はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

思い出の2.14

2013-02-25 16:46:11 | はがき随筆


 私は、先天的に心臓に障害を持ち生まれた。30代に入ると危険性が伴うということで、27歳の時に手術を受けた。死を覚悟の上で手術に望んだその日は、昭和50年2月14日のバレンタインデーだった。
 8時間以上かかった大手術が終わり、麻酔から目覚めると、看護師さんがやって来て「手術成功してよかったですね。今日はバレンタインデーです。チョコレートをどうぞ」とプレゼントしてくれた。生きたという喜び、看護師さんからの心温まるプレゼント。あの日、あの時のバレンタインデーの思い出は脳裏を離れることはない。
  鹿児島市 川端清一郎 2013/2/25 毎日新聞鹿児島版掲載

恋文

2013-02-25 16:20:51 | はがき随筆


 今ごろどうしているのでしょうか。私は梅の香り漂う庭で寄り添って咲く水仙や、葉陰に見える赤いツバキの花を眺め思いにふけっています。静かな雨の朝、あなたは一人旅立ってしまいました。あまりに性急に。あれから2年がたつのですね。大病で4年間、試練に二人で立ち向かいました。病に屈せず弱音も吐かないあなたの強さを知りました。絆を深め夫婦相和して生きたと思っています。早世は無念の極み。移ろう季節の中、よみがえる日々は懐かしく、いとおしく思えてなりません。今でもいちずに慕っています。もう一度巡り合いたくて……。
  出水市 井尻清子 2013/2/24 毎日新聞鹿児島版掲載