暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

水無月の自主稽古 2014年

2014年07月10日 | 自主稽古(京都編)&奥の細道会
6月20日に水無月の自主稽古をしました。

メンバーの一人が欠席されたので、大垣のMさんをお誘いしました。
3月にMさん宅でお世話になった自主稽古が忘れ難く、
灑雪庵へもう一度来ていただきたかったのです。

            

床に、足立泰道和尚筆「水上青々翠」を掛け、
庭のどくだみを高取焼の銚子へ活けました。
6月6日のどくだみ茶会で出合った、清楚などくだみが頭の片隅に
残っていたので・・・。

お菓子は行之行点前に合わせて、五種としました。
差し入れの長良川の鮎が加わり、ボリューム満点です。
濃茶は雲門の昔(一保堂詰)と長松の昔(柳桜園詰)です。

            

今日の課目は
1.真之炭         
2.大円之真    
3.真之行     
4.行之行     

大円之草はありませんが、奥伝を並べて稽古することで、
点前の特徴を確認し、整理しながら進めることができます。

真之炭手前をMさんにお願いしました。
S先生の稽古で拝見しているのに、いつまでも曖昧な箇所がありました。
それは
1.神折敷と灰器の運び出し(膝行と膝退の仕方)
2.灰器の持ち方と扱い方
3.羽箒の扱い方
4.火箸の扱い

Mさんの所作を拝見しながら、だいぶ曖昧な箇所がクリアーになり、
翌日のS先生の稽古で確認させて頂きました。
こればかりは自分で稽古しないと仕方がないことですが、
毎回、真之炭手前を順番にして、正しい所作を身に着けたいと思っています。

それから・・・真の稽古は神仏の前という気構えで臨むことも大切です。
問答もそうですが、稽古でしないといつまでも身に付きません。

今月も自主稽古が出来たことが嬉しく、お付き合い頂いたお二人に感謝です。

                                
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古田織部四百年遠忌追善茶会-つづき

2014年07月07日 | 献茶式&茶会  京都編
                  大徳寺塔頭・芳春院の庭
(つづき)                         
書院で行われた濃茶席に続いて、香林庵で行われた薄茶席へ参席しました。

席主は宮下玄覇氏、2014年3月に開館された古田織部美術館館長で、
織部研究をライフワークにされている方です。
薄茶席の会記を忘備録として感想を交えて記します。

薄茶席          主  宮下玄覇(はるまさ)

    待 合
   織部所持
          古田宗屋・春屋宗園 両筆勘弁状 

         (十一月五日付の織部消息。消息は苦手なので省略・・・
          織部が規主座(きしゅざ:春屋の従者)に先日早々に帰ったのが
          残念なこと、文箱を下さることなどが書かれている。
          宗屋という署名があり、宗屋は師・春屋宗園に授けられた法緯を
          称したもので、他に1通しかないそうです)


   織部家紋三引両前立 梅鉢文吹返 黒漆塗六十二間小星兜 
   金箔押 黒獅子香炉   長次郎作  仙叟宗室箱書付
   織部茶書 古織伝  寛永三年版

              
                    
                        大徳寺にて
本席      高林庵

本席へ席入りすると、そこは鎖の間の設えでした。
見た途端懐かしく、上田宗箇流・和風堂鎖の間を思い出します。

運よく点前座がよく見える、床の前に陣取りました。
初めてお目にかかる宮下玄覇氏はお若く(1973年生まれ)、緊張気味でしたが、
古田織部に惹かれ、長年「古田織部の世界」を研究していたという気概が
快く感じられ、丁寧にお話してくださいました。

お正客は心得のある男性客でしたが、
「門外漢でよくわかりませんので、よしなにご説明をお願いします・・」
30名の席ですから席主にお任せした方がスムースに進行すると思い、
お正客の英断に拍手です。これも良いお勉強でした・・。

織部は書院のある座敷に年中、鎖または自在で釜を釣り、会席を振舞ったり、
袋棚を据えて薄茶を点じるなど、いろいろな試みをしていて
書院には文房具などを飾ったそうです。

この日の薄茶席はそんな織部のもてなしを彷彿する設えでした。


               
               (参考) 上田宗箇流・和風堂の「建渓」(鎖の間) 

花入 伊賀 鍔口(つばぐち)  釘ニ掛ケテ  
 花 笹百合5本

香合 織部好 梅鉢文黒塗
   黒塗盆上に時代物ヲ中心トシテ三代・四代・五代・六代・七代宗哲作ヲ
   周リニ配シテ梅鉢文トシ、六国五味ノ香ヲ入レル)

  (歴代宗哲作の梅鉢文が微妙に違っているのに見惚れていると、
   隣席のA氏から6個の香合の配置で二重に梅鉢になっていると指摘され、
   素晴らしいご趣向と感激しました。
   中にそれぞれ六国五味の香包が入っているのも嬉しいです)


