ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

けっきょく香港の中国における相対的地位の低下、利用価値の低下に話は尽きると思う

2020-07-01 00:00:00 | 社会時評

報道された記事を。

>香港国家安全維持法案可決 中国全人代常務委 香港メディア6月30日 14時55分

香港での反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法案」が、中国の全人代=全国人民代表大会の常務委員会で可決されたと香港の複数のメディアが伝えました。香港は1日、中国への返還から23年の記念日となりますが、これにあわせて施行される可能性が高く、香港の高度な自治を認めた「一国二制度」を完全に形骸化させるとして懸念が広がっています。
香港の複数のメディアは30日、北京で開かれた全人代の常務委員会で香港国家安全維持法案の採決が行われ、全会一致で可決されたと伝えました。

「香港国家安全維持法」は、香港に中国の治安機関を設けることを定めるとともに、▼国の分裂や▼政権の転覆▼外国の勢力と結託して、国家の安全に危害を加える行為などを規定し、犯罪として刑事責任を問うものです。

この法律は、香港の憲法にあたる香港基本法の付属文書に追加され、香港政府が公布することになっています。

香港は1日、中国への返還から23年の記念日となりますが、これにあわせて施行される可能性が高まっています。

この法律が施行されれば、香港では、中国共産党や政府に批判的な政治活動や言論活動は、事実上、封じ込められることになります。

香港は、中国に返還されて以来、「一国二制度」のもと高度な自治が認められてきましたが、今回の法律はこの制度を完全に形骸化させるとして懸念が広がっています。

(以下略)

この件に関して、いろいろ考えるところが誰しもあるでしょうが、私とすると、タイトル通り、香港の相対的地位の低下とそれに付随する利用価値の低減が、この問題の本質だなと思います。この件については、inti-solさんがわかりやすく記事を書いてくださっています。

いかれている

なおタイトルの「いかれている」というのは、米国のトランプ大統領の対応のことです。

ここで、中華人民共和国と香港のGDPの推移、および1人当たりのGDPの推移のグラフをお見せします。ついでに日本の数字の推移をもお見せします。USドルによる名目GDPです。「世界経済のネタ帳」さんから作成しました。

リンクはこちらになります。また、下に、数字を記した表のスクリーンショットを掲載します。

こちらも「世界経済のネタ帳」さんから作成した表です。ほんと、私も日々勉強させていただいているすばらしいサイトです。リンクはこちら

それにしても大陸中国は当然としても、ほんと香港の経済成長もすごいですね。1980年から1995年くらいまでは、ほぼ日本の半分強の1人当たりの名目GDPの値でしたが、2014年に逆転、2019年は推計値ですが、1万US$弱の差がついています。なにしろこの40年で、日本は4倍弱増えていますが、香港は8倍をはるかに超える額ですからね。しかし中国にいたっては・・・?

英国は、1949年に共産党政権が大陸に誕生した際、早急にそれを承認しました。これは、いわゆる西側の主要国のなかでは初めてです。

いまだに産経新聞などは、このことをけしからんとか繰り言を並べていますが(苦笑)、が、これは現在からすればむしろ先見の明があったんじゃないんですかね。どっちみち米国が1979年に国交を樹立したことで、最終的に決着がついたんだから。こちらの産経の田村秀男記者の記事も参考になるので乞うご一読。

で、この時英国が共産中国を承認した背景には、1つには蒋介石とさほどつきあいのないアトリー労働党政権だったこと、あともう1つが香港の存在であろうかと思います。

実際、香港は、大陸の覇権を共産党政権が握ったことで、最悪武力接収される可能性がありました。されたらどうしようもないわけで、英国側としては大陸の共産中国といい関係であり続けるのは当然というものでしょう。

