暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

木村茶道美術館 (2) 清風茶席

2010年07月23日 | 2010年の旅
待合の床に正岡子規の俳句が掛けられていました。
   夏帽や布起と者(は)されて濠に落つ

本席の床は、大綱和尚の和歌「暁鐘」です。
余白を生かすのは大綱和尚の得意とするところですが、
白と水色の掛け分けになっていて、右半分に和歌が書かれていました。

       暁鐘
   き可左りし事も阿りし可此こ路ハ
       寝佐めし天まつ暁乃可祢
   (聞かざりし事もありしかこの頃は 寝覚めして待つ暁の鐘)

つい、「私(暁庵)のための歌のようですね・・・」と申しましたら、
館長さんはにっこり笑っていました。
桂籠に斑入りススキ、半化粧、河原撫子が生けられ、
官休庵お好み桐木地蜂文香合が荘られていました。

               

席へ座ると、私たち二人のためにお点前が始まりました。
とても贅沢な気分でした。
ご亭主は表千家流の方のようで、素敵な着物を涼しげに着こなしています。
袱紗さばきのポンという音に、私も背筋が伸びる思いでした。

黒楽の馬盥にふっくらと裏流に点てられた薄茶は、
湯加減がほど良く、渇いていた喉が染み入るように潤い、
とても美味しく頂戴しました。
半分ほど頂くと、茶碗の見込みに楽の黄印が見えてきました。

「茶碗は黒楽の馬盥で、慶入作です。
 楽印が二ヶ所ありますので、それぞれ楽しんでください」
主人も小振りの三島茶碗で美味しそうに喫んでいます。

抹茶は小山園の吉祥、菓子は最上屋製の白山の里という練切で、
蕪のイメージだそうです。
あっという間に至福の時が過ぎていきました。

               

・・すると、ご亭主から
「会記の裏に替茶碗が書いてございます。
 ご希望があればお持ちしますので、どうぞご覧ください。」

  飴釉茶碗   九代大樋長左衛門
  青白磁茶碗  塚本快示(人間国宝)
この二碗の拝見をお願いしました。

飴釉は程良い大きさの薄づくりの茶碗で、意外な軽さに驚きました。
青白磁茶碗は青みがかかった白磁に近い茶碗で、
これも手にとって拝見できて嬉しい出会いでした。

口縁にへたの地紋がある茄子釜は大西浄林造、
水指は絵唐津、十三代中里太郎右衛門造です。
拝見に出された棗は内田宗寛の作で、時代を経た赤漆が
何ともいえない落ち着きと味わいがありました。

茶杓は、松浦鎮信の作で、共筒だそうです。
時代を経た風格のある茶杓は意外にも華奢な作りで、
平戸・鎮信流の風雅な茶室を思い出しました。

館長さんも唐津、有田、伊万里へ最近行かれたとのことで、
しばし茶道具や窯元めぐりの話に花が咲きました。

次のお客さまが大勢見えられたので、
「こちらへいらしたら、ぜひ又お寄りください」
という言葉に送られて、お暇しました。

     (1)へ戻る      (新潟・長野の旅 次へ)