WALKER’S 

歩く男の日日

ディーバ

2008-02-13 | 日記
 ぼくの英和辞典で引くと、オペラのプリマドンナ、花形女性歌手、歌姫、となっているこの言葉、現在では普通に使われますが、25年くらい前までは全く聞いたこともありませんでした。最初に聞いたのはこれをタイトルにした映画を見たときでした。フランスのジャン・ジャック・ベネックス監督の最初の作品です。ぼくはフランス映画はあまり好きではないのですが、この映画は全然違うという感じでした。サスペンスのタッチやテンポが非常にアメリカ的で見やすかった。そして何よりぼくの心をとらえたのが主役です。主役はディーバでもそれに憧れる郵便配達夫でもない。1本のカセットテープ、しかも、それがナカミチのカセットテープなのでした。マクセルでもTDKでもSONYでもない、ナカミチのあの『n』のマークが目に飛び込んできたときには本当にびっくりした。それだけでこの1本は忘れられない映画になったしまったどころか、ぼくが今まで見たフランス映画の中で2番目に好きな作品になってしまいました(1番はトリュフォーの「アメリカの夜」)。しかも脇役はNAGRAの小型録音機。ナグラという超高級音響機器メーカーの名を最初に見たときでもありました。
 昨年公開された邦画407本、洋画403本のうちこの作品のようにすこぶる個性的でおもしろい作品がどれくらいあったろうか。そういう作品に効率よく巡り会う方法があるのか、豊かになればなるほど本当に良い作品が埋もれていくようで寂しい限りです。