暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「春は名のみ」の正午の茶事・・・(2)一期一会のご縁

2017年02月14日 | お茶サロン&ご近所さんと茶会



「あらっ!」
茶事の朝、外を見ると、昨夜の雪がうっすらと露台に残っていました。
凍り着いた雪を融かすのが大変ですが、雲一つない青空に幸先の良さを感じます。

お客さまは6名様、正客Aさまは東京都墨田区、次客Kさまは千葉市稲毛区、三客Yさまは静岡県袋井市、
四客Iさまは神奈川県藤沢市、五客Wさまは川崎市麻生区、詰のMさまは東京都品川区からお出ましくださいました。
詰のMさま以外は初めての御目文字でしたが、主客とも緊張と期待に胸ふくらませて茶事の日を迎えました。

茶事にはいろいろなハプニングが付き物ですが(?)、
直前に五客Wさまが足を打撲され、長時間の正座が困難との相談を受けましたので
初座では喫架と椅子を、後座では小机と椅子を用意させていただきました。
どんなことにも動ぜず受け止め、最善をつくす亭主として心構えをお茶の神様に試された気がしました。
一番に申し込み、楽しみに待っていらしたWさまのお気持ちに添うことが出来て、ヨカッタ!です。

板木が打たれ、半東Fさんが甘酒をお出しし、腰掛待合へご案内しました。
いよいよ迎え付けです。
何とも言えぬ緊張感が漂い、一期一会の不思議なご縁が凝縮された一瞬です。

「どうぞお入りください」
席へ入り、改めてお一人お一人と挨拶を交わすと、もう旧知のような親密感が漂ってきます。
皆さまのお顔が柔らかく、期待と喜びで輝いていらしたのがとても印象に残っています。
代表していろいろお尋ねくださる正客Aさま、見事な正客ぶりが頼もしく、ご連客様も安心して座を愉しめたことでしょう。



待合に「灑雪庵(さいせつ)」と書かれた額を掛けました。
京都で住んでいた町家・灑雪庵に掛かっていたもので、今日の茶事の趣旨を表わしています。

京都の町家は築年数不明、戸や壁の大きな隙間から風や雪が舞い込んできそうな古家でした。
それで「灑雪庵」と名付けました。
戸の隙間から降り灑ぐ(そそぐ)雪を愛でる風流心を大切にしたい、その心を忘れぬようにしたい・・・と。

床の掛物は、「春水満四澤」(しゅんすいしたくにみつ)足立泰道老師の御筆です。
降った雪が早や融けて、大地を潤していく水音に春の足音を感じます。

茶事次第は、席入、初炭、懐石、菓子、中立、後入、濃茶、続き薄茶(二服目は員茶にて)です。

特筆すべきは懐石でしょうか。なんと!暁庵と半東Fさんの二人で作り、お出ししました。
思いばかりで身体が思うように動かぬ暁庵に代わり、Fさんが獅子奮迅の働きで助けてくださいました。
お客さまのお口に合ったようで安堵しています(一番懐石が心配だったかも・・・です)。
写真を撮る余裕は全くなく、記念に懐石献立を記しておきます。

 
   主菓子の「早春賦」  


  干菓子の「うぐいす煎餅」と「早蕨」


主菓子は「早春賦」、干菓子は「うぐいす煎餅」と「早蕨」、いずれも打出庵・大黒屋製(横浜市日ノ出町)です。


「春は名のみ」の茶事の懐石献立 (平成29年2月11日)
  汲み出し  甘酒(しぼり生姜)
  つぼつぼ  紅白なます
  向付    蕪蒸し  聖護院蕪  鯛  銀杏  白茸  山葵 
  汁     白味噌仕立て  蓬麩  大根  
  煮物椀   蟹真蒸  菜の花  人参  花麩  柚子
  焼物    銀むつ西京漬
  炊合せ   海老芋  鳥団子  椎茸  青菜
  預鉢    芹の胡麻和え
        根昆布  椎茸
  小吸    のし梅 
  八寸    鴨ロース  蕗の薹の天麩羅
  湯香    こがし湯  沢庵  赤カブ  千枚漬
  酒     越乃寒梅
  ワイン   ルバイヤート甲州シュール・リー(・・・らしい)

ワインは、旅行計画中のMさまを引き留め、詰をお願いしたので特別に用意したものです。
Mさまから次のようなお褒めのメールを頂き、嬉しいです。

梅の季節に合わせ『越乃寒梅』『梅酒』の間に『ルバイヤート甲州シュール・リー』がとても美味しく、
お酒をあまり召し上がらない暁庵様の取り合わせは、素敵でした。


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