暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

新・釜師長野家の初釜 (3)

2012年01月13日 | 茶会・香席
中立のあと、後入りのお知らせは喚鐘でした。
表千家流では広間の時に喚鐘、小間の時は銅鑼となっているそうです。
紹鴎棚の前に藍染の仕覆に入れられた茶入が置かれ、濃茶へと誘います。

点前が始まると、皆の気持ちが一つになって静寂に包まれました。

・・・すると、鶴首釜から心地よい音が聞こえてきました。
耳を澄まして音に集中すると、
松林に風が吹き、梢をやさしく鳴らして通り過ぎてゆくようでした。
松風とはよくぞ名付けたものと聴き入っていると、
柄杓が汲み入れられて松風がやみました。
今度は柄杓から流れる水音、茶筅通しのサラッサラッ、そして再び、やさしい松風が・・・。
めったにないサウンドスケープの一コマです。

「緊張して茶筅通しの手が震えてしまいました・・・」とご亭主。
そのようには見えませんでしたが、客冥利なこと!と嬉しく受けとめました。
緊張しながらもしっかり練ってくださった濃茶を三人でたっぷり、
マイルドな味わいを愉しみました。
濃茶は柳桜園、前席のお菓子は「松の緑」です。

                   

お茶碗がどれも素敵でした・・・。
主茶碗は了入作、拝見すると楽の印があり、隠居印だそうです。
小振りの黒楽で、無作為のかろやかさを感じる、親しみやすい茶碗でした。
昨年11月に根津美術館の茶席で出会った了入の赤楽に続いて、
了入の黒楽で濃茶を頂いたシアワセとご縁を噛みしめました。

替茶碗は、大野鈍阿作の赤楽、捏ね上げられた手なりのままのような茶碗に
かわいらしさを感じたのは私だけでしょうか?

もう一碗は、川瀬忍作の「なみだ」。
気に入ったあまり、二代長野垤志氏が川瀬氏の茶席から黙って持ち帰り、
毎日この茶碗で茶を点ててのんだそうです。
ある日、川瀬氏を招いて茶碗を見せると、
「よくぞここまで育ててくれた・・・」
と言って、「なみだ」という銘を付けられたそうです。
「なみだ」はうれし涙でした・・・(ステキなお話しでした)。

エキゾチックな出し帛紗に嘆声を上げました。
赤地に金のモールは、インド産でしょうか?
手に取るとずっしり、「くさり帷子」を連想する触感と重さです。
二枚目は、ダマスク金襴。
ダマスカス(シリアの首都)で織られた金襴は青地に眩しいほどの金でした。
三枚目は、タイ製の銀モール。魅力的な紫の絹布に銀が渋く映えています。

               
                   ( 一富士二鷹三なすび・・・富士遠景 )

続き薄茶になり、奥様の珠己さんのお点前でした。
お二人に代わる代わる濃茶と薄茶を点てて頂き、感激でした・・・。

薄茶の主茶碗は、惺入作の銘「大神楽」、伊勢神宮に因む銘だそうです。
見込に美鶏が描かれ、お茶を頂くとあらわれてきました。
この茶碗もよく育てられていて、細やかな白磁の貫入が美しく、
鶴首釜に続くお気に入りかも。

薄茶席になり、多彩な顔ぶれのお客様のこと、茶談義、漫談?など
和やかにお話ししながら薄茶を愉しみました。

お心こもる初釜のおもてなしに厚く感謝申し上げて、
もうしばらく余韻に浸っていますね。 
そうそう・・・最後に「落ち」がありましたが、ナイショです。

                           

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