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はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆7月度

2016-08-30 06:47:35 | はがき随筆
はがき随筆の7月度月間賞は次の皆さんでした。
【月間賞】10日「アジサイ」山下秀雄=出水市西出水町
【佳作】4日「特大のメロン」鳥取部京子=肝付町新富
▽14日「少女」宮路量温=出水市中央町


「アジサイ」は、甘美な追憶の文章です。漂っている抒情性が快さを感じさせます。かつて同じ会社の女性を、通勤の往復に乗せていた時もアジサイが咲いていた。退職し会社もなくなり、女性のその後も想像するしかない。そして今、アジサイの美しい花を見ると、あの日々が懐かしく思い出される。
 「特大のメロン」は、日ごろは高価で買えないメロンを、熊本産を2個も頂いた。手紙によると、熊本の被災された方へのせめてもの支援に買ったということであった。夫君の神前に供えたり、兄弟に配ったりして、大切に食べたという内容です。熊本のために、何かできないかと考えますね、つくづくと。
 「少女」は、可愛らしい少女との快い交情が描かれています。畑の草取りをしていると、近くの少女が飴を差しだした。お礼にマーガレットを数本渡すと、しばらくして、母親と一緒に来て、添え書きをした似顔絵を描いてくれていた。暗澹たる事件の多い世相のなかで、明るい気持ちになった。
 この他に3編を紹介します。
 塩田幸弘さんの「救援隊員の家族」は、娘さんが救援隊の保健師として女川に行ったとき、孫を預かって苦労した経験から、現在熊本に派遣された救援隊員の家族の苦労が実感でき、早期の復興を願っている。
 若宮庸成さんの「思い出と走る」は、早朝のスロージョギングを10年も続けているが、最近では思い出を追って走っていることが多い。今朝は若い時に出あった、武女という名の美人のことが思い出された。隣で走っている妻は何を思い出しているのだろうか。それは同床異夢でしょう。
 内山陽子さんの「黒の編み上げ靴」は、娘さんの靴の手入れをしていて、亡母のことを思い出した。大正時代後半、父親からもらった黒い靴をはくと、袴の裾に見える黒靴を男の子たちがカラスとからかった。それが恥ずかしく、大阪にいた姉にあげると大喜びされた。その頃の山口と大阪の風俗の違いを考えさせられた。
 鹿児島大学名誉教授 石田忠彦

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