1月28日(火)はS先生の東京教室の初釜でした。
前日からの雨が夜中に雪になり、横浜のチベットと呼んでいる我が家はうっすらと雪景色の朝でした。
今年の初釜の水屋方は暁庵の所属する2班(I氏、Oさん、Iさん、OYさん、ルースさん、暁庵)が担当でしたので、いつもより早めに家を出ました。
(これは数年前の雪の日の写真です)
皆さま、初釜らしい華やかな着物と帯をお召しなので、もうそれらを鑑賞するだけでも心浮き立つ思いです。
暁庵の初釜と同じですが、古代紫色の無地紋付に金茶地唐花文の丸帯を締め、白い帯締めを結びました(書いておかないと何を着たのか、すぐ忘れてしまうのです)。
「あけましておめでとうございます
今年もどうぞ宜しくお願いいたします」
今年も変わりなくS先生の東京教室の初釜に参加し、社中の皆様と共に新年をお祝いできる幸せを感じました。
ご挨拶を交わすと、決められた席へ移動し、2班の皆様と「花びら餅」を運び出しました。いつもS先生が初釜に使う茶道具と川端道喜製「花びら餅」を持ってきてくださいます。
初釜は、先生の新しい年への意気込みや社中への思いを嬉しく感じる、素晴らしい時間でもあります。
S先生の濃茶の初点が始まりました。
総勢16名、心を一つにしてS先生の濃茶点前に魅入ります。
茶入が長緒でした。長緒の扱い、茶杓を清める所作、茶碗の拭き方など、何一つとして見逃したくありません。皆さまもきっと・・・。
やがて馥郁とした香りが満ちてきて、濃茶が練りあがりました。
如心斎好みの嶋台(慶入造)の鶴で頂戴しました。香り、濃さ、お練り加減好く、すっーと喉を潤すまろやかな甘みのある濃茶を二口半頂戴しました。濃茶は福寿園の「栄松の昔」(だったと思う)です。
お道具の拝見をしながら、S先生のお話を興味深く伺いました。
茶入は膳所焼の広口。黒味がかった釉薬の色が広口の形をきりりと締めているように感じ、添っている象牙の蓋のなんと薄く繊細なこと、時代を経たあめ色が心に残ります。
2つの添った仕覆も拝見させて頂きましたが、触るのが怖かったです。間道ともう一つの裂地の片身代わりが優雅で凝った作りになっていました。
茶杓は、S先生の華甲のお祝いに坐忘斎お家元から頂戴した「天眼(てんがん)」でした。形や削りがとても豪快な印象の茶杓で、ふと玄々斎の茶杓を思い出します。
「天眼」とは、天人の眼を持ってものごとを見るように・・・なにか心の奥底まで見通すような、鋭さと優しさを持った眼なのでしょうか・・・。
露地の敷松葉が美しく色を染め上げて・・・
S先生の濃茶が終わり、員茶之式で全員で薄茶を点て、薄茶を頂きました。
今年は2班が担当なので、亭主はルースさん、札元は暁庵、目附はIさんです。
百人一首の札を十種香札の代わりに使うことにしました。昨年、京都国立博物館で「三十六歌仙」展があったのに因み、百人一首に含まれる三十六歌仙の歌22首から16首を選び、Iさんと二人で詠みあげました。
ルースさんはアメリカ人の素敵なお茶人さんです。事前に百人一首を勉強して初釜に臨みました。
いよいよルースさんの札の番になり、次の札を詠みあげました。
清原元輔
ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ
すゑのまつやま なみこさじとは
(現代訳・・・かたく約束しあったことでしたね。お互いに涙で濡れた袖をしぼりながら、あの末の松山を波が越すことがないように、二人の仲はいつまでも変わりますまいと。)
すると、ルースさんが英語でその和歌を詠みあげました。
Wringing tears from our sleeves,
did we not pledge never to part,
not even if the waves engulfed
the Mount of Forever-Green Pines ー
what caused such a change of heart ?
流暢な英語を聞き取れた方もいらしたかもしれませんが・・・思わず「 Once more, Please!」
でもなんか、国際的な員茶之式になって楽しかったし、ルースさんの真摯な取り組み(16首の英訳とその意味をしっかり勉強して臨んでくださいました)に感動しました。
員茶之式の後、三友居のお弁当と吸物の昼食を囲み、S先生や皆様といろいろなお話が和やかに交わされて、これもすばらしいことでした。
・・・・こうして令和2年のS先生の東京教室の初釜が無事終わりました。 今年も