はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

春の足音

2013-02-06 23:13:59 | はがき随筆
 まだ冬だというのに、梅はもうふくらんだ花芽をつけている。
 私はSさんからもらった、中国人歌手・王さんの歌のテープの「早春賦」「花」などをよく聴く。歌は、1番を日本語で、
二番を中国語でと、交互に歌われている。王さんは歌で、日本の童謡や唱歌のすばらしさ・日本の美しい心を、中国にも広めた人だという。
 私は何回聴いても、王さんと彼の歌の、春のような温かさ・優しさに包まれて感動する。
 光のまったくないSさんの贈り物のテープは、私の宝だ。どの国のどんな人にも、春の足音が訪れてほしいと、私は思う。
  出水市 小村忍 2013/2/6 毎日新聞鹿児島版掲載

あっない!

2013-02-06 23:07:11 | はがき随筆
 ラジオ体操を済ませ、おやつを買いに行くので髪にくしを入れ、口をすすいで義歯を捜すが、ない。昨夜洗って机のティッシュの上に置いたのに見当たらない。外はまだ暗いしこの付近の人に会うこともないはずだから、帰ってから捜そうと外に出た。おやつを買っての帰り道、義歯のことが機になり始めた。帰ってから見当をつけていたところを捜すがない。さてはとゴミを入れた袋の固い包みの中を捜すと、ティッシュにしっかりくるんだ塊が。「あった、よかった」という気持ちをこえて「また…」という“要注意令”の私。
  鹿児島市 東郷久子 2013/2/5 毎日新聞鹿児島版掲載

決められた道

2013-02-06 22:58:12 | はがき随筆
 昔は学芸会といったのかしらん。今は学習発表会と文化祭。楽器も違っていたようだ。私の頭の中は3月の忘れ雪の頃。
 中学校の劇「万朶の桜」で演じた役が元郵便局員。近所の大工がこしらえてくれた木製の鉄砲を威張って肩に掛けた。隣には元教員役の幼なじみ。時を経て五十数年。今は郵便局を退職、スクールガードを委嘱されている。隣の友は校長を幾校か勤めて県の重鎮だった風。
 あの劇のままのような2人の人生はあの劇を指導した国語の先生の計らいだったのか、なくなられた先生にもう聞くすべはない。今でも気になっている。
  いちき串木野市 新川宣史 2013/2/4 毎日新聞鹿児島版掲載

闘病記その10

2013-02-06 22:52:39 | はがき随筆
 昨年は約10ヶ月の入院。11月の骨の検査により、退院と医師に言われた。まだがん細胞はあるが歩けるようになり「奇跡だろう」と看護師やリハビリのトレーナーも驚嘆。夫の顔色もよく健やかに見える。退院後は月に1回の通院となる。クリスマスも孫たちと愉快に過ごし、お正月もめでたく迎えた。至福の時だ。6歳と4歳の孫息子から「じいじ元気になってよかったね」と。じいじは「ありがとう」と礼を言った。孫は、じいじの顔を画用紙いっぱいに描き始めた。大きい眉、大きい目と口、立派なじいじの顔のできあがり。「退院おめでとう」
  姶良市 堀美代子 2013/2/3 毎日新聞鹿児島版掲載

今を大切に

2013-02-06 22:47:18 | はがき随筆
 「体のどこも悪くないでしょう」と人によく言われる。ところがご多分に漏れず首と肩に違和感と痛みがある。70年あまり使い続けた体。機械と同じでどこか不具合がでてくるのは当然かもしれない。治療や薬でも、ぬぐい去るように快方には向かってくれない。ところが、たいして不自由もなく、老いとはこんなものと思うことにしている。有り難いことは、丈夫に生んでくれた両親や先祖のお陰と感謝している。人生長くなった分だけ思いがけない事に遭遇するかもしれない。その時はその時だから、今を大切にしたいものだ。
  霧島市 口町円子 2013/2/2 毎日新聞鹿児島版掲載