どこからともなく金木犀の香が漂ってくる秋の日の午後に、
ぶらりぃ自転車で北村美術館へ向いました。
9月25日~12月9日まで秋季取り合わせ展「追憶の茶」が開催中です。
9月28日の夕去りの茶事で茶入「廣澤」写をつかったので
遅ればせながら本歌「廣澤」を観ておきたいと、出かけたのですが、
とても見ごたえのある展示でした。
(北村美術館・四君子苑)
「追憶の茶」は、無学祖元禅師の墨蹟「鎖口訣(さくけつ)」を中心に
蒙古襲来の当時を偲んで・・・と企画された茶会形式の展示です。
無学祖元禅師(1226~86)は、南宋時代明州慶元府に生まれ、
中国臨済宗の法を嗣ぎ、弘安2年(1279)に執権・北条時宗の招へいで来日。
鎌倉五山一位の建長寺第五世として住し、弘安5年、鎌倉円覚寺を開山、
仏光(ぶっこう)国師の諡号があります。
「鎖口訣」とは、言葉で説明できない仏法の真理を文字に記さず伝える秘伝
というのが本義だそうです。
墨蹟「鎖口訣」は、後半に段を下げて、次のように書かれているそうです。
右の鎖口訣は 元軍の難を逃れて雁山能仁寺にいた頃の作であって・・・
(中略)・・・「参同契」に倣って少しだけ自身の見解を述べたのが
この鎖口訣である 時に弘安9年(1286)7月25日
無学祖元 建長寺得月楼において書す
肝心の「鎖口訣」の真理の解釈は謎のままで、
どうも、「鎖口訣」自体が寸断されている・・・らしいのです。
墨蹟は読むものではなく拝むものである・・・とも言われるそうで、
これ以上の詮索は無用なのかもしれません。
鎌倉・円覚寺の舎利殿(開山堂 国宝)
茶事形式の展示は、寄付、濃茶(小間)、続き薄茶、懐石(広間)、番外
と分けられていますが、濃茶(小間)のいくつかを記します。
掛物 円覚寺開山 無学祖元筆 鎖口訣 関戸家伝来
花入 鍍金経筒 鈍翁受筒添 益田家伝来
釜 古天明 霰傘地文
水指 南蛮内渋芋頭 ハンネラ・青磁蓋添 益田家伝来
茶入 中興名物 広沢手 本歌 不昧公文添 酒井家伝来
袋 萌黄地撫子金襴 丹地筋金入
剣先緞子 紺地唐草龍紋金襴
茶入「廣澤」と念願の対面を果たしました。
釉薬のなだれが池の面に映る月影のようにも見て取れ、さすが本歌です。
四つの仕覆はどれも時代を感じます。
特に、剣先緞子は上部が擦り切れ、緑色の裏地が見えるほどで、
一番好まれたのでしょうか?
