで抱えていた気になっていたMEDINTでしたが、
メンバーの皆さんがどんどん手伝ってくれるようになって
私もそれに甘えられるようになりました。

自分でできないことは人の手をかりること、
自分でできないことは誰かがやってくれること、
そういうものに支えられたと思います。

だから医療通訳の活動も
自分がやらなくても大丈夫なように
自分よりよくできる人にやってもらえるように
環境整備を整えたり
しっかり仲間を増やしていく方向を目指していきたいと思います。

2月のシンポジウムのプロシーディングが完成しました。
「医療通訳者を増やし、守り、育てる」ことがテーマです。
詳細は来週!

書きためている医療通訳に関するコラムも
文章を整えて
少しずつアップしていきたいと思います。
よろしくお願いします。


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医療通訳者を「使う」

2018-02-14 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
ある方から「医療通訳者を使う」というのは
とても上から目線でよい表現ではないのではという指摘を受けました。

そうですね。
医療通訳者以外の方が使うと少し違和感があるかもしれません。
チーム医療の中にいるのだから、医療通訳者も医療者と対等という声もあるでしょう。
この「使う」という言葉が嫌いな人もいるとおもいます。

でも、私達医療通訳者は
基本的には医療者と患者・家族の間の言葉を正確に訳し
コミュニケーションを円滑にするという役割を果たしています。
私達が診断したり、施術したりとか、ケアしたりしません。

もちろん、コミュニケーション支援という立場で
外国人医療に貢献していることは確かですが、
私達が治療をしているのではないと思っています。
そうでなければ、通訳者が自分の言葉で勝手にアドバイスしたりとか
家族が担うようなケアを通訳者に頼むというケースが当たり前になってしまいます。


通訳者は発語する人の言葉に従って
言葉を選んでいきます。

機械ではないので、通訳をして
実は自分の意と違う言葉を発する時はつらいです。

ですので、その発せられる言葉が
どれだけ通訳しやすいか、間違えにくいか
正しいものかによって通訳の言葉は左右されると言えます。

日本社会では専門職が育つ課程の中で
「通訳者を上手に使う」トレーニングを受ける機会があまりありません。
医療通訳者を誰でもが上手に使っているわけではないのが現状です。

だから通訳者から発言するときは
あえて「使う」という道具や機材のような言い方をします。
でも、通訳者以外の方が「使う」というと確かにカチンときますね(笑)

いよいよ今週末18日はMEDINTのシンポジウムです。
今年度はHIAの助成金をいただけたので開催できましたが、来年はたぶん無理です。
最後に、どうしても言っておきたいことをテーマにしています。

まだ、定員には達していないので、お時間のある方は是非ご参加ください。
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