昨年のクリスマスはアムステルダムにいて、その前の年はフィレンツェを歩いていた。これは偶然ではなく、まとまった休暇がこの時期にしか取れず、いろいろな計画を練っても「せっかくだからヨーロッパに行こう」となるからである。かくて今年はミラノでその日を迎え、「どうせ街の活動が止まるのだから、トリノを見物して来よう」となったのである。敬虔なカトリックの国とはいえ、鉄道だけはいつも通りに運行しているのだ。 . . . 本文を読む
「そこの若いお方、どこからお出でかな」「Giappone!」「おお、あのヴェネツィア商人の息子が書いた黄金の国じゃな」「マルコ・ポーロのことですね。本当はそれほど黄金は多くないのです」「遠くからよくぞお越しを。してミラノには何をしに」「あなたの絵を観に来たのです」「あの《晩餐図》じゃな。ゆっくり見て行きなされ」「ありがとうございます」「お若い方と呼んでしまったが、どうやら私と同世代のようじゃ」 . . . 本文を読む