MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

子供が通訳をすることについて

2006-03-01 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
お父さんが子供と一緒に病室に入ります。お父さんは癌です。

子供はお父さんと一緒に5年前に来日しました。小学1年生のクラスに入って、最初は日本語がまったくわからなかったけれど、今は友達もできて元気に学校に通っています。学校の友達とは日本語で話し、日本のテレビを見ていますが、お父さんは家でスペイン語を話せというので、家ではスペイン語を使っています。
でも、お父さんは、毎日工場で働いて、日本語の勉強ができないので、日本語が話せません。「けんさ」とか「ざんぎょう」とか仕事で使う単語はわかりますが、日常の日本語は子供まかせです。だから、ビザの更新の時も、市役所へ行くときも、子供が学校を休んでついていきます。

今日も、お父さんの調子が悪いので、病院についてきました。子供は体育の授業が大好きなサッカーだったけど、学校を休みました。お母さんは働いているので、仕事を休めません。
お医者さんは子供に話します。「お父さんは癌です。手術しなければいけません。手術しますか?手術しても、成功の確率は○○%です。その後の抗がん剤治療には副作用があります。副作用は・・・・・・・。」
お父さんは、子供をじっと見つめています。「先生はなんと言っているの?大丈夫だといっているのか?仕事はできるか?」
子供は困ってしまいました。難しい言葉が多いです。日本語ではなんとなくわかるけど、スペイン語ではわかりません。その上、先生はとても怖い話をしています。「失敗の確率は○○%です」「頭の毛が抜けます」「肝臓が悪くなります」
涙がでてきます。「お父さん大丈夫だって」といいたいけれど、先生はそんな簡単なことを言っているわけではないようです。でも、ちゃんとお父さんに伝えなければいけません。わかっています。でも、涙が出ます。

アメリカでは子供に医療通訳をさせてはいけないと法律で決まっている地域もあります。また、子供が大人の通訳のために学校を休むことは、学校で勉強したい子供の福祉を阻害するといわれます。子供を診察室に入れないですむように、一日も早く医療通訳を整備したいと思いませんか。


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