釜   織部好 鋸歯文 大筒 辻与次郎作  中川寺弥勒院・東大寺清涼院伝来

 炉縁  沢栗  半入作
    (利休・織部時代の指物師で、久以・長以とともに著名)
 自在  竹 六閑斎在判
 釣   鉄木瓜 甲冑師 明珍作 
 鐶   半月相生 甲冑師 松村勝房作 

風炉先  時代矢並網代 
袋棚   木地
  
水指  高取耳付三足  内ヶ磯(うちがそ)窯  松葉銘 
   (古高取窯の一つ。1600年初頭に織部が指導して焼かせたもの。
    歪み、デフォルメされた形、三足などに織部好の特徴がある。
    内ヶ磯窯に興味があり、やや下よりの耳の位置が安定感を増している。
    明るさと落ち着きを感じる水指が木地袋棚にお似合いでした)


薄茶器  織部好  溜竹寸切 
      織部伝ノ通リ紙ニシキテ
      (これについては? 解説が欲しい)
 替  織部好 黒中次 藤重作

                  

          
茶碗  黒織部 六波文 沓形  
 替   黒楽 織部形 二代長次郎作 
 替   絵志野
(道具好きのA氏が拝見したさに、せっせと茶碗を運んできてくださって
 しっかり見ることができました・・沓形黒織部より絵志野がヨカッタかな)
 

茶杓  織部作   筒 慶主座(けいしゅざ) 
  (慶主座は桃山時代の禅僧。利休の茶杓の下削りを行い、中節の茶杓を確立。
   利休の弟子道慶と同一人物とされ、後に南坊宗啓と名を改めて南方録」を
   著したとも言われているが詳細は不明。弟子の甫竹も利休の茶杓師)
   (竹茶杓は中節、蟻腰、中樋、色は飴色だったような・・)


蓋置  織部好 竹引切  (織部好は高さが少し高いそうです)
建水  備前三足 (織部は、建水は備前か名物を使ったそうです) 
柄杓  織部形

御茶  好の白  上林春松詰  (織部と親交あり) 
菓子  「青梅」 川端道喜製  (織部と親交あり) 
器  時代黒塗織部盆 
 替  時代黒塗羽田盆     (黒塗りの最初の盆、縁が矢筈形)

莨盆  佐久間将監(しょうげん)形 溜掻合塗手付透  六代利斎作
    (江戸時代前期の武将・茶人。名は実勝・直勝、号は寸松庵。
     豊臣秀吉のちに徳川家に仕え、茶は古田織部に学んだ。
     晩年は大徳寺・龍光院内に茶室寸松庵を建てて茶事三昧に過ごした。
     秘蔵の伝紀貫之筆の色紙は寸松庵色紙として名高い)

火入  雲華 菊桐紋三足   天下一宗四郎作 
煙管  青織部  
                            以上

               

茶会後、総見院席へ向かうA氏と別れ、Oさんと瑞雲軒の点心席へ。
こちらにも展観席があり、見応えがあるものが並んでいましたが、
もはや頭の中は満杯で、花より団子とばかり、たん熊の点心に舌鼓を打ちました。
食後、マイクロバスで古田織部美術館(京都市北区大宮釈迦谷)へ行き、
織部好の茶道具を見学しました。

古田織部を偲び、織部好の茶道具にどっぷり浸かった一日でしたが、
日が経ってみると、新たな疑問やら興味やらが出てきました。
「実際の古田織部の茶会とは?」
「自分で古田織部をテーマにした茶会をするとしたら?」
「茶道・織部流は存在するのか?」
「宮下氏は古田織部を卒業できる(超えれる)のか?」などなど・・・。


                                       
           古田織部四百年遠忌追善茶会 前へ 


古田織部四百年遠忌追善茶会

2014年07月06日 | 献茶式&茶会  京都編
                 大徳寺 芳春院の参道

アップが遅れ、もう忘れかけていますが、
大徳寺・芳春院席の会記を忘備録として記しておきます。

6月11日は古田織部(1543~1615年)の命日でした。

古田織部四百年遠忌追善茶会が大徳寺の3塔頭(芳春院、黄梅院、総見院)で
行われ、芳春院席へ茶友Oさんと参加しました。

芳春院席は、書院で濃茶席、席主は筒井如是庵(紘一)氏(今日庵文庫長)、
高林庵で薄茶席、席主は宮下玄覇氏(古田織部美術館館長)でした。

8時30分の開場なので8時少し前に芳春院へ到着し、列の最後尾に並びました。
私たちの後に並んだ男性A氏は東京から泊りがけでいらして、
芳春院と総見院の2塔頭に参列するそうです。
幸いにも一席目に入ることができ、A氏と同行することになりました。
織部と茶道具など、いろいろ教えて頂きながら愉しく廻ることが出来ました。
・・・お名前をお尋ねしなかったのが悔やまれます。