余談ではありますが、この考えは、日本の対北朝鮮との対応にも応用できますね。一部の反北朝鮮の人間は、やれ北朝鮮とはいろんなことが違いすぎるとかいろいろなことをほざきますが、そんなことは最終的にはどうでもいい話です。たとえば北朝鮮から日本人拉致被害者を返してもらうために一番有効だったのは、北朝鮮への経済支援の約束でした。それをしたら、そんなに時間がかからず北朝鮮から拉致被害者が帰ってきたわけです。逆に制裁だ圧力だなんていくらほざいたところで、それに固執してたらたぶん今日でも拉致被害者の帰国なんてものはない。北朝鮮だって日本人拉致を認めないでしょう。

それで上の表を再確認しますと、名目GDPでは、中国は1980年→2019年(推計値)で、おおよそ46.3倍増えています。日本はおおよそ4.7倍弱、香港はだいたい12.9倍です。香港の発展もすごいなあです。

1人当たりの名目GDPでは、中国がおおよそ32.6倍、日本がおおよそ4.3倍、香港がだいたい8.7倍です。

日本と比べて香港の経済成長がすごく、もちろん中国の経済成長についてはそれをはるかに上回るというところですが、当然ながらこれは、大陸と香港との経済格差が縮小する過程でもありました。

中国は、やろうとすればやれた香港の武力接収を行いませんでした。その理由はいろいろありますが、大きなものが、香港を貿易の窓口とすることです。つまりは、周恩来や鄧小平といった人たちは、武力接収するより対外的イメージの問題や貿易の窓口として香港を活用するのが有利であると認識していたわけです。このあたりの判断はさすがですね。大躍進とか文革とかの負の歴史も多々ありますが、このような問題に関しては、inti-solさんもご指摘のようにさすがに

>そういう面の長期的計算は長けているなと思います。

ということでしょう。またinti-solさんは、香港を武力接収しなかったことと、台湾を武力解放しなかったこととは共通する部分があるのではないかとも指摘されています。たぶんそれはそうでしょうね。

それでやはりこれもinti-solさんのご指摘ですが、中国はきわめて地方による貧富の差が激しいので、平均ではなく沿岸部の豊かな地域と比較すれば、香港との差はますます縮まります。

そして、中国にとっては、冷戦時代などは特に、香港は情報収集やスパイ活動、工作活動の本場、あるいは前線基地として最適でした。もちろんこれは、中国をスパイする側にとっても同様です。佐藤栄作は、政権最末期中国との国交を回復しようと考えて、中国側と配下の交渉人と接触させました。この時も、もっぱら香港で接触が行われています。香港は、こと対中国との活動をするうえで、きわめて重要かつ有用な場所でした。詳細については、下の本をご参照ください。ものすごく面白い本です。

佐藤栄作 最後の密使――日中交渉秘史

2020年の今日、もはや経済的に中国が香港を優遇する意味合いが乏しくなり、また冷戦の終結や時代の変化により、昔のような意味合いで香港で諜報活動が行われるわけでもない。つまりは、もう中国にとって香港は、たくさんある都市の1つくらいの地位しかないのでしょう。もちろんさまざまな意味で別格の都市ではありますが、サッチャーと協定を結んだ時代や返還のあった80年代や90年代の前世紀と比べれば、比較の対象にもならないわけです。

だいたい上で示したように、香港は昨今たいへん高い経済成長を成し遂げていますが、これはもうすでに中国のおかげであるわけです。かつてはたしかに香港が中国経済を助け、場合によっては引っ張っていったこともあったとしても、現在は中国のおかげで繁栄を謳歌しているといっていいわけです。これも冷厳な事実でしょう。

で、香港の相対的な地位の地盤沈下については、中国に詳しい識者の方もいろいろ指摘していると思います。私が読んだのは、慶應義塾大学経済学部教授、京都大学名誉教授の大西広氏のこちらの本です。

長期法則とマルクス主義――右翼、左翼、マルクス主義

いずれにせよ今回の事態は、なるべくしてなったのだろうなと思います。中国が経済大国化すれば、香港への特別扱いが衰退するのは時間の問題、やっぱりこうなった、という程度のことでしかなかったのでしょう。