朽木近江守へ宛てた松平不昧の文が添えられているのですが、
文をやりとりの状況がわからず、首をひねっています。
・・・・(略)・・・・
広沢の月の詠めも金なくて
たゝやミくもの かひものにする
正月廿三日 不昧
竜橋公 用事
茶入「廣澤」の伝来は、小堀遠州-松平備前守-土屋相模守-朽木近江守-
姫路酒井家-大原三楽庵-北村謹次郎-北村美術館 です。
他にも展示の番外で、仙涯義梵筆「望蒙古山詩」の掛物が印象に残り、
次の三つの裂地が垂涎の的でした。
裂地 宝尽唐子遊緞子 松岡家旧蔵
裂地 花兎紫地上代紗 前田家旧蔵
裂地 萌黄地二重蔓牡丹唐草印金
最後に、鎖口訣が吊るされている棒のことですが、
「大徳寺棒」というそうです・・・やっと拝見できました。
追記)今回の展示は、木下収館長の深い洞察と思いが詰まっており、
詳しくは「茶道雑誌 平成二十四年十月号 追憶の茶」(河原書店)を
お読みください。
「四君子苑」平成24年秋季特別公開
10月23日(火)~28日(日)11時~15時
ぶらりぃ自転車で北村美術館へ向いました。
9月25日~12月9日まで秋季取り合わせ展「追憶の茶」が開催中です。
9月28日の夕去りの茶事で茶入「廣澤」写をつかったので
遅ればせながら本歌「廣澤」を観ておきたいと、出かけたのですが、
とても見ごたえのある展示でした。
(北村美術館・四君子苑)
「追憶の茶」は、無学祖元禅師の墨蹟「鎖口訣(さくけつ)」を中心に
蒙古襲来の当時を偲んで・・・と企画された茶会形式の展示です。
無学祖元禅師(1226~86)は、南宋時代明州慶元府に生まれ、
中国臨済宗の法を嗣ぎ、弘安2年(1279)に執権・北条時宗の招へいで来日。
鎌倉五山一位の建長寺第五世として住し、弘安5年、鎌倉円覚寺を開山、
仏光(ぶっこう)国師の諡号があります。
「鎖口訣」とは、言葉で説明できない仏法の真理を文字に記さず伝える秘伝
というのが本義だそうです。
墨蹟「鎖口訣」は、後半に段を下げて、次のように書かれているそうです。
右の鎖口訣は 元軍の難を逃れて雁山能仁寺にいた頃の作であって・・・
(中略)・・・「参同契」に倣って少しだけ自身の見解を述べたのが
この鎖口訣である 時に弘安9年(1286)7月25日
無学祖元 建長寺得月楼において書す
肝心の「鎖口訣」の真理の解釈は謎のままで、
どうも、「鎖口訣」自体が寸断されている・・・らしいのです。
墨蹟は読むものではなく拝むものである・・・とも言われるそうで、
これ以上の詮索は無用なのかもしれません。
鎌倉・円覚寺の舎利殿(開山堂 国宝)
茶事形式の展示は、寄付、濃茶(小間)、続き薄茶、懐石(広間)、番外
と分けられていますが、濃茶(小間)のいくつかを記します。
掛物 円覚寺開山 無学祖元筆 鎖口訣 関戸家伝来
花入 鍍金経筒 鈍翁受筒添 益田家伝来
釜 古天明 霰傘地文
水指 南蛮内渋芋頭 ハンネラ・青磁蓋添 益田家伝来
茶入 中興名物 広沢手 本歌 不昧公文添 酒井家伝来
袋 萌黄地撫子金襴 丹地筋金入
剣先緞子 紺地唐草龍紋金襴
茶入「廣澤」と念願の対面を果たしました。
釉薬のなだれが池の面に映る月影のようにも見て取れ、さすが本歌です。
四つの仕覆はどれも時代を感じます。
特に、剣先緞子は上部が擦り切れ、緑色の裏地が見えるほどで、
一番好まれたのでしょうか?
朽木近江守へ宛てた松平不昧の文が添えられているのですが、
文をやりとりの状況がわからず、首をひねっています。
・・・・(略)・・・・
広沢の月の詠めも金なくて
たゝやミくもの かひものにする
正月廿三日 不昧
竜橋公 用事
茶入「廣澤」の伝来は、小堀遠州-松平備前守-土屋相模守-朽木近江守-
姫路酒井家-大原三楽庵-北村謹次郎-北村美術館 です。
他にも展示の番外で、仙涯義梵筆「望蒙古山詩」の掛物が印象に残り、
次の三つの裂地が垂涎の的でした。
裂地 宝尽唐子遊緞子 松岡家旧蔵
裂地 花兎紫地上代紗 前田家旧蔵
裂地 萌黄地二重蔓牡丹唐草印金
最後に、鎖口訣が吊るされている棒のことですが、
「大徳寺棒」というそうです・・・やっと拝見できました。
追記)今回の展示は、木下収館長の深い洞察と思いが詰まっており、
詳しくは「茶道雑誌 平成二十四年十月号 追憶の茶」(河原書店)を
お読みください。
「四君子苑」平成24年秋季特別公開
10月23日(火)~28日(日)11時~15時