(池の向う側に「源氏香」(和食レストラン)があります)
(令和6年をお祝いしてお屠蘇で乾杯)
濃茶第2席のお客さまは6名様、正客Rさま、次客から五客様まではN先生社中のSさま、Yさま、Oさま、Mさま、詰はKYさまです。
N先生社中の方は茶会デビューとのことで、ゲストのRさまとKYさまに正客と詰をお願いしました。
第2席は炭手前はなく、主菓子の運び出しから始まり、お点前は第1席に続いてT氏、後見はAYさん、水屋はKTさんと暁庵です。
(台目席・・・水指は萩菱形、茶入は瀬戸・正木手)
御正客Rさまはアメリカ人ですが、茶の湯に魅せられて日本に住むこと二十数年、日々茶の湯の研鑽に励んでいる方です。茶道への熱い思いは半端ではなく、暁庵が心から尊敬するお茶人さんでもあります。
詰のKYさまは昨年の立礼の茶事で懐石を担当してくださった方で、江戸千家流をお習いしています。直前のアクシデントを乗り越えて参席してくださり、涙が出るほど嬉しかったです。
T氏が濃茶を2碗練り、水屋から詰KYさまへ持ち出しした頃に暁庵は茶席へ入り、ご挨拶しました。実は打ち合わせでは最初にご挨拶の予定でしたが、何かに取り紛れて忘れてしまったのです・・・トホホ。
席へ入ると、T氏が茶入、茶杓を清めて拝見に出すところでした。
折しも御正客Rさまが連客の皆さまに感想をお尋ねしているところでして、Rさまらしい・・・と思いました。
「初めての茶会でどれもこれも珍しく緊張して言葉もありません・・・でもご亭主が茶碗に濃茶を入れた時に好い薫りが部屋を満たしていったのが印象に残りました」
「お濃茶が良く練れていて美味しく飲みやすかったです・・・」
すらすら感想を述べられた訳ではなく、そんなことを聞かれてびっくりしたのでしょうか? お顔が少しこわばっている方もいらして、何とか緊張をほぐして差し上げたい、茶席を愉しんでもらいたい・・・とRさまと私。
暁庵にはそんなお客さまたちが初々しく羨ましく、今日の薄茶席でのおもてなしや濃茶席のお客さまの経験はこれから茶道をしていく上できっと良い経験になることでしょう。これからの成長ぶりが楽しみに思いました。
茶入、茶杓、仕覆が拝見に回り、後見のAYさんが茶入についてお話しています。
茶入は瀬戸・正木手、昨年東京美術倶楽部で出逢った茶入で今回が初使いです。
本歌の「正木」は中興名物で根津美術館に収蔵されています。
赤褐色の釉と黄釉が片身代わりにかかっているのを正木のかづらの黄葉紅葉に見立てて、「古今集」と「新古今集」に記載されている2首の和歌から小堀遠州が「正木」と命名しました。
み山には 霰降るらし外山(とやま)なる
正木のかづら色づきにけり 古今集
神無月 時雨降るらし佐保山の
正木のかづら色まさりゆく 新古今集
暁庵の瀬戸の「正木手」は表千家流十二代即中斎の御銘で「松ノ緑」です。
肩衝ですが小ぶりにゆえに引き締まった印象で、褐色と黒色の釉薬が入り混じる中にまさに「正木」を思わせる黄釉薬が一筋景色をなしていて、美しく個性的です。
3つの仕覆があり、初釜では辰年をお祝いする意味で「丸龍金襴」の仕覆を選びました。
茶杓は煤竹、紫野 隋応戒仙(雪山)師の御銘で「雲錦」です。茶杓には湧き上がる雲の様な景色があり、「今は冬だけれど、やがて春、夏、秋と季節がめぐってくることでしょう・・・時の流れの中にそれらを待ちわびて慈しむ心」を感じてもらえれば幸いです。
これにて午前の部を終わり、池をはさんで向かい側にある和食レストラン「源氏香」で一同揃って新年の祝杯を上げ、「源氏香」心尽くしの会食を楽しみました。 つづく)
令和6年の初釜は耕雲亭にて・・・(4)へつづく (1)へ (2)へ (5)へ