なおこの記事は、inti-solさんの記事を参考にしました。感謝を申し上げます。


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6 コメント

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Unknown (まあちゃん)
2020-07-01 10:23:07
香港は観光などの経済には優れていても資源が有るわけでなく開発や工場などの生産性が高いというのも無いので、中国が力を付けたら無用という程ではないにしても優遇措置が必要な程重要では無くなってしまったのでしょう。
観光にしても南の方なら香港一択、なんて感じだったのが上海の方がいいよ、なんて変わって来て強くは無くなっていますね。
Unknown (ブラウ)
2020-07-01 12:55:54
やや記事の趣旨から逸れるコメントかもしれませんが。
私は正直言いますと、香港の「民主派」の人々には胡散臭いものを感じていて、それは天安門事件についての見方にも通底しています。

韓国がまだ軍事独裁体制で民主化運動がたけなわだった時代、重大な転回点となったのが80年の「光州事件」でした。くわしくはウィキペディアの記事
https://bit.ly/3eRFGwa
に譲るとして、要は韓国市民を白色テロで抑圧し殺し続ける軍事独裁政権が存在しうるのはアメリカの支えがあってこそ、という事実を否応なく可視化したのがこの事件であり、以後「反米無風地帯」とも呼ばれた韓国での民主化運動は、反米闘争と不可分のものに変化していきました。

一方、天安門事件で民主化デモの中核的役割を担った若者たちが、中国当局の追及を逃れて向かった先はアメリカだったわけです。
そして最近香港デモが激化していた時も、やはり民主派の学生リーダーたちはアメリカ領事館の職員たちと接触を持っていました(後者について日本のマスコミは一切報じていませんが)。

「中国共産党の支配の実際を知らず、自由な日本でぬくぬくと暮らしている者に何がわかる」と非難する人もいるでしょう。
しかし少なくとも、中国よりもはるかに巨大な規模と領域での破壊と殺戮を、「自由」の名において繰り返してきたのがアメリカという国であることは間違いない。

ですから、反共と第三世界封じ込めのドス黒い底意を持つアメリカと手を結ぶ「民主化」だの「自由」だのというものについて、私は一切信用を置いていません。
>まあちゃんさん (Bill McCreary)
2020-07-03 07:38:37
香港は基本的に中継貿易の街ですからね。以前はある程度第二次産業もあったようですが、さすがに現在はそういう時代ではないし、中国の年が大発達すれば、そういう役割も低減します。
>ブラウさん (Bill McCreary)
2020-07-03 07:39:56
光州事件もけっきょく当時の人権外交をカーター政権から見放されちゃったわけですからね。米国を頼りにするのを「悪い」とは言いませんが、そんなに当てになるものでもない。
台湾の李登輝元総統が死去 (nordhausen)
2020-07-31 20:21:52
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200730/k10012542191000.html?utm_int=detail_contents_news-related_002

記事の趣旨とは話題が逸れますが、中国と非常に関わりの深い国の元国家元首の訃報ということで、ここにコメントさせて頂きます。

さて、台湾では、李元総統の時代(1988~2000)に民主化が推し進められ、経済も発展していきましたからね。
ちなみに、彼は親日家として知られていましたが、日本の右派政治家や言論人によって彼が持ち上げられた部分もありますからね。

ところで、中国や香港の経済成長は目覚ましいものがありますが、台湾もそれに劣らず目覚ましい経済成長を遂げていますからね。実際、1980年→2019年の間に、1人当たり名目GDP(USドル換算)では10倍強になっています。

https://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=NGDPDPC&c1=TW&c2=JP
>nordhausenさん (Bill McCreary)
2020-08-07 00:43:59
台湾の経済発展は、国民党の一党独裁をやめたからでしょう。そうなると、蒋経国が死んだ時点で、その後継者はどっちみちその方向にすすまざるを得なかったでしょうね。

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