MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

ボランティアでお願いします

2014-05-05 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
通訳を探して欲しいと言われるとき、
特に行政の方は「ボランティアでお願いします」とおっしゃいます。

このボランティアは「自発的な精神をもちポジティブに通訳に打ち込んでいる人」ではなく、
「無料で使える人」を意味します。

そういう方には、まず「予算措置をしてください」とお願いします。
大抵の方は「困っている人がいるのに、なんでそんなことをいうのか」とおっしゃいます。

本当にボランティアで通訳するときは
その通訳がどうしてもその人にとって必要と自分自身、強く思われ、
周りで支援している人たちも、同じように動いている時です。
そんなときは、そこにお金が介在するかどうか、あまり考えません。
交通費自腹でも、行く時は行きます。
その時のために食べるための仕事をしているのです。

以前は↑のような方の「ボランティア」にも結構付き合っていました。
でも、嫌な思いをすることが多いので、最近独自にスクリーニングしています。

まずは、予算措置をしないことで、各職員が個人で動いているため、
通訳の立場が明確ではないことが少なくありません。
急なキャンセルや調整不足、本当は通訳は必要なかったというケースまで
簡単に来てくれる人には、準備が不足する傾向にあります。
もし、予算措置するのであれば、その必要性をきちんと上司に説明しなければいけないし、
いろんな部署に根回ししていかなければなりません。
そして、その部署が少なくても予算を使って雇っている通訳者であれば
その使い方にも責任が出てくるはずです。
そういう自覚が「ボランティアで」と痛みを伴わず言えてしまう人には
かけているような気がします。

何年もかけて、ある行政相談の窓口で通訳を予算化し、
NPOと契約して派遣してもらうように整備した職員がいます。
この人は、通訳というものをきちんと理解していて、
電話でよいものは電話通訳を使い、相談者の状況をみて派遣依頼をします。
予算措置をしているので、なんでもいいというわけではなく慎重にケースを選んでいます。

それから、「ボランティア」を依頼する人は仕事でやっているのに、
きてもらう通訳だけがボランティアというのはどうなんだろうとも思います。
缶コーヒーを買ってくれたり、昼食をおごってくださる方もいます。
決してそういうものが欲しいんじゃありません。
「仕事に協力してくれてありがとう」というその気持ちがうれしかったりします。

そして何よりも「ボランティアで」の中には
有料の通訳は優秀で偉くて、無料通訳は技術がそこそこだから
ボランティアをしているという意識があるということが問題だと感じます。

少数言語の通訳者は、ガイドもするし法廷にも立つし、翻訳もします。
人道的に必要とあれば金銭に関係なくボランティアで通訳をすることもあります。
だからこそ、自発的な意志としてのボランティア精神が必要なのです。

道で痛みを抱えている人がいたら医療者なら手を差し伸べます。
それ同じことが通訳者にもいえるのです。
ただ、これは誰かに強制されることではありません。

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