MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

守秘義務のこと

2007-08-22 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
「2006年5月22日の参議院本会議で健康保険法と医療法等の改正案への質問に立った民主党の山本孝史議員は質問の冒頭で自らがんを告白し、同時に提出した本法案の早期制定を訴えた。当初、会期中での成立は難航するとみられていたが、これが世論の共感を得て与野党間でも歩み寄りを見せ、早期成立につながったといわれている(Wikipediaより)。」政治家の病名や病状はトップシークレットといわれています。病気の噂が出るだけで次の選挙や人事にも影響するそうです。政治家でなく、一般人であっても病気であることや病名はできれば隠しておきたいプライバシーです。それは、家族や親友という非常に身近な人であったとしても例外ではありません。以前、ある方の通訳をしたとき、コミュニティの別の方からこの方の病名を聞かされて、驚いたことがあります。本人には家族がいないため、どこから漏れたのか、もしかしたら私の守秘義務に落ち度があったのか・・・と。実際には患者本人が誰かにしゃべったということがわかってほっとしたのですが、通訳者としてはそれくらい病状や病名の守秘義務には細心の注意を払わなければいけません。そして医療通訳倫理の中で、もっとも難しいのがこの守秘義務であると私は思っています。
ときどきボランティアの方で、公の場でご自分の通訳されたケースを詳細に報告されている方を見ることがあります(最近はありませんが)。国籍や年齢、病名、住んでいる地域などが特定されると、外国人の場合人数が少ないので、知っている人が聞くとすぐに特定されてしまうのです。聞きながら、これはまずいなと思い、私ならこの人に通訳をお願いしたくないなあと思ってしまいました。
医療通訳の具体的なケースをあげてくれという声があります。もちろん、医療通訳の実態を知っていただくためには、現場の状況をお伝えしなければならないのですが、同時に守秘義務があるため、本当のことはお伝えできません。このブログに書かれていることも、いくつかのケースを混ぜたりして作ったフィクションです。
通訳者として、守秘義務はなにものにも優先する職務上の倫理です。本人の承諾なしには家族であっても、話すことは出来ません。冷たいと思われるかもしれませんが、医療通訳の仕事はそんなものだと割り切っています。

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