暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

雪の夕去りの茶事-1  灑雪庵にて

2013年02月11日 | 茶事  京都編
2月9日に雪の夕去りの茶事をしました。

「雪雨、雪下し、吹雪、雪うさぎ・・・」
と雪のことばかり考えていたせいでしょうか?
朝起きると、庭の植木にうっすらと雪が積もっていました。
今年の京都は温かく、初めて積もる雪を見ました。

幸い我が灑雪庵には雨戸もカーテンもなく、寝床から
夜の間に空から降ってきてくれた雪を眺めつつ
「雪の夕去りの茶事」のお客さまや段取りに思いを馳せました。

お正客のYさまはじめ4名のお客様は、忙しく仕事をされている女性たちです。
灑雪庵での「一期一会」のために東京、大阪、岡山から来てくださいました。
心をこめておもてなしをし、茶事のひと時を愉しんでいただけるよう・・・
と気持を引き締めました。

              

15時30分頃、玄関が開く音がし、
・・・お客様がいらっしゃったようです。

板木の音が高らかに響きました。
板木は初弘法で買った欅の木で作り、今日が初使いです。
あとで、次客のHさまが
「板木に書かれた日付を見て、心が弾みました。
 初音ですね」
板木の裏に「平成二十五年癸巳立春」と記してあります。

待合の短冊は二条后(藤原高子)の和歌、

    雪の内に春はきにけり鶯の 
        凍れる泪いまやとくらむ

寒く厳しい冬を耐えて、ようやく立春を迎え早春を感じる日々、
鶯の初音が今かしらと待ち遠しく、春を待つ喜びに満ちる歌です。

              

初座の床には、山茱萸、白とピンクの椿を尺八に入れました。
早春を運んでくる山茱萸は大好きな花木ですが、
どの枝と花を残すか、引き算が難しく、最後まで格闘しました。

お逢いできた喜びを込めて、お一人ずつ挨拶を交わした後、
香盆を持ち出し、お香を聞いていただきました。
お香はめったにしないのですが、
茶事の始まりに香を回して、静かに聞くのもなかなか好いものです。

  香の十徳より
    静中成友 (静かの中に真の友を得る)
    塵裏倫閑 (世俗の繁忙の中に憩いが見つかる)

香銘は、二条后の和歌から「初音」、香木は伽羅(鳩居堂)です。
はんなりとした伽羅の香は試し聞きではよくわかったのですが、
その後はさっぱり・・・風邪気味だったせいかもしれませんね。

              

初炭となり、置き炉の炭手前をご覧いただきました。
手順は全く同じですが、炉の炭では大きすぎるので風炉炭を使います。
湿し灰では、朔日稽古のご指導を懐かしく思い出しながら
「灰の気持ちになって・・・撒こうとする気持ちを無くして・・・」

続き薄茶で後炭をしないので、水次を持ち出し釜に水を注ぎ、
濡れ茶巾で釜を清めました。
香合は、赤絵宝珠、京焼の岡本為治作、
Sさまに連れられて東京美術倶楽部で入手したものです。
久しぶりに箱から出しましたが、鮮やかな赤絵の色、細かな模様が素晴らしく、
もっと使ってあげなくては・・・と反省しています。

香は松栄堂の「加寿美」で、別の香りを愉しんで頂けたようで嬉しいです。

                             朝は  のち 

             雪の夕去りの茶事ー2へつづく