MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

失敗談1

2010-09-17 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
通常、失敗についてはあまり公表したくないものなのですが、
私はコミュニティ通訳も医療通訳も特別な勉強をせずに
実地の中で訓練してきた人間なので普通より多くの失敗をしています。
もちろん、その時には自分なりにベストを尽くしているのですが、
どうしても間違ってしまうことがありました。

これから医療通訳をする人には同じ失敗をしてほしくないし、
こうした失敗談を公表していくのも年長者の仕事かなと思い、
時々こうした失敗談を公表していくようにしようと思います。

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ある日、妊婦のAさんがB5の小さな紙を持ってきました。
そこには「先天性異常検査の同意書」と書かれてありました。

1:検査に同意します
2:今回は検査を希望しません

それ以外に書いてあるのは
患者と家族の住所、連絡先、印鑑。

患者さんは妊娠5か月で40歳の高齢出産。
これは羊水検査のことかなと思いましたが、
この紙には検査の内容は何も書かれていません。

ご本人には検査内容が何も書かれていないことを説明したうえで、
羊水検査などの可能性について話しはじめました。
本当は書いていないことを通訳が勝手に説明してはいけないのですが、
患者さんがあまりに不安そうなので、こちらとしても
思い当たることがあれば一緒に考えようと思ったのです。
異常が出たらどうしよう・・とか話していた時に
ぴらっともう一枚B5の紙がでてきました。

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そこには「フェニルケトン尿症の検査について」と書かれてありました。
この同意書はフェニルケトン尿症の検査のことだったのでした。

行政も検査を受けることを奨励し、
早期発見のために検査を受けましょうと書いてあります。
ただし、これは生後間もなくの子供がうけるものなので、
どうして妊娠5か月のお母さんがこの同意書をもってきたのかわかりません。
もしこの1枚が見つからなかったら、
全く違う解釈をしていたかもしれないと思うとぞっとしました。

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それともうひとつ。
その紙には担当医師の名前が書かれていました。
「○○医師の説明に納得して署名します」と書いています。
本人は日本語がほとんどわからないので、
たぶん説明は受けずにこの紙を受け取ってきただけなのだと思いますが、
もし何かあったらどうするんだろう。
同意書にサインした患者の責任になるのかなとも思いました。

最近、個人情報の問題があり、
病院もほとんど電話での問い合わせを受けてくれません。
読めない紙を持って途方にくれるのは患者だけでなく
通訳者も同じです。

医療通訳者が病院に所属していれば
こうした問題は起きないでしょうか、
ほとんどが身近な通訳者を使っているのが現状なのです。

病院側にも読めない患者への配慮がほしいと思います。

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