            


濃茶席       主 筒井如是庵

   待合

  近衛龍山公筆  和歌懐紙     小津松洞庵旧蔵

     龍伯老人の詠歌のあさからぬ
     御心はへに一首をかきつけけるとそ

     ゆうたちの雲はれてたにはちすはの
        うへにすゝしき玉ゆらの露

     (近衛龍山は安土桃山時代の公卿、名は前久(さきひさ)。
      織田信長をはじめ戦国大名間を渡り歩き、乱世を生きた公家であったが、
      父・種家から古今伝授を受け、和歌や連歌にも通じた教養人。
      小津松洞庵は江戸時代から近代にかけての豪商、伊勢松坂の素封家。
      映画監督・小津安二郎は分家にあたる)


  炭斗  唐物青買底四方
  (待合に飾られていた炭道具が素晴らしく、ため息をつきながら拝見しました)
  羽箒  朝香宮拝領 白孔雀三枚羽  初代甫斎作
                    揚輝荘 伊藤祐民箱書付
  (白い繊細な羽にハッとするような緊張感を感じます)
  鐶   大角豆(ささげ)象嵌割   徳元作
  火箸  角張七宝透 花頭      徳元作  
  灰器  天下一松斎写 雲華     辻井播磨作
  (炭道具の中の一番はコレ。モダンで歪みのある、初めて見る形です)
  灰匙  唐物双魚紋
  釜敷  唐物藤   松尾宗二箱書付  藤村庸軒所持


             

       本席   書院

   石室善玖  墨蹟  七言詩

      海山夜月自團圓 風巻浮雲廓性天
      却笑推窓多倦睡 青蛇出透髑髏前

      (人の一生を謳った奥深い詩とのこと。
       なぜかハムレットが、道化師だった男の髑髏を掲げて言うセリフ
       「世にある、世にあらぬ、それが疑問ぢゃ」(坪内逍遥訳)を思う。
       織部追善茶会にこの墨蹟を掛けた意は深すぎて測り知れない・・・。
       席中一番の大事は墨蹟也が頷けます。

       A氏より石室善玖(せきしつぜんきゅう)のことを伺い、興味を持つ。
       石室善玖は、鎌倉後期・南北朝時代の五山の禅僧。
       中国・元に渡り、古林清茂(くりんせいむ)の法嗣となる。帰国後、
       筑前の顕考寺・聖福寺、京都の万寿寺・天龍寺、鎌倉円覚寺・建長寺
       の住持を歴任した)


  花入  青銅鍍金相華文扁壺  明代
   花   大山蓮華
   敷板  時代板
  香合  遠州元蔵帳之内
      唐物青貝梅渦形   小堀大膳宗慶箱書付  益田鈍翁旧蔵
                宗中蓋裏張紙
       (織部が好んだという梅文の香合で織部を偲んで・・・)

           

  風炉先  仙叟好  長片木  五代利斎作
      (終了後、風炉先の障子を開けてくださると、薄い長片木から
        光りが漏れ射して、別の世界が生まれました)


  釜    古芦屋  馬猿地文
   風炉  土 道安  三代西村宗全作
  水指   織部所持  信楽一重口   永順箱
      (永順は武田信玄の祐筆か?)
  長板   木地   利斎作

  茶入   織部所持  瀬戸黄釉手 銘「青苔」
           聖護院宮道晃法親王 箱書付 聖護院宮・西本願寺伝来
        袋  龍文金襴  白極緞子  島津間道
       (黄釉と形(尻張・肩衝)が個性的で、存在感のある茶入に惹かれました。
        聖護院宮へ伝わったというのも嬉しい伝来です)


       
  茶碗   主  絵唐津      益田鈍翁・青山二郎旧蔵
       替  古伊羅保  銘「翁」  松永耳庵箱  同 旧蔵
       替  黒織部 沓
      (会記には「翁」が主でしたが、第1席は絵唐津が主でした。
       青山二郎1901~79年、近代の装丁家・美術評論家。
       彼の有名な格言
       「美とは、それを観た者の発見である。創作である」)


  茶杓  津田宗及作  覚々斎原叟筒  川上不白箱書付 
        長谷川宗仁宛文添       内本積有所持 三井松籟旧蔵

             

   
  御茶  祖母昔(むかしおとめ)  上林春松詰
  菓子  卯の花キントン      末富製
  器   青磁輪花         六代宗哲作 
                               以上

末富さんが奥で作っているそうで、出来立ての卯の花キントンは
柔らかく、程よい甘みと大きさでした。
次いで3人で濃茶を頂戴しました(たしか、禾目天目?)。
とても美味しく練れていましたが、量が少なく、それだけが心残りでした・・・。


                                   その日は   

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