MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

無知が人を傷つける

2011-08-01 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
ある福祉関係者の勉強会で、生活保護のロールプレイをしました。

「60代男性、酔って自転車で転んで骨折。
身寄りはなく、日雇い労働で保険にも入っていない。
もちろん貯金はなく、治療費と入院費の目途がたたない。」
というケースです。

講師の方が、
「他に何か確認しておかなければいけないことはありませんか?」
と聞かれたので、
「日本国籍ですか?」と質問しました。
そうしたら会場から笑いが出ました。

日本国籍かどうかを聞くのは
単なる好奇心ではなく、
生活保護適応や保険の遡及などにかかわってくる可能性があるからです。

そうか、この人たちは
生活保護が受給できない外国人や決定に対して不服申し立てができない外国人、
在留資格がなくて国民健康保険に入れない外国人という想定がない場所で
仕事をしているのだなあと思いました。

時々、こういうワーカーの人に当たって、
とても期待させられて、最後にはできませんでしたといわれることがあり、
福祉関係者の外国人に関する知識のなさを痛感することがあります。
もちろん、答える前にきちんと調べてからという方がほとんどなのですが・・・。

身体障害者にも精神障碍者にも高齢者にも母子家庭にも外国人はいます。
難民申請をしているのに結果が出ないままの仮放免の人たちもいます。

福祉の勉強をする時に
そうした知識の前提がないと、傷つけることがあります。

医療通訳者は通訳ですが、
基本的な在留資格や制度についての知識を持っておかないと、
不用意な発言で患者を傷つけてしまうことがあります。
福祉に関する研修にも是非積極的に参加してほしいと思います。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
カテゴリーに外国人がない。 (Shin)
2011-08-03 07:31:56
こんにちは。おそらく、MEDINTさんの
参加された福祉関連の参加者には
「外国人」がカテゴリーの中に入ってくるという概念がないだけなのだと思います。
机上の空論ではよくありがちなことで、いろんなとこの医療通訳の講座などのシナリオを見るたび、「こんな、きれいごとばかりでないのだけどな。」と思うことも多々あります。実際に医療通訳が登場していく場面は、こういう揉め事になりそうなときに、介入していただくケースが多いので、もっとそういう事例をロールプレイすべきだと思います。

医師も看護師も患者も人間。人間がいるところ、いろんな問題が発生しています。

そういうことはプライバシーとして伏せられているので、ロールプレイなどのケースには上がって来ない。実践知を共有していく勉強会が必要なのでしょうね。
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Shin様 (MEDINT)
2011-08-03 11:21:17
たぶん現場を知らない人が作ると
きれいごとのロールプレイになるのかな。
でも実際の現場をロールプレイすると
それはそれで大変でみんなやめちゃうかも(笑)

実践知を共有していく勉強会は
本当に必要です。
もしくは交流会でもいいと思います

「ばかやろー」とか言いたいけど
言えない仕事の人は特に。
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