はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ジーナとハナ

2010-08-24 11:04:57 | 女の気持ち/男の気持ち
 8月10日の朝刊に犬の「記憶」という記事が掲載されていた。米軍の軍用犬として半年間のイラク任務を終えて戻った2歳のドイツシェパード犬についての記事だった。ジーナという名のこの雌犬が戦場での爆弾捜索時の記憶により心的外傷後ストレス障害になったというのだ。動物さえ半年間でこんな状態になるのに、兵士の心の傷はいかほどであろうか。
 我が家にも8歳になるハナという雌のドーベルマンがいる。彼女は昔、ブリーダーに飼われていたらしい。成犬になり、雄のダルメシアンとの間に子犬を5匹生んだ。ブリーダーの不注意からだったが、純血でない子犬に商業的な価値はない。そのまま母子で公園に捨てられ、保健所から動物管理所へ。かろうじて子犬には里親がついたが、ドーベルマンという犬種は獰猛というこことで母犬は殺処分と決まった。
 犬の里親ボランティアをしている知人が粘りに粘って彼女を助けたのは、炭酸ガスで命を絶たれる20分前であった。
 今、ハナは穏やかな目をして私の手からジャーキーをもらっている。しかしいまだにケージに入れようとすると足をつっぱり抵抗するのだ。また捨てられたり殺されたりしないかと思うのだろうか。 
 ジーナの記事は、私にハナの過去を思い出させた。口こそきけないけれど、犬も情緒豊かな動物なのである。
  大分市 三房真知子(61)2010/8/22 毎日新聞の気持ち欄掲載

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