暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

新春を祝う正午の茶事  責紐釜

2010年02月09日 | 思い出の茶事
1月最後の日曜日に水清き庵のご亭主より
新春を祝う茶事へお招きいただきました。

珍しい三つ輪の結び柳が飾られている待合床に
布袋の墨絵が掛けられていました。
ユーモラスなタッチですが、あとで会記をみると
「見上げ布袋 松花堂」とあり、びっくりです。

千成瓢箪の唐胴火鉢が用意されていました。
衛士の炊くかがり火台のような細工物があり、
遠火で薫香を漂わせています。伽羅かしら?

席入すると床に「富貴無双」。
小堀宗慶筆で、宗家初釜の福引で引き当てた
思い出のお品だそうです。
真台子に唐胴皆具が飾られ、釜を拝見して胸が高鳴りました。

責紐釜でした!
端正な形、柚子肌、小さな鐶付、バランスの好い釜に
紅白の水引が正月の華やぎを添えていました。
名越浄越造で、江戸中頃の作だそうです。

「いつどのようにあの紐が切られるのかしら?」
と、心待ちにしていました。
聞けば
「昨夜に○○宮家より使者が来られて
 暁庵姫が初釜へお越しになるので粗相のないように・・・云々」
との心憎い口上です。

恐縮しながらも嬉しく拝聴しました。
姫という歳ではありませんが、苗字が○○宮家なのでお許しを・・・。

流暢な真の炭手前の後、さりげなく小刀で紐(水引)が切られました。
たしか、炭台が引かれて香合の拝見中だった(?)ように思いますが、
他のことに気を取られて前後がはっきりしません(駄目ですね・・)。

責紐釜が忘れられず、家に帰ってからもあれこれと
茶事シュミレーションを楽しんでいます。

懐石の終りには松風が聴こえてきました。
濃茶を熊川(こもがい)で、たっぷり美味しく頂戴しました。
ハゼの風情と目跡が印象的な、優しく温かな茶碗でした。

正午に白湯で始まった茶会は早や四時を過ぎると陽も翳り、
短罫や座敷行灯が用意されました。
拝見した濃茶器は尻ふくらのような唐物茄子。
元節の茶杓は細身のすっきりとした形で、時代を経たあめ色でした。
紹鴎の茶杓師、羽淵宗印の作だそうです。

帰りの待合では布袋の掛物が鳳尾扇に代わり
「不老門前日月遅」とありました。

門先で見送ってくださった灯りの揺らぎが忘れがたく
「不老門前日月遅」の茶事へまたいつかお伺いしたいものです。


      姫という歳にあらねど責紐の
          春を寿ぐ色に染まりて

                              

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