今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

561 トリノ【Torino=イタリア】

2014-01-22 14:26:17 | 海外
昨年のクリスマスはアムステルダムにいて、その前の年はフィレンツェを歩いていた。これは偶然ではなく、まとまった休暇がこの時期にしか取れず、いろいろな計画を練っても「せっかくだからヨーロッパに行こう」となるからである。かくて今年はミラノでその日を迎え、「どうせ街の活動が止まるのだから、トリノを見物して来よう」となったのである。敬虔なカトリックの国とはいえ、鉄道だけはいつも通りに運行しているのだ。



ミラノからトリノまで、列車は平野の中を走る。イタリア最大の穀倉地帯であるこの平野の東側にあたる、ヴォローニャからファエンツァまでとそっくりな農村風景が続く。さらに言えば、その景色は私の故郷の蒲原平野とも似ている。地平線まで続く麦畑の刈り取られた跡は、雨が続いているため切り株が水に浸かって、越後の冬の水田のようである。トリノが近づくと大地の起伏が始まり、遠くで白銀が輝いている。アルプスだろう。



自動車産業で名高いこの街は、冬のオリンピックを開催したことがあるのだからきっと大きな街なのだろう。巨大な駅舎から広い道が延びて、両側には神殿のような太い柱列が続く。計画的に造られた豪壮なアーケード街だ。並んでいるのは名高いブランドショップだが、さすがにこの日は店を閉めている。アーケード街が終わるとトリノの歴史地区といった広場に出て、王宮や大聖堂など世界遺産の建造物群が古風な空間を構成している。



ヨーロッパの都市は石で埋まっているせいか、緑が乏しいと常々感じていた。しかしこの街は珍しく並木が多い。新緑のころ歩いたら、実に美しいのではないか。狭い路地を抜け、枯葉の歩道を行くと、昔の要塞が残っていたりする。東に延びる道は緩やかに下って行く。イタリア最長のポー川が、アドリア海へと流れているのだろう。わずかなエリアを歩いただけだが、トリノという街がとても魅力に満ちていることは推察できた。



トリノもそうなのだが、イタリアの大きな街の鉄道の駅は、いずれもターミナル(終着駅)の構造をとっている。ローマもミラノもフィレンツェも、海の上という特殊事情があるにせよヴェネツィアもそうだ。鉄路はそこで行き止まりとなる。なおも走り続ける列車は、進行方向を逆にして出発して行く。列車運行には不便に思えるが、その効果だろうか、駅が比較的街の中心部に入り込んでいて、駅そのものが街の構成要素になっている。



パリやニューヨークもこうした構造だったと思うが、日本では東京駅などごく一部を除けば通過型で、駅は駅ビルやデパートなどに埋もれ、駅舎そのものの存在は希薄だ。それに比べるとイタリアの駅は自己主張の固まりで、ミラノ中央駅などは列車が空中を走ってきて、巨大なドームに覆われた高層ホームに滑り込む。今回の旅は日本でユーロ・パスを購入しておいたので、移動にはもっぱら鉄道を利用した。時間は正確で乗り心地もよい。



失敗もあった。ファエンツァに行こうとヴォローニャで在来線に乗り継いだ際、コンパートメント式の客車は空いていて、私たちは窓側の席を確保して一息ついた。発車時刻が近づき、乗り込んで来た学生らしいお嬢さんが、通路から私をじっと見つめている。バンビーナも私の容姿に見とれるのかと、とっておきの笑顔を返してやると、いっそうモジモジしている。そこは指定席専用車両で、私は彼女の席に座っていたのだった。(2013.12.25)



















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